CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 研究室 > 東アジアの子育て・教育事情 > 【比較から考える日中の教育と子育て】 第6回 日本と中国の保護者会の違い

このエントリーをはてなブックマークに追加

研究室

Laboratory

【比較から考える日中の教育と子育て】 第6回 日本と中国の保護者会の違い

渡辺 忠温(中国人民大学教育学院博士後)

2013年11月 8日掲載

要旨:

本稿では、日本と中国の保護者会のあり方の違いを中心に論じた。保護者会の回数や内容について比較するとともに、父親の教育参加の問題、親と学校との関係など、保護者会のあり方と関連すると思われる事柄についても考察した。
中文

私の現在の身分は中国人民大学の博士後(ポスト・ドクター)だが、博士課程は北京師範大学を卒業していて、今でも師範大学の敷地の中に住み続けている。6月のある日、お昼ごはんを食べようと部屋から学校の食堂に向かって歩いていると、大勢の人の群れと出くわした。特に北京師範大学の附属小学校の門の前は人が多く、小学校の門から大学の東門(いくつかある附属小学校のひとつが大学の中にある)にかけての道は人がいっぱいにあふれていた。

何のイベントだろう?と思っていたら、私と同じように疑問を持ったお婆さんがいて、あるお店の前でアイスクリームを選んでいた小学生の集団に尋ねていた。小学生たちは「家長会があるんだよ!」と耳が少し不自由なそのお婆さんにゆっくり、繰り返し教えてあげていた。どうやら附属小学校の「家長会*1(保護者会)」のお昼休みで、親子揃って食事に出かけるところに出くわしてしまったようだ。

しかし、もし家長会(保護者会)だとしたら、日本的感覚からすれば少し奇妙に感じられる点があった。道を歩く男性(父親)の割合がかなり多いのだ。たまたま私が歩いていた時間が極端に父親の比率が高かった可能性はあるが、母親が三割、父親が七割といったところである。日本だと、学校の行事、特に保護者会に親が参加する場合には、母親が参加することが多いのではないだろうか。

本稿では、中国で「家長会」、日本で「保護者会」「保護者懇談会」などと呼ばれる、保護者の学校での集まりをめぐって、学校と家庭とのつながりかたの違いについて考えてみたい。

1 日本の保護者会

日本についても中国についても、学校における保護者会のありかたについては、学校や地域ごとに大きな違いがあり、また会の開かれ方について全国で統一した決まりがあることも少ないため*2、「日本」や「中国」全体という単位ではなかなか論じにくい。ただ、両国の保護者の学校活動への参加の違いの前提となることがらではあるので、理解のためにおおまかな話としてまとめておきたい。

日本で保護者が学校に集まる会には、PTAの会合(日本の場合には各学校ごとにPTA(Parent Teacher Association)がしっかりと組織されている)、保護者会、(保護者)懇談会などがあり、それぞれ微妙に会の内容や目的が違うものもある。その名称もさまざまで、同じ内容のものであっても、地域や学校によって呼び方が異なる場合がある。煩雑になるので、以下便宜的に学校で保護者が参加する会議をまとめて「保護者会」と呼ぶことにする。 保護者会は、授業参観の後で開かれることも多い。授業参観は、小学校や中学校の場合には、大体一学期に一度程度は行われると思うので、保護者会も一年で三回(三学期の場合)は少なくとも行なわれることになる。ただし学校ごとの違いは大きく、家庭との連携について意欲的な学校では回数はもっと多くなるだろう。また、学校で特別な問題が起きたときや進学説明会など、それ以外にも保護者会が行われることはある。

保護者会の内容も各学校やクラスでさまざまなものがある。普段の授業の進め方や、指導方針、指導状況などについて担任の先生が説明し、その他に、家庭での教育や子育てについて話し合うこともあるだろう。また、個別の子どもについての相談になる場合や、何かクラスの中での具体的な問題について話し合う場合もあるかもしれない。ただ、少なくとも、後で述べるような中国式の「成績講評会」といった趣きはない。実現できているかどうかは別として、先生と親が子どもの教育について「話し合う」場であることが理想であり、中国のように、先生が大教室で多くの親に向かってー方的に説明や講義をするといった雰囲気とは違ったものがある。

