このコーナーでは、小児科医であるCRN所長が子どものからだや健康に関する疑問・悩みにお答えしていきます。一覧はこちら

インフルエンザの予防接種は毎年すべきかどうか迷っています。接種を受けたのに、かかってしまった子どもがいると聞いていますが、それなら打たなくてもいいですか?

【回答】
インフルエンザは毎年冬になると流行する強い感染力をもった感染症です。高熱がでて、強い咳や筋肉痛、頭痛を伴う重篤な感染症です。普通の風邪と異なり、肺炎や脳炎の合併症を起こしやすく、特に年少の子どもや老人がかかると死亡することがあります。ちなみに厚労省のホームページによると、インフルエンザにかかる人は年間約1,000万人、また死亡数報告数は2001年〜2005年では214人〜1,818人ですが、推定死亡数は毎年10,000人と言われています。
あれ、推定死亡数と報告死亡数はなぜそんなに違うの、と皆さんは思われたと思います。ここに、インフルエンザの予防接種の是非に関する大きな秘密があるのです。インフルエンザの症状は、麻しんや水疱瘡などの特徴的な症状(発疹など)がなく、重い風邪や、肺炎と見分けがつきません。血液検査や喉や鼻の粘膜の分泌物による簡易検査を行わないと、そうした感染症と診断されてしまいます。
インフルエンザワクチンが開発されてその有効性を検査したときに、しっかりと診断されるインフルエンザは統計的に有意には減少していないのではないか、という疑問をもつ専門家がいました(現在もいます)。
しかし、超過死亡概念という疫学的な方法によって、インフルエンザによる死亡数は、血液検査などで確定されたインフルエンザ死亡数よりずっと多いことが明らかになったのです。具体的には、インフルエンザの流行した年と、しない年で国(地域)全体の肺炎による死亡者数を比較するのです。すると、インフルエンザの流行した年には、そうでない年に比べて肺炎による死亡数が万の単位で増加していたのです。つまり、この増加分は、インフルエンザと診断されなかったインフルエンザ肺炎による死亡数にあたります。
さてこうした方法で、インフルエンザワクチンの効果が検証されました。その結果、インフルエンザワクチンには、インフルエンザ患者数を減らす効果があることが証明されました。
しかし、インフルエンザワクチンは、麻しんワクチンほど感染を予防する率が高くありません。その理由は二つあります。弱くした生きたウイルスによるワクチンである麻しんワクチンとちがい、インフルエンザワクチンは、不活化ワクチン(ウイルスは生きていない)なのです。さらに、年によって流行するインフルエンザウイルスは頻繁にウイルスの遺伝子に変異が起こるために、年によって、ウイルス自体がすこし変化しているのです。毎年接種しなければならないのはそのためですが、接種することによって、明らかに感染を起こす確率は減少するのです。
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