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子どもとスマートフォン、タブレット ~新たな危険~

河村智洋 (チャイルド・リサーチ・ネット 外部研究員)

2013年3月15日掲載

要旨:

ここ数年の急速な普及により、子どもたちの間にも広まり始めているスマートフォンやタブレット。高性能で便利である一方で、仕組みが複雑で責任の所在がわかりにくかったり、リスクへの対応が後手に回っていたりと、問題を抱えていることも事実です。スマートフォンで撮影した写真をSNSに載せることや、ゲームやアプリの課金、人間関係上のトラブルや詐欺など、スマートフォンの利用をめぐる危険やトラブルを紹介します。
1. 仕組みがブラックボックス化しているスマートフォンやタブレット

ここ数年、スマートフォンやタブレットが急速に普及して、携帯電話よりパソコンに近い高性能な端末を手軽に持ち歩けるようになりました。それに伴い、携帯電話のキャリアも今はスマートフォンに力を入れるようになり、価格も安くなりました。モバイルの新たなサービスは、スマートフォンから出てくるようになりつつあります。そうすると、携帯端末を持ち始める、あるいは、今持っている携帯電話から買い換える子どもたちも、スマートフォンを購入するようになり、急速に子どもたちの間にも広がり始めています。

ただ、スマートフォンはまだまだ新しい仕組みです。パソコン並み、いや、安価なパソコンよりも、よっぽど高性能な端末を持ち歩けるようになったことは、もちろんメリットも多いのですが、一方で、パソコンが抱えていた問題も新しい携帯端末の中に入ってしまっているということも事実です。

まず、従来の携帯電話と比べて、色々な意味で非常に複雑になっています。それにより、大人ですらその仕組みを理解できにくくなっています。スマートフォンやタブレットに入れるアプリの仕組みや課金システム、そのなかで流通する個人情報(位置情報なども含む)などの公開範囲なども簡単には理解できません。また、携帯電話は、携帯電話のキャリアが提供する電波だけを利用していましたが、スマートフォンは、パソコンのように、(それ以外に)無線LANなども利用できるようになっています。

携帯電話の時には、ユーザーは、キャリアとの関係だけという閉じた世界で利用していましたが、今は、キャリアだけでなく、アプリを作っている会社やハードを作っている会社、通信回線を提供している会社(公衆無線LANや家庭の無線LAN)など、サービス提供者が増えるとともに責任も分散されていて、より分かりにくくなってしまいました。

また、スマートフォンの急速な普及に、サービス提供者側の競争が激化し、多少危ないことがわかっていても、とりあえずリリースして、人気が出たら問題に対応していくという後手方式が当たり前になっているので、そういった新しいサービスをいち早く使いこなしていく子どもたちが問題に遭遇するケースも増えてきています。

今のスマートフォンやタブレットは、「これをやったら、どういう影響がどの範囲まで広がるのか」ということが、なかなか簡単には理解できないブラックボックスになってしまいました。

いくつか実際の例をあげてみます。

2. ソーシャルメディア(SNS)での個人情報の扱い

LINEやFacebookなどの新しいSNSを利用する人が増えてきました。今や友人関係の維持にSNSは欠かせないという状況になりつつありますが、そのSNSでの人間関係を構築するのに、端末に入っている名前や電話番号、メールアドレスなどの情報が使われることがあります。

友達を探すのに、そういった情報を利用するのは確かに便利なのですが、それができるということは、端末に入っている情報が、サービス側に持って行かれているということです。そこには、友達ではない関係の人の情報も入っているでしょう。もう、付き合いのない人もいるかもしれません。そういった人たちまで、友達の候補者としてサーバー側に登録されてしまいます。

また、自分は登録していなくても、自分の情報を登録している友人や知人が情報をアップロードしてしまったら、サービス側は勝手にあなたとその人が友達だと推測して、いろいろと勧めてくる場合もあります。もちろん、実際に友達で、一緒にそのサービスを使いたいときには便利な機能ですが、そうでない場合は、ちょっとおせっかいで迷惑かもしれません。

最近では、個人情報に対する意識が強まっていて、自分の情報の扱いに気をつけている人も増えてきていますが、こうしたサービスを通じて、自分がどれだけ守っていても他の人が知らず知らずのうちに漏洩させてしまう危険は増えてきています。