またその他に、日本の場合はPTAの組織があって、その役員や委員は親の中から選ばれるので、たとえば学年最初の保護者会や入学式の後に、その年度のPTAの役員の選挙などが行われたりもする。これも中国とは違う点であろう。

2 中国の家長会(保護者会)*3

日本と同様に中国の場合にも、学校や学年によって、また時代・地域によって家長会のやり方や内容には大きな違いがある。ただ、日本の家長会の場合と同様に、日本人に対する説明のために北京の一般的な家長会を例として挙げると、一学期に二度程度、中間テスト・期末テストの後で行われることが多いようだ(中学3年や高校3年の場合には、受験もあるので家長会の回数は増える)。従って、二学期制の中国では、少なくとも一年で4回の家長会が行われることになる。

家長会の形式については、学校全体のものと各クラスのものがあり、多くの場合は、一日のうちに続けて行われる。学校全体のものについて言えば、学校のリーダー(校長など)が大きな教室に親を集めたり、校内放送を使ったりして、学校の方針や試験や学業成績の状況について説明する。

各クラスでの家長会では、多くの場合先生がテスト結果の講評をし、成績優秀な生徒の名前が読み上げられたりする。したがって、家長会の後では、「幾家歓楽、幾家愁(喜んでいる家もあれば、気落ちしている家もある)」という状態になる。これも、担任の先生による総合的な講評もあれば、各教科の担当の先生が担当ごとに講評を行うものもある。また、家長会のあとでは親が先生を取り囲んで、アドバイスをもらうべく我先にと我が子の成積や進学について先生に質問したりする。中国でも日本でも、家長会が「先生と交流できる貴重な時間」であることには変わりがない。

全体的に見て、(各学校やクラスによって具体的なテストの成績を扱うか、方針のようなものについて先生が説明するか、などについては違いはあるかもしれないが)中国の家長会の内容は、多くの場合具体的な「テストの成績」をめぐるものである。ただし、最近では、同時に「こどもの勉強のために親が心がけるべきこと」などについても先生が講義するようになってきているようだ。特に、心理学の先生(中国の中学校・高校では専門の先生がいて心理学を教える学校も多い。同時に心理学の先生は日本で言えばスクールカウンセラーでもある)が子どもとの接し方などについて講義する場合もあるようである。

3 父親の保護者会への参加

さて、最初に述べた「父親が保護者会に多数参加している」という点についてだが、日本の父親が保護者会に熱心に参加するということは、少なくとも中国に比べれば、多くはないと思われる。例えば、少し古いデータになるが、ベネッセ教育総合研究所が文部科学省の委嘱を受けて2005年に行った「義務教育に関する意識調査」によれば(図1)、1年間で子どもが通う学校に行った回数については、「3~5回」が37%程度で父母とも同じなのを除けば、母親のほうが全体的に学校に行く回数が多い*4。また、出席・参加したことがある行事や活動の内容を見ても(図2)、保護者会、PTAの活動については圧倒的に母親の参加が多い。

筆者個人の印象では、PTAの活動の中でも、「会長」などのリーダー的な役職については、父親が役につくことも多いような気がする。ただ、実際にデータを見ると、地域差が激しいようだ。平成20年版「男女共同参画白書」(内閣府,2008)を見ると、全国の小・中学校のPTA会長のうち、女性が占める割合は、10.1%程度(平成19年)にすぎない。一方で、一部の都道府県では女性が会長となる割合が非常に高く、東京都では46.7%、神奈川県では32.8%が女性である。また、この調査では12.7%と首都圏の中ではPTA会長になる割合は比較的低いが、明石らが千葉県で行った調査(1995)では、PTA役員のうち女性の占める割合は76.1%と非常に高い数値を示している*5

また、気をつけなければならないのは、近年こうした状況にかなり変化が生じている可能性がある。授業参観に参加する親のなかで、学校によっては2割から3割程度、特に多い学校では6割程度が父親、といったケースも見られるようだ(尾木,2008)。今後、日本の父親の学校行事への参加も次第に増えていくのかもしれない。

eastasia_2013_05_01.jpg
図1 学校に行った回数
(出典)ベネッセ教育研究開発センター(2005)義務教育に関する意識調査報告書

 

eastasia_2013_05_02.jpg
図2 出席・参加したことがある行事や活動(上位5項目まで)
(出典)ベネッセ教育研究開発センター(2005)義務教育に関する意識調査報告書

