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情報リテラシーのある賢い育児姿勢を目指して

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先ほど着任されたアメリカ大使のケネディさんは、理知的で温かな笑顔で多くの日本人がファンになっています。私も彼女のファンの一人ですが、彼女の笑顔を見るたびに思い出すのが、職半ばに凶弾に倒れた父親のケネディ大統領と彼の言葉です。政治家としてのケネディ大統領には様々な批判もあるようですが、就任式で述べた「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何をするか問うてほしい」(Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country)に、子どもだった私は大きな感銘を受け、現在でも大好きな言葉の一つになっています。

さて、何でこのケネディ大統領の言葉を引用したかといえば、CRNをご覧になっておられる子育て中の親御さんや、子育て保育に関連のある皆さんに、子どもの発達に関する氾濫する情報にただ流されるのではなく、ケネディ大統領が期待した国民のように、能動的な態度で情報に向かい合って自らの判断で選び取っていっていただきたいと思うからです。

例えば、最近子育て中の親や保育者に大きな関心と同時に懸念を抱かせる情報があります。それは、子育ての場面でのスマホの使用は、子どもの発達に悪影響を与える可能性があるので控えよう、という情報です。子どものそばで親や保育者がスマホを使うと、子どもに関心が向かず、子どもの社会性の発達に悪影響がでる可能性があるというのがその情報の骨子ですが、同時に子どもが直接スマホを使用することにも警鐘をならしています。

この情報を、どのように考えればよいのでしょうか。すぐに育児の現場でのスマホの使用をやめよう、と考える方もおられるでしょう。しかし、本当に子育ての場面でスマホを使うと子どもの発達に悪影響を与えるという裏づけがあるのでしょうか。

この情報をよく見ると、子どもの発達に悪影響を与える可能性がある、と書かれています。どのような理由でそのような「可能性」があるのか、しっかり見極めてから行動するという能動的な姿勢が望ましいのではないでしょうか。

また子育て中の親がスマホから受け取る利便性についての配慮も必要です。現在右肩上がりで増加している子どもの虐待や、子育て中の親のうつを考えると、子育てにかかりきりで行動の自由が少ない親が、スマホによって育児情報を手に入れたり、友人と交流することによって心の安らぎを手に入れている可能性もあるのです。

ともあれ、CRNの使命は、こうした確度が不明確な情報について、きちんとした科学的な視点を提供してゆくことだと思っています。

筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学大学院教授)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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