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【中国】新型コロナウイルス対策としてのオンライン幼児教育 ~休園でも学び続ける中国の幼児たち~

ソンフィ(北京・幼児園教諭)

2020年3月27日掲載

要旨:

新型コロナウイルス対策で、中国の幼児園では冬休み後の開園が延期になった。2020年2月初旬に、春節休みが終わって以降、多くの人は出社することなく家からテレワークを始めている。しかし、家庭内で仕事をしながら同時に子どもの面倒をみるのは大変難しい。幼児園の休園によって子どもは毎日朝から晩まで家にいる上、新型コロナウイルスの感染予防のため外に出て遊ぶこともできないし、普段子育てを手伝う祖父母たちは春節前から地元に帰ったまま都市部に戻ってこられない。そのため、大半の親がメデイアに子育ての一部を任せた。幼児はパソコンやタブレットで英語、算数などを学び、テレビやスマートフォンでアニメや動画を見て、毎日平均1~3時間メデイアを視聴している。

筆者は中国・北京の幼児園に勤務する先生である。本稿では、自身の幼児園で行った取り組みを紹介したい。筆者の勤務する園では、子どもの心身の健康を考えて、幼児園に来られなくても楽しく毎日を過ごせるよう、家でも遊べる活動を各家庭におすすめすることにした。

家庭活動支援の始まり

家庭で仕事をしても、大半の親たちは子どもと遊んだり学習のサポートをして、毎日3時間ぐらいの時間を親子で共有する。その共有時間を有効に過ごせるよう、先生たちの指導が必要となった。

最初、幼児園の先生は家庭で遊べる<工作>、<手遊び歌>、<絵本>などをウェブで検索したり、自分でも活動を考案していた。その活動内容を文字で説明したり、活動の画像や動画を、SNSを通して全クラスの親子に毎日発信し始めた。しかし、親たちの反応はいまひとつであった。親は先生に感謝はするものの、実際は自分の子どもが自ら考えて遊ぶ様子を写した写真や動画(お絵かき、工作、積み木やレゴなど)をクラスの保護者のSNSグループ内でシェアすることが多く、先生のすすめる家庭でできる活動を実践したフィードバックは実に少ない。

では、先生たちがすすめた家庭活動の内容にはどんな問題があるのだろうか? 多くの家庭にとって役立つ内容かどうか? 子どもは実際にその活動が好きなのだろうか?その後はどう支援すればいいのか? 家庭のニーズを探るため、一部の幼児園の先生は親に聞き取り調査などを行った。

親からのフィードバック内容

調査の結果、たいていの親は先生が毎日家庭活動をすすめることを負担とは感じていないことがわかった。学校と異なって、幼児園がすすめる家庭活動は強制ではないので、必要のある親子が参考にできればいい、と受け止められたのではないかと考える。しかし、少数ではあるが、多少負担を感じる親もいるようだ。その原因は「仕事が忙しく時間がない」、「メディアに疎い祖父母が面倒を見ているのでメディアを使うことが難しい」、「家に複数の子どもがいて大変」などであった。多くの親は先生からの支援が助かると感じているが、そう思わない親は「子どもは自分の考えがあるので、先生からの支援は必要ない」、「子どもが支援内容に興味をもたない」、「支援内容はインタラクティブ性が足りない」といった問題点を指摘した。

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表:「幼児園の先生が毎日発信する家庭活動を負担と感じるか」の調査結果

支援内容については、先生がすすめたお絵かきや工作などの内容が子どもに一番好まれるようだ。室内の運動遊び、ちょっとした実験、歌や踊りなども、子どもが先生の動画を見ながら実践することが多い。知らない先生より、自分の先生が動画に出ている方が、子どもは興奮し、その活動を学んで遊ぶことが多い。また、先生の他、同じクラスの子どもの保護者がシェアしたクラスのお友達が映っている動画を見て、自分もその活動を試してみたいと感じる子どもが多い、とのことである。

支援内容の発信形式については、子どもには画像や動画が一番受け入れられやすいようだ。活動内容を文字で発信すると、親は子どもにそれらをいちいち伝えなければならない。仕事が忙しい親にとって、それは効率的ではない。やはり、子どもには直感的に活動内容を見せる、あるいは聞かせることが大事であり、親には活動の注意点や教育的な狙いを文字で発信することが必要である。

また、家で親子遊びをする他、「先生のおうちに行きたい」、「クラスの友達とオンラインチャットをしたい」と思う子どももいる。家庭内だけにとどまると、子どもの社会性の発達に影響が及ぶ可能性を、一部の親が心配していることがわかり、コミュニケーションの機会を支援することも重要である。

支援の改善

親のフィードバックの内容から、各家庭の状況やニーズがそれぞれ違うことがわかったため、一人ひとりの子どもの発達を考慮した、個別対応型の支援を行うことを考えた。また、最初に試した家庭での活動の支援も、もっと子どもに受け入れやすいように改善した。以下にその改善点を紹介する。

  • SNSで家庭活動を発信する際、働く親の一番忙しい朝の時間帯を避け、午前10時前後に発信する。
  • 発信する内容は、子どもに対しては直感的な動画や画像を主とする。視力低下を防ぐため、動画の長さは3分以内に収める。親に対しては、活動の教育的ねらいなどについての説明を別途SNSのメッセージで発信する。
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    図:幼児園の先生が家で活動を録画する姿

    絵:yanyan 出典:https://mp.weixin.qq.com/s/HANkSmdSQktERZMc6eA_Mw

  • オンラインで動画を見ながらリアルタイムでチャットする時間を作る。クラスの先生や友達の顔を見ながら、自分の生活や作品などを紹介する、友達が喋っていることをまじめに聞く、子どもが先生になってみんなに何かを教える、先生がオンラインで活動を子どもと一緒に行う、などを週に3−4回、一回に5人ぐらいの活動をオンライン、リアルタイムで行うことによって、子どもの社会性の発達につなげることが可能になった。もちろん、これも強制ではなく、希望する家庭のみが参加している。その時間も30分以内に収め、動画チャットの最後にみんなで一緒に目の体操をする。
  • 一対一のオンライン家庭訪問。特に忙しい親や特別なニーズのある子どもには、先生がオンライン家庭訪問を行い、子どもの様子を見て、親に教育的なアドバイスをする。
  • 週末支援。親が仕事で忙しい家庭に対しては、先生は週末に一週間分の家庭活動のオススメ動画をまとめて再発信することによって、親子の楽しい週末時間に参考を与える。

幼児園がいつ再開できるかは未定だが、元の生活に戻りたいという気持ちは、みんな一緒である。冬休みからすでに2ヶ月以上経ち、幼児園の先生と子どもたちは未だ直接会えていないが、会える日をお互いに心待ちにしている。会えなくても、みんなは毎日繋がっている。オンラインで様々な教育的支援を頑張って行っている、私たち幼児園の先生。医者のように新型コロナウイルスと直接戦うことはできなくても、これが私たち先生の地道な頑張りである。


筆者プロフィール
ソンフィ
お茶の水女子大学修士課程修了、専門は保育児童学。現在、北京の幼児園に勤務。
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