中国については、(どのくらいの割合の父親が家長会に参加しているかについて)特に調査結果や統計資料のようなものは見つけられなかった。ただ、私の周囲の人に聞くかぎりでは、父親が参加することは確かに多いようである。また、地域によっては母親も参加せず、祖父母が代わりに参加することが多いところもあるようだ。

この点については、日本と比べて中国では女性の社会進出が進んでおり、結婚・出産後も女性がなかなか休みにくい仕事に就いている場合も多いのかもしれない。

また、父親が子どもの教育に対して熱心ということだけではなく、中国では(父親か母親かを問わず)社会全体として親が仕事を休んで子どもの学校行事に参加することについて寛容、という面があるだろう。聞いた話では、(最近では)学校から親に通知が来て、親がそれを職場に提出することで、休みをとることができるようである。同時に、「親(父親母親問わず)は子どもの教育に熱心であるべき」という社会通念もあるのだろう。

4 保護者会のあり方からみる学校と親との関係

日本の保護者会も中国の保護者会も、そこで話し合われるのは、学業のことや子どもとの関わり方、教育のあり方、などであり、大きく見れば違いはない。ただし、中国の場合には、より具体的な数値としての「成績」(さらに言えば、成績のランキングや進学に関すること)に重点がおかれることが多い。したがって、先生が保護者会で講義をしたり、親にアドバイスする内容も、それに関わる内容が多くなる。中国の保護者会の問題点として、多くの論者が保護者会の形式が単一化してしまっていることを問題点として挙げているが(たとえば、李・劉,2011)、それもこうした「成績向上のための指導」に重点が置かれて成績発表会形式ばかりになることが理由のひとつであろう。この点については、日本の場合、成績のランキングを大勢の親の前で発表すること自体に抵抗感があるだろうし(少なくとも日本的感覚で言えば、競争をあおることにつながるので)、具体的なアドバイスについては、個別面談や三者面談、家庭訪問などの時に行えばいいではないか、という考えも多いのではないだろうか(もちろん、中国でも自分の子どもの成績が心配だったり、問題行動があるようであれば、直接担任の先生に面会しようとするだろう)。

日中間での保護者会の違いとして、もうひとつは、(あくまでも理想の形として、の話だが)単方向的(中国)(陳,2000;胡,2011)か双方向的(日本)か、という点がある。この点についても、中国の多くの論者が「単方向的」な保護者会のあり方について批判しているのだが、なかなか簡単には変わりにくいところがある。

たとえば、中国の教育を考える上で一つ重要な視点は、親の教育的背景のばらつきが大きい、ということである(劉,1992)。親によっては、義務教育も十分に受けていない人もいて、そうした親の子どもが大学受験をするとなれば、自分自身が経験をしたことがないことなので、とまどうことも多々あると思われる。保護者会は、そうした子どもの教育環境の整備の仕方やサポートの仕方がわからない親たちに教育方法を「教える」場としての役割も求められるのである。その場合に、親のニーズに合った保護者会のあり方というのは、どうしても単方向的なものにならざるを得ないのかもしれない。 もちろん、親の教育経験が子どもの通う学校や先生との関係に影響するというのは、中国に限ったことではないだろう。ある知り合いの日本の高校の先生が、「今の親は私たちが高校生だった頃とは違う。私たちの頃は、親も高卒で大学に行ったことがない人が多く、勉強については学校の先生にお任せ、という感じだった。でも、今の親は自分も経験があることだけに、先生もいろいろ要求される」と言っていた。したがって、中国の場合にも、(特に農村部などで)進学率のさらなる上昇が起これば、保護者会の内容も少し変わってくる可能性はある。

全体的に見れば、中国の場合には、親は子どもの教育に非常に関心を持ち、熱心であるが、学校や先生の具体的な教育方法にはあまり口出しせず、むしろ「結果」の方に注目しているように感じられる。それと比較すれば、日本の場合には、できるだけ先生と親が相談し合う形で子どもの教育を進め、保護者会や授業参観、個別の面談などを通じて、教育の具体的な内容について親も知ろうとし、学校も説明しようとしているような印象を受ける。もちろん、これは「理想的な」学校と親との関係のあり方の問題で、実際には中国でも「結果」が出ないために学校の教育方法に不満を持つ親もいるだろうし、子どもの教育は学校に任せきり、という日本の親もいるだろう。同時に、保護者会の内容に時代的変化が見られたように、今後も学校と家庭の(理想的)関係のあり方自体も変化していくのかもしれない。

