2024年は、コロナ禍はやや収束しましたが、ウクライナ、ガザなどの戦乱が吹き荒れた一年でした。残念なことに2025年もそうした状態が収まりそうにありません。CRNでは2021年度、アジア近隣の8カ国の保育や教育の研究者と、こうした不安定な世界で子どもに必要とされるものは何かを真剣に議論し、逆境から立ち上がるしなやかな力である「レジリエンス」を研究のテーマに選びました。研究の結果から分かったことは、レジリエンスを獲得するのに大切なのは特別な訓練や知識ではなく、いつでもお腹いっぱい食べられる食べ物があることや、いつでも話を聞いてくれる人がそばにいることでした。
空腹感から解放されることは、もちろん活動に必要なエネルギーを得ることにつながりますが、満腹感を感じながら安らかな眠りにつくことで、不安に打ち勝つことにもつながります。話を聞いてくれる人がいれば、不安を共有してもらえることだけでなく、心に直接響くいたわりや励ましの言葉をもらうことができます。
90歳を超えられて現在も活躍されている黒柳徹子さんの自伝の中に、そうした素晴らしい言葉を見つけました。繊細で元気いっぱい、そして少し多動な少女期の黒柳さんは、実生活の中でいろいろな失敗もしています。地元の小学校から、「もう来なくて良い」といわば放校されてしまった黒柳さんの話をよく聞き、生きてゆく力を授けてくれた巴学園の小林宗作先生。彼の言葉を聞くと、人間は言葉という魔法が使える存在であることを思い出させてくれます。
失敗してしょげる黒柳さんに小林先生がかけた魔法の言葉には、とても短いのですが人の存在を根底から揺り動かすような力がありました。
「君は本当はいい子なんだよ」
人はこの一言で、一生にわたって苦難を乗り越える力を得ることができるのです。
2025年は大勢の子どもが、黒柳さんが聞いたこの言葉を聞けるような年になって欲しいと心から思います。