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中高生のスマートフォン利用実態調査 (3)

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平成25年度のChild Research Net(CRN)と慶應義塾大学経済学部武山政直研究会との共同研究として、平成25年6月から平成26年2月までの期間において、中高生のメディア接触の特徴把握と、それに基づく新規情報サービスの企画調査を実施した。この研究に取り組んだのは、同研究会の大学生の3・4年生6名からなるチームである。慶應大学武山研究会は、サービスデザインと呼ばれる、利用者と提供者双方の観点から満足度の高いサービスを生み出す実践的な研究を行う。今回の共同研究は、子どもとデジタルメディアとの関わりに関心を持つCRNと、デジタルメディアを活用した新規サービスの可能性を探る武山研究会の関心の一致により実現した。

"スマホネイティブ世代"と呼ばれる、2000年前後に誕生した今日の中高生は、スマートフォンの急速な普及時期に幼少期から青少年へと成長するが、パソコンや携帯電話に親しむよりも先にスマートフォンに慣れ親しんでいる。研究に取り組んだ大学生は、中高生よりも4~8年ほど先輩だが、中高生と同じようにスマートフォンに親しみながらも、パソコンや携帯電話の継続的な利用の後にスマートフォンを利用し始めたという違いがある。大学生は、年齢が比較的近い中高生のメディア接触の特徴を理解し易く、また自らの中高生時代の記憶が新しいことから、現在の中高生との違いにも気づき易い。さらに大学生は、中高生に見られる特徴を、大人にとってもわかり易い言葉に翻訳して伝えられるので、この研究テーマの遂行に期待が寄せられた。

調査に当たり、研究チームの大学生は、中高生へのグループインタビューに加え、スマートフォン用のインスタントメッセンジャーアプリを活用する新たな方法の開発に挑戦した。多くの高校生が日常的に利用するツールを用いて、大学生が高校生の生活にできるだけ自然に介入しながら、そのメディア利用の実態を遠隔で観察していくというアイデアは、社会調査の方法としても斬新である。この方法によって、調査されることに慣れていない高校生も、普段の様子を気軽に表現できるようになる。また、この調査の結果、スタンプと呼ばれるイメージを利用した大学生と高校生のチャットの記録がデータとして集められることになるが、このようなデータを読み取る能力も大学生には備わっているようだ。

大学生によるレポートにも記載があるが、その目に映った、現在の高校生と自らの高校生時代の生活の様子との違いとして、いくつかの興味深い特徴が確認できた。

例えば、大学生にとっては、その高校生時代からパソコンで行っていた情報の検索や、クラスメートとのビデオ会議やチャット、さらに雑誌を通じた流行情報の入手などは、現在の高校生ではすべてスマートフォンの機能を利用した行動に集約されている。また、スマートフォンのテレビ電話アプリケーションやインスタントメッセンジャーアプリの利用を中心に、テキストだけでなく、イメージや写真、動画を用いた遠隔のライブコミュニケーションの生活への浸透が、はるかに進んでいるということも大きな違いだ。そして、そのようなライブコミュニケーションの普及は、高校生のクラスメートとの交流が、学校内だけでなく、放課後の時間や家庭で過ごす時間も継続される、"クラスのユビキタス化"とも呼べる新たな事態を生んでいる。いつの時代も、高校生にとって、自らの通う学校のクラスは重要な帰属組織であったが、学校にいないときも、その関係性を常に意識し続けているという状況は、スマートフォンの普及後の特有の現象と考えることができる。

今日の大学生にとってインターネットは、自分が学ぶ大学や、学生という身分を超えて、同世代や異世代との様々な人々との交流機会をもたらす手段であり、学生たちはそのような共同体を横断するブリッジングの機会を、趣味やボランティア、勉強や就職活動などに積極的に活かしている。それに対して、高校生のインターネットの活用は、帰属組織内の密度の高いコミュニケーションを強化するボンディングのウェイトが極めて大きい。スマートフォンによるこのような"ボンディング環境のどこでも化"が、クラスメートの間のいじめや、睡眠不足といった様々な問題とも密接に関わっていることを考慮すると、クラスメートとのチャットに集中する傾向の強い高校生に対して、より広がりのある多様なオンラインコミュニケーションの魅力や楽しさ、感動に触れる機会を増やすことが課題と感じられる。事実、調査に当たった大学生からもそのような問題意識が指摘された。

大人から見ると、子どもたちがインターネットを通じて様々な人々と接する機会が増えることには危険性も感じられ、心配の声や制約すべきとの意見も聞かれる。確かに、インターネットやデジタルメディアの活用に当たり、子どもたちが相応のリテラシーを身につけていくことはとても重要である。しかしその一方で、インターネットがもたらす社会の変化や様々な可能性、子どもたちに見られるメディア接触行動の特徴を理解し、未来に活躍する子どもたちの学びや経験の環境を整えていくことは、同様に大切な大人の役割である。

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筆者プロフィール
武山 政直(たけやま まさなお)

慶應義塾大学経済学部教授
慶應義塾大学経済学部卒業後、同大学院経済学研究科に進学。1992 カリフォルニア大学サンタバーバラ校大学院に留学後Ph.D.取得。慶應義塾大学環境情報学部助手、東京都市大学講師、准教授を経て2003年より慶應義塾大学経済学部准教授に就任。2008年より同教授。都市メディア論、マーケティング論の研究を背景に、ICTを活用したサービスデザインの研究に着手。企業と顧客の価値共創プラットフォームの構築、ストーリーテリング手法を応用したサービスプロトタイピング、サービスのイノベーションの方法開発を対象に、実践的な産学共同研究プロジェクトを推進。Service Design Network会員、SDN Japan共同代表。
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