もちろん、多くのサービスは、サーバーで預かった情報を、厳重に管理していますし、そのサービス以外では利用できないようにしているようですが、100%漏れないということはありません。また、最近では、その裏をかいて、そういったサービスで個人情報を取得して、それを転売するなどの犯罪も増えてきています。

3. スマートフォンで撮影した写真の位置情報

デジタルで撮影した写真には、私たちが見ている画像の部分の他に、さまざまな情報が付加されていることをご存じでしょうか?特に、スマートフォンで撮影した写真には、位置情報が付加されていることがあります。設定等で、それを切っておかなければ、自動的に付加される仕組みになっているのです。

もちろん、モバイル端末で撮影した写真の位置情報には、後から場所を使って検索できたり、地図にプロットできたりと便利な面も多いのは確かです。一方で、最近では、自分の撮った写真をブログやSNSで公開する機会も増えてきました。家で自分の作った料理を見せ合うサービスなども人気を集めています。 しかし、その写真に撮影場所の位置情報が付加されていることを知らずに使っている方もいらっしゃいます。写真を公開するだけのつもりが、自宅の場所まで公開してしまっているのです。

付加情報の扱いはサービスによっても違います。例えば、位置情報でも使わないものは自動的に削除しているサービスもあれば、そのまま隠れた状態で写真に残っている場合、わざわざ地図にして表示している場合などさまざまです。 どのサービスに行ったとき、どのように扱われるかもきちんと調べればわかるのですが、実際には調べきれないというのが実情で、それを守るためには自分のほうで防衛しなければなりません。これが、子どもたちの写真なら、もっと気をつける必要があります。

写真の情報だけでなく、現在位置の情報、連絡帳の情報など、他にもアプリやサービスによって、どのような情報がバックグラウンドでやりとりされているかは、非常にわかりにくい仕組みになってしまいました。実際、アプリを入れるときの小さな注意書きは読まない人がほとんどで、作る側も、それを狙っている面もあります。

4. 写真やテキストが見られている範囲

また、インターネットに公開した情報の見られる範囲がどうなっているか、理解しにくくなりつつあるということも注意する必要があります。

特に、TwitterやFacebook、LINEなどのSNSは、友人関係をベースに使っているので、そこに公開した情報は、フォロワーの人しか見ていないような印象をもってしまいます。

が、実際は、設定で禁止していなければ、広く一般に公開されていて、検索などでひっかかる場合もあります。

5. ゲームやアプリの課金の仕組み

スマートフォンのアプリやそれを使ったゲームは、無料のものもあれば、有料のものもあります。そして、スマートフォンになって、課金状況が見えにくくなっているように思います。サービスを作る側にもそれを狙っている面もあり、有料と無料の垣根がわからないようにしているものが少なくありません。無料と同じようなサービスを楽しんでいたら、知らず知らずに高額な利用料を費やしていたということにもなりかねません。

また、子どもの場合、こういった課金で使われるクレジットカードは持てませんから、通常、親のクレジットカードを使って決済するのですが、一度、登録してしまえば、パスワードを入れるだけで、いくらでも決裁できるので、気軽に教えてしまったパスワードを使って、子どもが次から次へと購入してしまうということもあります。 ひどい例では、子どもが勝手に親の財布からクレジット番号を盗み見て購入するということも多々起きています。こういったことが起きないように、課金には、十分な注意を払う必要があります。

ゲームの中にはギャンブル性の強いものもあり、はまり込む危険性が増えています。また、最近では、ネットゲーム独特の、ソーシャルの関係を使って、課金をうながす仕組みもあり、ゲームの中で一緒にやっている見ず知らずの人と仲間意識が芽生え、やめられなくなったり、無理をしてお金をつぎ込んだりするという事例も出てきています。ひどいところでは、そのネットの友達が、いわゆる「さくら」だったということも起きています。

6. 人間関係のトラブルや炎上、詐欺事件

●SNS疲れ
最近では、「SNS疲れ」や「SNS鬱」、「ネットいじめ」など、精神的な問題も顕在化してきています。SNSは、現実の人間関係をベースとしているために、その影響は、リアルな人間関係にまで及ぶことも多いのです。
SNSの使い方は、人によってさまざまです。でも、すぐに返事をしなければならない、コメントしなければならない、「いいね!」を押さなければならない、など、だんだんとSNSをやることが義務のようになり、それに追い詰められていく人も多いのです。その上、ネットの中ではリアルと違って、テキストと写真だけの世界ですから、言葉の行き違いや、ちょっとしたことが大きく誇張されていくなどの予期せぬ波及効果をもたらすことも多々あります。ひどいものになると、それらを利用したSNSの中での詐欺事件*なども発生しています。それらが子どもの世界にも出てくる危険は増えてくると思われます。

