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【子どものからだと健康】第1回 ハイハイしない子ども

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このコーナーでは、小児科医であるCRN所長が子どものからだや健康に関する疑問・悩みにお答えしていきます。一覧はこちら


【質問】
もう1歳になる私の子どもは、ハイハイを全くしません。移動するときには、おすわりの姿勢のまま、お尻を浮かせて前にずるような形で前進します。ハイハイの練習をしなくていいのでしょうか?

【回答】
「ハイハイをすることは歩くために必要だ」と思っている人はたくさんおられると思います。ですから、ハイハイをいっこうにしない子どものお母さんが心配するのも当たり前です。

寝返りやおすわりは、ほぼ順調にするようになったのに、ハイハイを始める時期(生後10ヶ月前後)になっても、お問い合わせのようにおすわりの姿勢のまま前進する子どものことを、シャッフラー(シャフリング・ベビー)といいます。シャッフルとは、お尻をつけたまま前にずって移動する運動のことで、そこからそう呼ばれるようになりました。

ハイハイをせずに、シャッフルで移動し、そのまま立って歩くようになる子どもがいることに気づいたイギリスのロブソンという小児科医は、シャッフラーの子どもの発達について研究を行いました。

その研究において、約40人に1人は、ハイハイをしないシャッフラーであること、歩き始める時期が平均1歳9ヶ月とハイハイをする子どもより遅れること、またこれらの子どもは、支えて立たせると足を床につけずに曲げてしまいあたかも空中に座っているような姿勢をとること、腹這いを嫌うことなどの共通した特徴があることを見つけました。また、もっと大きくなるまで発達を見守ると、運動能力などに何の問題もない子どもに育ってゆくことも明らかにしました。 ロブソンは、シャッフラーは多くの子どもと異なった筋道で運動発達を示す「正常な子ども」であると結論しています。

なぜ、ハイハイをせずに、シャッフルするのかまだその理由は分かっていません。赤ちゃんはだれでもハイハイする、という常識が実はそうではなかったのですね。


文献:Robson P. Shuffling, Hitching, Scooting or Sliding: Some Observations in 30 Otherwise Normal Children. Developmental Medicine & Child Neurology 1970; 12: 608-17.



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筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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