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【比較から考える日中の教育と子育て】 第3回 日本と中国の学校における懲戒制度の違い

要旨:

本稿では、日本と中国の小学校から高校までの学校における懲戒制度について検討する。日中ともに、懲戒の実施の権限は各学校にあるため、学校間の違いがあるものの、両国それぞれに国全体としての特徴が見られる。最後に、そうした日本と中国の懲戒規程の差異が生じる背景要因についても検討を行う。
中文

何年か前に中国の学校を見学していて、次のような掲示を見かけた。その時には何となく書かれている内容に興味があって写真をとったのだが、先日写真の整理をしていて、この写真を見つけ、ふと内容が気になり始めた。

lab_08_04_01.jpg

これを日本語に訳すと次のようになる。

「布告

高校三年のA同学(中国の学校において同じ学校で学ぶ学生につける呼称)は、日頃自由奔放に振るまい、クラス担任が何度も辛抱強く教育したにもかかわらず、依然としてわがままであり、しばしば遅刻し、授業をさぼること、合計10回以上にのぼった。このたび、「B高校奨懲条例」にもとづいて、政教処*1が検討し決定する。A同学を警告処分とし、また500字の事情説明書を書いてクラス担任に提出することとし、行為規範得点を20点引くこととする。本校の学生はこれをもって戒めとし、学校の各規則・制度を厳格に遵守することを希望する。

政教処」

何度も授業に遅刻したりサボったりを繰り返したのだから、反省文を書かせるというのは妥当な処分として理解できる。ただ、日本人の目からみた時に、いくら素行がよくないとはいえ、公開でその行為を批判する必要はないではないか、という意見もあるだろう。特に「本校の学生はこれをもって戒めとし」のあたりは、少し「見せしめ」的な部分も感じられ、生徒指導の方法としては好ましくない、という意見もあるのではないだろうか。

私もそうした違和感を感じてしまった一人なのだが、文化比較において、違和感は「真実の影」である。見つけたらしっかり踏んで影から離れないようにしなければならない。そこで、今回はこうした日本と中国の初等中等教育段階の学校の「懲戒」をめぐって、比較考察してみることとする。

1 「懲戒」の法的根拠

まず、日中両国の教育法制の中での「懲戒」の位置づけについて押さえておきたい。学校が懲戒を行う「権限」については、日中ともに比較的明確な法律上の規定がある。「中華人民共和国教育法」第28条には「第二十八条 学校及びその他の教育機関は以下の権利を行使する」とあり、その4項に「(四)教育を受ける者に対して学籍管理を行い、奨励あるいは処分を実施する」とある。一方、日本については、学校教育法第11条に「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」とある。つまり、日中ともに、児童・生徒に対して懲戒を行う「権限」は各学校(校長)に対して法的に認められている(体罰は日中ともに認められていない)。

一方、懲戒の具体的な「方法」については日中ともに法的に明確な規定はない。中国の場合には、「懲戒方法」は法的に規定されているというよりも、中央あるいは地方政府の教育部(中央の教育部は日本の文部科学省に、地方の教育部は教育委員会にそれぞれ相当する)が公布する「規定」や「通達」に沿う形で各学校で定める。そのため、学校間で(あるいは地域内で)懲戒規程の文言が全く同じ場合もあれば、その学校独特の懲戒規程になっている場合もあり、まちまちである。日本では基本的には懲戒の内容や基準については各学校に任されている(退学については、学校教育法施行規則第26条第3項に退学の要件が定められている)(文部科学省,2010b)。が、こちらも文言まで一致することはないものの、懲戒の種類や基準についてはなんとなく全体的に共通性が生じていると思われる。あくまでおおまかなまとめだが、文書化され統一された大原則があって、それに従いつつも各学校で違いが出てくる中国と、各学校でバラバラでありながら全体的に統一感が出てくる日本、という傾向の違いはあるかもしれない(日中ともに学校間の違いは大きいようなので、以下の分析についても、あくまでも「おおまかな傾向」として理解していただきたい)。

2 「懲戒規程」の学校内での運用実態

中国で、児童・生徒にそうした学校内で決められた規則などが明文化して提示されるもののひとつとして「学生手冊(日本でいえば「生徒手帳」などにあたるもの)」がある。「学生手冊」の内容については、各学校で違いが見られる。中には国歌の歌詞や校訓、未成年保護法などの法律条文が含まれている場合もあるが、ここでは学校内の規則に関連する部分だけに注目しよう。

規則に関する内容は、おおまかに言えば、1.教育部などで決められたもので、地域や国家レベルで共通性が見られるもの、2.各学校の状況に合わせて各学校で定められる細則や制度、の二つの内容が含まれている。1については、小学校から中学校(日本の中学校と高校にあたる)までの段階ではたいていの学生手冊が「中小学生守則」、「小学生(中学生)日常行為規範」をその中に含めており(これらについての解説は孟(2002) を参照)、これらは教育部が規定し公布したものである。2については、たとえば寮生規則、校舎使用管理規定、試験規則などである。「違紀処理規定(奨罰条例)」も各学校によって違いが大きく、2の中に含めることができる。また「小学生(中学生)一日常規」も各学校が定めているので2と考えることもできるが、学校間で共通性の高い「中小学生守則」、「小学生(中学生)日常行為規範」に沿って「一日常規」を定める学校が多く、よって比較的学校間での共通性が高くなるため、1と2の中間ぐらいの位置づけではないだろうか。学校によっては、懲戒規程が「小学生(中学生)一日常規」の中に含まれている場合もある。これらの内容は、学校によってはHPに掲載されている場合もあり、したがって中国では「違紀処理規定(奨罰条例)」については、基本的に公開しておくべきもの、というコンセンサスがあるとみていいだろう。

違反者に対する罰則(表1参照)については、その適用基準が詳細に規定されている場合も多く、たとえば、

「学期内で理由なく授業を無断欠席することが、累積10コマから20コマに達した者には警告処分を与える;20コマから30コマに達した場合は厳重警告処分を与える;30コマから40コマに達した場合は記過処分を与える;40コマから50コマに達した場合は留校察看処分を与える。」
「試験でのカンニング行為を行った者については次のような処分とする;1)中間試験あるいは期末試験で一科目カンニングした場合は警告処分とする;2)中間試験あるいは期末試験で二科目カンニングした場合は記過処分とする;3)中間試験あるいは期末試験で三科目カンニングした場合は留校察看処分とする;4)中間試験あるいは期末試験で四科目以上カンニングした場合は開除(学籍)処分とする。」

といったものである。

それに対して、日本の学校の場合には、懲戒の規則をあいまいにしている学校が多い。公立高等学校を対象に行った文部科学省の調査(文部科学省,2010a)によれば、懲戒の基準を周知させる方法としては、「全校集会等を利用して生徒に周知(82.3%)」、「PTA集会等を利用して保護者に周知(72.6%)」、「校長名の文書を発出して周知(12.3%)」、「保護者だより等を利用して周知(17.2%)」、「その他(27.8%)」などであり、「生徒手帳などで周知させる」は「その他」の中に含まれており、それほど割合は多くない。中学校については、めぼしい調査がみあたらなかったが、文部科学省が行った別の調査(文部科学省,1991)の調査結果の中で、「中学校では校則違反者に対する「懲戒」という措置が、校則に定めがないことが多く、言葉自体なじまない」と書かれているように、高校よりもさらに明確な規定がないことが推測される。小学校についてはなおさらである。

3 懲戒の種類

さて、懲戒の種類(表1)である。中国の大学の場合には、「普通高等学校学生管理規程」(高等学校は日本でいえば大学などの高等教育機関にあたる)に沿って「校紀校規」(校則)が定められており、その中に懲戒の規定が含まれている。その「普通高等学校学生管理規程」の第53条には、警告、厳重警告、記過、留校察看、開除学籍、の五種類の処分のタイプが示されている。私は小学校や中学校も含めて中国の学校における懲戒はこの五種類なのかと思っていたが、研究室の後輩の話では、彼女が子どもの頃には、学校の中に「通報批評」という処分方式があったらしい。たしかに、小学校から高校までの段階の「学生手冊」を見ていると「通報批評」が懲戒方式として含まれている学校もある。すべての大学の校紀をみたわけではないので、大学についても「通報批評」が懲戒として規定されている学校もあるのかもしれない。ホームページなどで公開されているいくつかの学校の「違紀処分条例」を見たところ、重さが軽い方から順に、主に批評教育(通報批評)、警告、厳重警告、記過処分(記過、大記過)、留校察看、勧其退学(勒令退学)、開除学籍の6種類の処分が多いように思われる。「留年」といった処分は、以前はあったが最近はなくなったらしい。もちろん、「批評教育」がなかったり、例えば小学校などで罰金制度(違反者に一定額の罰金を払わせる)を設けている学校もあり、地域や学校による違いは存在する。また、こうした処分と同時に、最初の写真の中にも見られたように、点数を累積的に引いていく方式や反省文を書かせる処分をとっている学校も多い。

個々の懲戒方法の内容について説明すると、「記過」処分以上の処分については、档案(表1の注参照)にその不良行為の内容が記される。私の親友の話では「档案に記録が残るというのは、恐ろしいことなのよ」とのこと。つまり、一生その違反の経歴がついて回るのであり、ただ単純に卒業すればその記録が消えるわけではない(改心して良い児童・生徒になったと認められれば、記録がなくなる場合もあり得る)。進学や就職の際に、その档案が判断材料の一部となることを考えれば、「前科」と似たような意味をもつと考えていいだろう。「記過」は档案に記録を残されることである。「留校察看」は学校に籍を残したままで経過観察が行われ、一定の期間内の素行に問題がなければ解除される。また、「勧其退学」および「開除学籍」は、日本で言う「自主退学」と「強制退学」にあたる。

「通報批評」と「警告」、「厳重警告」あたりの処分内容の違いについては区別が難しい。「通報批評」も「警告」も児童・生徒の校則違反に対する指導であり批判による他の児童・生徒への教育である。したがって、ともにその内容が全校に通知(通報)されることが多い。しかしながら、批評教育(通報批評)は規律違反による「処分」というよりも、「教育的指導」の意味合いが強いものである。「処分」である「警告」とそうでない「通報批評」のの違いのひとつは「档案」に記録が残るかどうか、という点であろう。「警告」が「処分」である以上、学校によっては、「警告」の段階ですでに档案に記録が残されることもあるようだ。ただ、私の周囲の人に聞くと、一般的に「警告」ではなく「記過」以上で档案に記録される、とする見方もあり、このあたりはあいまいである。「記過」以上の違反については比較的厳密に対応する懲戒が実施されるものの、警告以下の懲戒については、比較的柔軟に状況に合わせて対処されているのかもしれない。もちろん、私の周囲の人々が良い学生だったために、あまりこの間の事情について詳しくない可能性もあるのだが。


表1 中国の学校における主な懲戒の種類
懲戒の名称 懲戒の内容 档案への記録の有無
 批評教育(通報批評)  公開で批判される  档案に記録は残らない
 警告  規律違反を正すために公開で警告される  档案に記録が残る場合も
 厳重警告
 記過処分  違反内容を記録される  档案に記録が残る
 留校察看  処分後改心したか、一定期間校内で観察される
 勧其退学  退学の勧告(自主退学)
 開除学籍  強制退学

※懲戒の軽重と内容が一致していない感もあるが、たとえば、「記過処分」などでも警告や批判は行われる。
※档案とは、生年月日、家族構成、職歴、犯罪歴など、出生から現在にいたるまでの、ありとあらゆる個人情報が記録された身上調書のこと。たとえば就職活動の際などにも档案の提出を求められる。


日本の場合には、上でも述べたように、懲戒の内容については明確な規定を定めないことも多い。規範を決めている学校については、文部科学省の調査(文部科学省,2010a)によれば、学校内で定められている懲戒の種類としては、「自主退学」、「期限を定めないで行う自宅謹慎」、「期限を定めて行う自宅謹慎」、「学校内謹慎、別室指導」、「校長による説諭等」となっている(図1)。また、国立教育政策研究所の報告書には、学校における懲戒として、注意、叱責、居残り、起立、宿題、清掃、文書指導、別室指導、訓告などが挙げられている(国立教育政策研究所生徒指導研究センター, 2006,p.13)。これ以外にも、考えられる懲戒としては、保護者召喚、留年、強制退学などがあると思われるが、別室指導、保護者召喚、校長による説諭、については懲戒というよりもかなり「指導」の意味合いが強いと思われる。また、留年や強制退学については、よほどのことがなければ行われないのではないだろうか。特に、日中の違いとして重要なのは、日本の義務教育段階の公立学校の場合には、退学も停学もない、という点だろう。ただし、「性行不良であつて他の児童の教育に妨げがある」場合には、児童・生徒ではなく、その保護者に対して「(その子どもの)出席停止」を命じることはできる(学校教育法第35条)。

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図1 各項目を懲戒として定めている公立高校の割合
(出典)文部科学省「高等学校における生徒への懲戒の適切な運用についての調査結果について」(文部科学省,2010a)

4 懲戒規則をめぐる日中の違い

まとめると、日本でも中国でも、懲戒の実施の権限は各学校にあり、懲戒内容に学校間の違いがあるものの、それぞれの国の内部で全体として共通の特徴が見られる。中国の場合には、懲戒の基準と内容について、予め学校内で明確に設定してある場合が多く、逆に日本の場合には「柔軟な対応」を目指してあいまいなままにしておくことが多い。また、懲戒の内容については、中国が比較的軽度の規則違反についても公開で批評するなど厳格な懲戒を行おうとするのに対して、日本の場合にはできるだけ、生徒個人に対する指導の形をとって、表立った「罰」は与えないことも多い。同時に、中国の場合には、懲戒の内容が記録に残ることが多く、日本の場合には、違法行為でなければ、学校内で一時的な処分がなされる(つまり違反の経歴は残らない)場合が多いだろう。

ところで、中国においてもこれらの明確に示された懲戒規則が機械的に適用されるわけではない。生徒の状況をみて、あるいはいわゆる「人間関係的に」柔軟に処分の判断・決定が行われる(もちろん規則は規則として重視しながら、である)。むしろ、日本のほうがいったん決められた規則に対しては、厳密に適用しなければならないという意識が強いのかもしれない。

そのことは、日中両国における懲戒規程の変化の傾向からもうかがえる。中国において学校の懲戒規程が明確かつ厳密なものになっていく一方で*2、日本では、たとえば文部科学省が行った校則の見直しに関する調査(文部科学省,1991)の中で、「全体の傾向は、懲戒等の措置についても緩和・弾力化の方向にむかっている」と述べられている。また、文部科学省の懲戒についての調査(文部科学省,2010a)によれば、懲戒基準を設定しない理由として「状況に応じた対応を優先する」、「一律の基準の設定、明文化が困難」といった回答が、また、基準を周知しない理由として「基準の周知によって指導の柔軟性を欠く恐れがある」などの回答が挙げられている。その他にも、規則を厳格に設定・適用することは、児童・生徒の自主性(自主的に規則を守る気持ち)を損なう、とする考え方もあるだろう(e.g.,加治佐ら,1989;高,2004)。

つまり、同じように児童・生徒の状況に合わせて柔軟に対応すべきだと考えていたとしても、その具体的方法のうえでは、原則を厳密に定めたうえで人間関係上のやりとりで柔軟さを実現する中国と、原則を定めてしまえばそれは厳守すべきものになってしまうので予め原則自体をあいまい化させておく日本、という違いが見られるのである。もちろん、日本の文部科学省自体は、基準の明確化を進めているようなので、今後日本の懲戒の方法もより明確化されていく可能性はあるかもしれない。

最初の写真に戻れば、写真のような「公開批評」といった懲罰は、日本のように「できるだけ懲罰は行わない」といった方向で考える場合には「重すぎる処罰」と感じられるかもしれない。ただし、以上述べて来たことから考えれば、中国の懲戒制度の中では必ずしも重いものとは言えない。むしろ、(「警告」段階ではあるが)教育的意味合いの強い懲戒である。結局、ひとつの懲戒の「軽重」といったものは、ひとつの懲戒システムの中でも、また懲戒システム間においても、常に相対的なものでしかないのである。また、中国的な、軽度の違反行為に(日本的な感覚で言う)厳罰を課する方式が、悪い教育方法とも言えない。軽度の段階で明確な処分を設定するほうが、より大きな違反の発生を防ぐことができる(中国語で言えば「杜漸防微」)、という考え方もあるからである(国立教育政策研究所生徒指導研究センター,2006,p.14)。

むしろ、そうしたシステムが何を目指したシステムなのか、という点について考えてみるほうが重要かもしれない。ある人と中国の学校の懲戒のシステムについて話していた時、「『行政化』はまさに中国の教育のひとつの特徴だね」と言っていた。規律違反に対して、点数を引き、公開で批判し、档案に記録を残す、というのは、企業や大学、官庁など大人の社会においてもほぼ同型の懲戒システムが存在する。つまり、こうしたシステムにとっては「秩序維持」や「管理」が重要なのであり、その点で大人社会も学校の中も変わりがない*3。制度的には「管理」を重視しつつ、学校では、個別の場面で「人間味をもって教育のために」教師が対応していくのである。最初の写真の中でも、「クラス担任が何度も辛抱強く教育したにもかかわらず」のあたりに、処罰以前に現場の教師が必死で生徒を改心させようとしている姿が浮かんでこないだろうか?このことは、日本のように学校は「教育の場」であるとして、大人社会の「秩序維持」「管理」をベースとした規範とは一線を画す方式とは対照的な違いが見て取れるだろう。当然、これらは人口規模や政治体制など*4、日中の社会的・歴史的背景の違いと関連があることは言うまでもない。

今回は、日中の学校の懲戒制度をめぐって論考を進めた。懲戒規程の実際の運用状況などについては、また機会があれば稿をあらためてさらに詳しく論じてみたい。


謝辞 執筆にあたっては、北京師範大学教育学部潘暁青さんに資料や情報の提供および貴重な意見をいただきました。心より感謝申し上げます。


  • *1 日本の学校における「生活指導部」に近く、生徒の生活指導や徳育の向上に関連した事柄を受け持っている。ただし、社会体制が違うので日本の生活指導とは少し違った面もある。
  • *2 たとえば、羅(1992)は日本の小中学校の校則が非常に細かく規定されていることに驚いている。「学校が校則を制定する目的は主に正常な教育秩序を維持・保護するためである。よって校則が定める事項は学校の教育、学生の校内での生活と密接な関係があるべきである。しかし、日本の小中学校の校則はそうではない。(中略)日本の小中学校の「学生守則」が規定する事項は一般に20あまりにものぼる。」90年代初頭の中国人の感覚からすれば、日本の学校の校則は細かすぎ、あまりにも管理が厳しいという印象だったのだろう。しかし、その後20年あまりの間に、中国の学校の校則も日本に勝るとも劣らない細かい規程を含めるようになった。また、校則の細かさと懲戒の厳しさは必ずしも一致しない、ということも指摘しておく必要があるだろう。
  • *3 もちろん、中国の人々が学校において規則による厳格な「管理」を行うことを必ずしも良しとしているわけではない(高,2004)。
  • *4 学校規模と校則の明文化、定型化の関係については、吉原ら(1988)参照。

    <文献>
  • 加治佐哲也・川村真寿美・北林紀美・佐々木和子・鈴木勝代・高塚叙子・田村文子・富永京子・直野由美・水永直美・森山容子・上野総子・大堀久美・隈田原明美・黒木優子・高妻直美・坂元めぐみ・佐々木清美・瀬堀真紀・田中美和・野崎めぐみ・福山みゆき(1989).中学校・高等学校の校則に関する調査.宮崎女子短期大学紀要.15.119-143.
  • 国立教育政策研究所生徒指導研究センター(2006). 生徒指導体制の在り方についての調査研究報告書 -規範意識の醸成を目指して- 国立教育政策研究所 2006年7月6日 (2013年5月8日)
  • 高慶蓬(2004). 校規制定中的若干関係辨析.教学与管理.8.3-5.
  • 羅東耀(1992). 日本中小学校規:処在寛厳十字路口.当代青年研究.2.44-47. 孟洪珠(2002). 中国の校則 : 中学校校則を中心に. 東京大学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要.21.113-116.
  • 文部科学省(1991) 校則見直し状況等の調査結果について 文部科学省 1991年4月10日 (2013年5月8日)
  • 文部科学省(2010a) 高等学校における生徒への懲戒の適切な運用についての調査結果について 文部科学省 2010年2月1日 (2013年5月8日)
  • 文部科学省(2010b) 生徒指導提要 文部科学省 2011年4月  (2013年5月8日)
  • 吉原智恵子・藤森立男・飛田操・丸山純一・室山晴美・永田良昭・佐藤寛之・下斗米淳・高山典子・高良美樹・弓削洋子(1988).校則にみる学校組織の制度化に関する研究 : Ⅳ 学校規模との関連.日本教育心理学会第30回総会発表論文集.538-539.
筆者プロフィール
Watanabe_Tadaharu.jpg渡辺 忠温(中国人民大学教育学院博士後)

東京大学教育学研究科修士課程修了。北京師範大学心理学院発展心理研究所博士課程修了。博士(教育学)。
現在は、中国人民大学教育学院で、日本と中国の大学受験の制度、受験生心理などの比較を行なっている。専門は比較教育学、文化心理学、教育心理学、発達心理学など。

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