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【子どものからだと健康】第2回 「定期接種」と「任意接種」

榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

2016年6月 3日掲載
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このコーナーでは、小児科医であるCRN所長が子どものからだや健康に関する疑問・悩みにお答えしていきます。一覧はこちら


【質問】
予防接種には「定期接種」と「任意接種」がありますが、「任意接種」は受けたほうがいいですか?「任意接種」の対象である水疱瘡(当時)とおたふくかぜは、いつかはかかるものだと思っていましたので、かかった時に軽く済むよう、両方打ちました。おたふくかぜは中学生の今もかかっていません。終生免疫ができていないと思うので、これから大人になってかかることがあるのか心配なのですが、再度予防接種をする必要があるのでしょうか。

【回答】
予防接種をすれば免疫がついて、その病気にかからなくて済む、ということは誰でも知っているのですが、このご質問にもあるように多くの親御さんが疑問に思っていることがたくさんあるテーマです。

このご質問には二つの疑問が含まれています。その一つは予防接種に「定期接種」と「任意接種」があることです。麻しん(はしか)やポリオは定期接種ですが、ムンプス(おたふく風邪)やインフルエンザは任意接種です。定期接種は、勧奨接種(勧奨:おすすめの意)とも呼ばれています。定期接種は予防接種法という法律によって接種することが勧められており、接種費用を国が援助しているため、無料あるいはほぼ無料で接種できます。一方、任意接種は「接種が望ましい」とはされていますが、法律による定めはなく、一部自治体による費用援助はありますが、基本的には自費です。

なぜ、こんな差があるのでしょうか。予防接種で免疫がつくなら、全部定期接種にして国が費用を負担すればいいではないかという意見もでてきます。

理由は単純ではないのですが、予防接種法で定められた予防接種の対象となる病気は、感染性が強く死亡率や後遺症が残る率が高いのです。例えば麻しん(はしか)は感染力が強く、また死亡率も高く後遺症が多い感染症です。統計をみると麻しんの予防接種のまだなかった時代には毎年数千人の人が命を落としていました(1951年には約8,000人が死亡しています)。1976年に麻しんワクチンが開発されて以来、死亡数は激減し、現在では年間20人前後まで減っています。

任意接種の対象の感染症は、麻しんほど死亡率は高くありません。例えばおたふく風邪は、まれな合併症である脳炎による死亡数は年間10人以下であると推計されています。しかし、おたふく風邪は、難聴という重篤な後遺症があり、予防接種を行わないと、毎年500人位難聴になる子どもがでると推計されています。こうした意味で、自費とはいえ接種したほうが良いのです。

おたふく風邪が任意接種になっている理由の一つは、病原性の弱い生きているウイルスによる生ワクチンであるために、野生株(流行しているおたふく風邪ウイルス)よりも軽い脳炎になることがあるからです。自然にかかった場合は、その責任はだれにもありませんが、予防接種で脳炎にかかると、それは接種をした医師や国に責任を求めることになる、という人間社会の原理があるために、国も定期接種にすることにはあまり積極的でないのです。なお、おたふく風邪はアメリカでは定期接種に指定されていることも付け加えておきます。一部の小児科の中には、おたふく風邪は自然にかかったほうがいいと言っている方もいますが、医学的には明らかに誤りです。

二つめのご質問について、おたふく風邪のワクチンによる免疫力は野生株に感染することを防ぐのに十分なのですが、年を経るにしたがって少しずつ低下することがあります。その場合は予防接種をしたにもかかわらず感染してしまうことになりますが、まれなことなので再度接種をする必要はないと思います。

まだまだ、予防接種に関わる疑問はたくさんあると思いますので、次回以降にお答えしてゆきたいと思います。


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筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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