●炎上
また、先ほど「その情報を誰が見られるか理解して発信しているか」について書きましたが、あまり深く考えずに書き込んだり、写真をアップしたりすることによって炎上するという事例が絶えません。
炎上するだけならいいのですが、それによって、その他の書き込みまで、大勢の人にさらされる事態となり、果ては、個人情報まで大勢の人に公開されるということも、最近では増えてきています。
アルバイト先での顧客の悪口、未成年の飲酒、交通違反など・・・本人は、気楽に書いたつもりのことが、ちょっとしたきっかけで、大きく広がっていくのがネットの怖いところです。
そして、それだけで収まらず、他の書き込みや他のSNSなど、興味本位で調べられた情報を統合することによって、自分の住所、氏名、年齢、通っている学校や職場、友人関係まで、ネットの中で大勢に知られてしまうことも起きています。学校を退学になったり、退職に追い込まれたりと、その後の人生まで大きく左右する事態に発展することもあります。
特に子どもの場合、その影響は甚大です。日本のネットにおける他人の不幸を喜ぶ「メシウマ」文化にも問題があるとは思いますが、まずは十分に自分の方で防衛する必要があることは確かです。

●フィッシング詐欺
パソコンでのインターネット利用で問題になっていた、コンピュータウイルスやスパムメール、フィッシング詐欺などの問題は、もはやスマートフォンやタブレットの問題になっています。適切なウイルス対策方法をとる、ブラウザを使っているときにドメインや暗号の証明書を確認して入力するなど、これまでコンピュータの世界だけの問題であったものが、こういった新しい端末でも必要になっています。

7. 海外製のサービスの問題 

スマートフォンやタブレットのアプリは世界各国で作られています。そして、それらの多くは、インターネットを使って世界中で利用することができます。それは、インターネットの利点であるとともに大きな問題もはらんでいます。それぞれの国の文化の違い、法律の違いも、簡単に越えてしまうのです。例えば、国によって、いわゆる「出会い系」の考え方も違います。個人情報の定義も、アダルトコンテンツなどのとらえ方も違います。それらがスマートフォンの端末の中で国境を越えて使えるということは、日本では禁止されているようなものでも、他国のサービスを通せば使えてしまうという問題もはらんでいます。

8. 子どもが利用するときは、常に大人が一緒に

そもそもiPhone、iPadを利用する際に必要なApple IDやアンドロイド端末を利用するのに必要なGoogleのアカウントは、年齢制限があり、13歳以上でなければ持つことはできないのです。そのため13歳までは、利用規約上も子ども自身でのサービス利用はできないので、あくまで親の端末を親の責任で貸与しているということになります。そういったことも、子どもと話し合っておく必要があるかもしれません。

例えば、小さな子どもにスマートフォンやタブレットを与えたときに、字が書けないから入力はできないと思っていたら、最近の端末は音声での操作が可能になっていて、知らない間に検索などを使っていたということもあるようです。便利に使える反面、予期せぬ言葉を検索してしまい、変な画像が表示されてしまうということもあります。もちろん設定で止めておけばいいのですが、大人が使っている端末は、それをしていないことが多いのです。小さな子どもに貸すときには、当たり前のようですが、大人が一緒に使うことを心がけたいです。

最近では、子ども用のスマートフォンや、子ども用のフィルタリングサービスを利用したり、またスマートフォン自身の設定を工夫したりすることによって、ある程度、こういった危険を避けることはできますが、それでも、これで安心というのは、現状ではなかなか難しい気がします。だからといって、目を背けるのではなく、これらの危険がスマートフォンやタブレットにはあることを子どもと話し合いながら使っていくのが、今の時点では最善でしょう。

今回は、危険を並べるだけになってしまいましたが、次回は、その危険を避けるために、気をつけること、具体的にやっておいたほうがいいことなどを書いてみようと思います。


* 有料サイトへの誘導、芸能人のマネージャーを名乗る詐欺メール、アカウントの乗っ取りなど
<参考>詐欺的"サクラサイト商法"トラブルについて[国民生活センター]

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