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中高生のスマートフォン利用実態調査 (2)

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1.はじめに

慶応大学武山研究会の学生研究チームは、首都圏の中高生の男女20人を対象に、メディア接触の傾向について調査を実施した。まずグループインタビューによって、中高生の日常生活やスマートフォンの使用場面について調査を行い、インスタントメッセンジャーアプリを用いた新しい調査方法を試みることで、今日の高校生と、我々研究チームの高校生時代との比較を行った。

2.グループインタビューから得た気づき

インタビュー調査の結果、以下のような話を聞くことができた。

a) 高校生の中には、教師とインスタントメッセンジャーアプリを通じて「勉強の相談」や「たわいもない会話」を行う者もいる。我々大学生が高校生の時代には、教師は気軽に語りかけることのできない特別な存在で、コミュニケーションの表現も形式的なものであったように思う。スマホネイティブ世代(スマホ・タブレット世代)の子どもと教師の心理的距離はより近くなっているのではないだろうか。

b) テストの前に、スマートフォン用のグループテレビ通話アプリを使って、お互いの顔を見ながらそれぞれの自宅で勉強しているという高校生がいた。スマートフォンのインカメラでお互いの顔を映しあい、相手が焦って勉強している様子を見ると、緊張感をもって勉強に集中できるためである。スマホネイティブ世代では、ネット上のつながりが、対面のつながりに一層近づいてきている可能性がある。

c) 女子中学生のインタビューでは、友人間で発生しているいじめは、リアルの場にとどまらず、インスタントメッセンジャー上での、グループの強制退会や悪口の投稿などの手法でも行われているという話があった。スマートフォンの普及によって、「いじめ」はより行い易くなり、またその時間や場所の制約もなくなってきていると考えることができる。

d) ある男子高校生の間では、スマートフォンのゲームアプリに夢中になっている仲間が多く、そのゲーム内のゲリライベント(ある決まった時間だけに開催される限定イベント)に参加するため、休み時間の10分程度の時間にもアプリを起動して遊んでいるとのことであった。スマートフォンの登場により、ゲームはリアルタイムで、突発的に遊べるものとなり、高校生の生活の中に断続的に、かつたやすく侵入できるようになっている。

e) ある男子高校生は、付き合っている彼女には、他の友達とは別の種類のインスタントメッセンジャーを使っている。相手によってコミュニケーションツールを変えているようである。また、好きな子に思いを伝える時は、「より重みがある」との理由でメールを選ぶという生徒もいた。スマホネイティブたちも、スマートフォンの中で、状況に応じてコミュニケーションのアプリをうまく使い分けているようだ。

f) ある男子高校生からは、その周囲で、メッセージを送ると自動で返信がされる企業や芸能人などのアカウントをインスタントメッセンジャーのグループ内に入れる遊びが流行っていることを知らされた。対象がリアルからデジタルに変わったが、あるものを本来の用途でない使い方で遊ぶ創意工夫は、我々の高校生時代にも見られた現象である。

g) 男子中学生のiPod touchユーザーの中には、通学中の電車の中で、iPhoneを持っている友だちにテザリング *1してもらうことでネット接続をしている者もいる。中学生でも現在の通信技術の仕組みを理解しており、また友達と一緒にいるときや通学の途中でもネットにつながろうとしている者もいる。

h) 女子中高生へのインタビューから、彼女たちの周りにはiPod touchの利用者が多くいるため、どこかお店で話す時はWi-Fiがあるカフェを優先するということがわかった。都市の公衆的な無線LANは中高生にとっても重要なインフラになっているようだ。

i) ある男性高校教師へのインタビューから、子どものスマートフォンの利用に否定的な意見が聞かれた。インスタントメッセンジャー上でのクラスの人間関係のトラブルや、休み時間のゲームアプリの利用、SNSで見知らぬ人と連絡を取ったことによる非行など、スマートフォンに関わる問題が彼の受け持つクラスでも多発しているらしい。我々大学生から見ると、教師、生徒それぞれに、スマートフォンの正しい使い方、メリット、デメリットをしっかり認識することが重要と思われる。

3.インスタントメッセンジャーアプリを利用した生活調査

グループインタビューではわからない高校生のリアルな生活の様子を知るために、高校生が日常利用するインスタントメッセンジャーアプリを利用した調査を実施した。このアプリを用いて、調査対象の3名の男子高校生と女子大生2名が1対1で1週間やりとりをした。その手続きとしては、高校生から生活の様子をスタンプと画像だけで報告してもらい、それに対して女子大生がスタンプで反応するというものである。スタンプを押すだけの気軽さなら、男子高校生もあまり面倒に思わないだろうとの配慮からである。

この調査を通じて垣間みることができた、スマホネイティブ世代の高校生の習慣の特徴を以下に記す。

a) ファッションアプリでセンス磨き
我々が中高生の頃は、毎月ファッション雑誌を購読して流行情報を得ていたが、調査をした男子高校生は好きなファッションブランドのアプリをインストールして情報収集していた。

b) 焼き肉パーティーのインスタントメッセンジャーグループ
図1の右の画面は男子高校生と女子大生の会話を、左の画面は男子高校生が会話で送ってきた画像を参考に作成したものである。彼らは何かイベントを企画する際には、幹事が決めた内容を他の参加者に連絡するのでなく、インスタントメッセンジャーアプリでグループ間チャットを使用して、参加者全員で話し合って決めているようだ。さらに、焼き肉パーティー当日の様子を送ってくれた画像の中には、お米の炊き方が分からずにスマホで検索したとわかるものがあった(図2)。

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図1
※実際のやり取りの内容を元に、編集部が作成しました。

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図2

c) 暇な時のお笑い鑑賞
男子高校生から受け取った画像の中には、スマホでYouTubeを観ているものがあった。私たち研究チームのメンバーは、スマホよりもパソコン上でYouTubeを観ることが多い。私たちはスマホがない時代からパソコンに慣れ親しんでいたからだ。グループインタビューでもあったように、最近の中高生はパソコンを使わなくなっているようだ。

4.まとめ

中高生のスマートフォンの利用は、依存症やネットいじめなどの社会問題として捉えられ、その使用に対して否定的な見方が多いのが現状である。今回の調査を通して、スマホネイティブ世代の、自らの世代とは異なる行動の特徴やその背景について理解し、中高生のスマートフォン利用の肯定的な側面も少なからず見出すことができた。特に、インスタントメッセンジャーによって先生に気軽に勉強や生活の質問ができるようになったり、そのアプリのグループ機能がクラスでの活動を促進させたりなど、スマートフォンから多くのメリットを享受している中高生も多いようである。中高生のスマートフォン利用を規制するだけではなく、その利用による良い面を学校側や保護者が理解し、大人と子どもが協力して、より望ましい利用の方法や環境をつくり上げていく必要があるだろう。


  • *1 スマートフォンを外付けのモデムのように扱い、それを経由してインターネットに接続すること。
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