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【比較から考える日中の教育と子育て】 第4回 中国における大学受験映画 (3)

渡辺 忠温(中国人民大学教育学院博士後)

2013年8月30日掲載
4. 懲戒との関連

ところで、少し話がそれてしまうのだが、先月書いた中国的な「懲戒方式」の話は、これらの映画を見ていると、その実態がよく分かる。つまり、中国の学校の懲戒規程は日本と比べれば厳格に見えるが、実際は柔軟な運用がなされている、ということである。

例えば、「高三」の中で、二人の男子生徒が、深夜に学校の壁を越えて網把(ネットカフェ)に出かけるのだが、見つかって(そもそもカメラに堂々と撮られているのだから見つかるのも無理はない)王先生に叱られる。その際には、王先生は生徒に「ネットをするのは週に一回にしよう。」「その他の時間はだめだ。いいかい?」と言い、その場での指導にとどめ、学校全体での処分には任せないでいる。しかしながら、その後同じ生徒が再度学校の壁を越えていたのが政教処(学校の中で生徒の道徳的な指導などを行う部門)にみつかってしまい、その際には学校としての処置に移行する。親も同席のもと、反省を求められるが、片方の生徒は反省したものの、もう片方の生徒はあいかわらず反抗的な態度で、反省しなかったために、警告処分を受け、処分内容が貼り出されてしまう。このことからもわかるように、規則がいくら厳格なものであっても、その懲戒を適用するまでには、何段階か教師による説得が行われ、反省の機会が与えられている。

学校の中での男女交際にしても同様である。「高三」の中で、クラスの中で目に余るほど一日中一緒にいる男女生徒を見て王先生は二人を別室に呼んで指導する。曰く、「愛情の問題について制限する権利は私にはないが」、学生の身分であることをわきまえる必要があること、また度を越してはならないこと、他の学生に影響を与えてしまうこと、などを二人に言い聞かせる。王先生は「『中学生手冊(生徒手帳)』の中にも規程があり、恋愛は許されていない」とも言っており、この学校においても男女交際は許されていないようだ。しかしながら、規律違反に対していきなり罰則を適用するのではなく、ここでも指導にとどめている。

以上、今月は中国の大学受験「高考」をテーマとした映画三本を紹介した。残念ながら日本では未公開の作品ばかりで、字幕がついたものもないが、中国語が分からなくても、見れば中国の大学受験生の様子、普段の高校の様子がそれなりに伝わって来ると思う*6。機会があればご覧頂きたい。また、稿をあらためて日本の大学受験に関する映画についてもとりあげ、今回紹介した映画と比較もしてみたい。


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<文献>
  • 呉薇 2006 科挙制度与高考改革-当代大学生"科挙与高考印象"問巻調查.考試研究.2.1.90-99.
  • 胡清・蔡海波(2010).新世紀以来中国内地青春電影思考.電影文学.20.4-5. 任仲倫(主編)(2009).高考1977.上海辞書出版社.
  • 大塚豊(1980). 文革期中国の大学入学者選抜に関する一考察-教育と労働の結合の観点から- 大学論集. 8. 109-128
  • 王宏(2010).高校"校園劇"現象透視.高校輔導員学刊.2(3).45-47.
  • 白井利明(2006).現代社会における青年期の不安と自己 : 進学競争のもとでの時間的展望.心理科学.26(1).13-25.
  • 竹内洋(1996).立身出世主義.NHKライブラリー.
  • 竹内洋(1991).立志・苦学・出世.講談社現

  • *6: また「高考1977」については、ノベライズ(小説化)した物語を収録した書籍も発行されている(任,2009)。巻末に高考が復活することになった歴史的経緯や1977年当時の試験問題も収録されていて、参考になる。
筆者プロフィール
Watanabe_Tadaharu.jpg渡辺 忠温(中国人民大学教育学院博士後)

東京大学教育学研究科修士課程修了。北京師範大学心理学院発展心理研究所博士課程修了。博士(教育学)。
現在は、中国人民大学教育学院で、日本と中国の大学受験の制度、受験生心理などの比較を行なっている。専門は比較教育学、文化心理学、教育心理学、発達心理学など。

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