今回は、日本と中国の保護者会の違いについて述べてみた。子どもの教育についての、日本と中国での父親と母親の関わり方や理想の教師像のあり方の違いなど、関連する事柄は多いように思われる。それらについても、また機会があれば述べてみたい。


  • *1 中国語で「家長」とは保護者のことであり、一般的には父母の意味である。
  • *2 昨年末大阪府が提出した「教育基本条例」案において、保護者の学校運営への参加を「義務付ける」内容が規定されていたため議論が起こった。このことも、日本における保護者の学校運営や学校での活動への参加が本来ボランティア的な性格をもっていることを示しており、PTA協議会などの全国組織はあるものの、全国的に統一した決まり事によって運営されている活動ではない。
  • *3 前々回紹介したドキュメンタリー映画「高三」の中にも家長会の場面が出てくる。そこでは、担任の先生がまず「大学入試の状況」について親に講義している。例えば、毎年大学の文系学科の募集人員は増加しているものの、受験生の増加が著しいために、ますます狭き門になってきている、といった最近の大学入試の動向についての説明である。それから、「親に注意してもらいたいこと」として、子どもの大学受験の問題を一年間の最優先事項にしてもらいたいことや、父母は「夫唱婦随」(先生は「夫婦の関係がうちとけて仲睦まじい」という意味で使っている)で、絶対に離婚などといったことは言い出してほしくないこと(中国では、子どもの受験期間には裁判所も離婚を審理しなかったりする。)について話す。最後に、親が教卓のところにいる先生のところに群れて集まる。先生は、それぞれの子どもの成績表を見ながら分析し、ひとりひとりの親にアドバイスを送っている。その他に、学校のリーダー(校長など)が大きな教室で親に向かってスピーチしている場面も出てくる。ここでは、「素質教育と応試教育(素質教育は子どもの人間性や素質を重視した教育であり、対して応試教育は受験に重点をおいた教育である)」の問題について、学校の方針について語られている。
  • *4 ただし、10回以上学校に行っている父親も12.1%おり、このことから考えると父親の場合には、比較的学校に行くことが多い父親とほぼ学校に行かない父親の両極に分かれるのかもしれない。
  • *5 明石ら(1995)ではさらに詳細な分析が加えられており、都市部や新興都市部では9割以上が女性役員という場合もあるのに対し、郡部では逆に6割以上が男性役員の場合もある。このあたり、時代的な価値観の変化も影響するのかもしれない。

<文献>
  • 明石要一・高野良子・小谷教子・西成田道子・藤田房子・保村純子(1995).PTA役員経験の教育的効果の分析.千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編.43.75-104.
  • 尾木直樹(2008). 「ケータイ・ネット時代」の子育て論: 時代の波に流されない力. 新日本出版社.
  • 胡芳(2011).我国中小学家校合作的問題及対策.現代教育論叢.176(2).23-26.
  • 陳桂生(2000).家長会辨析.教育発展研究.10.52.
  • 内閣府(2008)男女共同参画白書(平成20年版). 佐伯印刷株式会社
  • ベネッセ教育研究開発センター(2005). 義務教育に関する意識調査報告書 ベネッセ教育総合研究所(2013年11月1日)
  • 李小紅,劉嫄嫄(2011).学校家長会:問題与改進策略.中国教育学刊.12.80-82.
  • 劉力(1992).家長参与学校教育的功能及方式.教育研究与実験.1.62-66.
筆者プロフィール
Watanabe_Tadaharu.jpg渡辺 忠温(中国人民大学教育学院博士後)

東京大学教育学研究科修士課程修了。北京師範大学心理学院発展心理研究所博士課程修了。博士(教育学)。
現在は、中国人民大学教育学院で、日本と中国の大学受験の制度、受験生心理などの比較を行なっている。専門は比較教育学、文化心理学、教育心理学、発達心理学など。

このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

遊び

メディア

特別支援

研究室カテゴリ

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP