1.はじめに
現在、「子どもとメディア」において一番大きなトピックは、「スマホ」や「タブレット」という、パソコンや携帯電話以上に非常にパワフルなツールが急速に普及しつつあることだと思います。
スマホ、タブレットという新しいメディアは、あまりにも急速に普及してきましたので、まずは、現在どのようなことが起きつつあるのかを把握する必要があるのではないでしょうか。実際、子どもに関するスマホやタブレットが話題になることも多いのですが、想像や大人の感覚だけで話をしていて、実際の子どもがどう使っているかが抜け落ちているように感じます。
こういった新しいメディアは、そのメディアに対するネイティブにとっては、それまでのメディアから移行した世代とは違った体験や経験をしている可能性があることが、これまでの「子どもとメディア研究室」の継続的な調査からも明らかになっています。
2.これまでの調査
ちょうどChild Research Netが誕生した1996年頃から、日本では、パソコンをはじめとするIT機器が急速に家庭に普及していきました。
その後、インターネットの高速回線の普及、携帯電話の普及、データ通信の高速化と、次々とIT環境は変化していきました。
そんな中で、子どもの頃からデジタル機器に親しむ世代が出てきます。特に生まれた時からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育った世代を「デジタルネイティブ」と呼ぶようになりました。
彼らは、後からデジタル機器を使い始めた世代とは、まったく違った感覚でデジタル機器を使っています。
そんな彼らの特徴を、「子どもとメディア研究室」では、インタビューを中心に調査してきました。
継続的な調査から、彼らの中にも世代による特徴があることがわかってきました。
・ポケベル&プリクラ世代 (1980年頃の生まれ)
プリクラとポケベルを使って、今のモバイル・コミュニケーションの原始的なことを行っていた世代。
一日中、短文をやりとりし、写真の交換によって、それまでにない友達作りが行われ始めた。
・ケータイ世代(1985年頃の生まれ)
PHS・ケータイを使ってメールや写真を送り合いながらコミュニケーションをとっていた世代。
ケータイのみを使い、「パソコンでもケータイと同じことができるんだぁ」と驚く世代。
・ケータイ&パソコン世代(1990年頃の生まれ)
もともと家にパソコンがあり、モバイルとしてケータイ電話を持った世代。
パソコンとケータイを状況によって使い分ける。
そして、最近のスマートフォンの普及によって、新しく「スマホ&タブレット世代」(2000年頃の生まれ)が現れてきているようです。
まずは彼らの特徴を調査すべく、慶應義塾大学経済学部武山政直研究会と共に共同研究を行いました。
新しい「スマホ&タブレット世代」を、もっと近い世代、そして同じデジタルネイティブである大学生の視点から調査することによって、その違いがよりわかってくるのではないかと考えたからです。
3.調査の結果
実際に、「スマホ&タブレット世代」である中高生のインタビュー調査を行ってみると、今の現役の大学生すら「変!」と感じる、ITの新しい使い方がされていることがわかりました。
特に友達関係、恋愛関係など、人間関係の中に大きな変化が見られるようになっているようです。
そして、生活がスマホに支配されていると言えるくらいの頻度で使っている子どもたちも存在しています。
大きな特徴としては、LINEなどに代表されるインスタントメッセンジャーアプリにより、リアルタイムのきめ細かなコミュニケーションが可能になったことによって、学校生活、特にクラスの人間関係が、24時間、家の中にも入ってくるようになってきているようです。
そして、学校でのキャラクターを常に演じる必要があり(「キャラかぶり」を嫌う *1)、それによって息苦しさを感じ、そのため別の自分を出せる、また本音を言える場として、外(他校や大人)に向かって新しい人間関係を作ろうとしている傾向があるようです。また、自分探し、自分を見つけたいという傾向も。
こうした傾向は諸刃の剣で、良い面もあれば、社会問題ともなっている「ネットいじめ」や「出会い系」でトラブルに遭う子どもなどもおり、今回のインタビューでは、あまり出てこなかったものの、大きな社会問題にも繋がっているように感じました。
調査についての詳細は、慶應義塾大学経済学部武山政直研究会からの報告書をご覧ください。
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