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子どもは遊びながら成長する どうして?

榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学大学院教授)

2013年11月15日掲載
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CRNでは、今年度ECEC研究会を立ち上げました。ECECとは耳慣れない言葉ですが、英語のEarly Childhood Education and Careの頭文字を並べたものです。直訳すると「人生初期の教育とケア」となりますが、内容としては日本語の「保育」に近いものです。ではなぜ「保育研究会」にしないのか、と問われそうですが、日本語の「保育」ともかなり意味が違うから、ととりあえずお答えしておきましょう。

このECEC研究会はCRNのホームページ上だけでなく、実際に多くの方々に参加していただけるECEC研究会(ECEC Research Conference)として、年に2~3回開催する計画です。

その第2回目のECEC研究会を、先日(10月26日、27日)慶應大学の三田キャンパスをお借りして開催しました。テーマは "playful pedagogy" です。playfulはなんだかわかるような気がするけれど、pedagogyとは、と首をかしげる方も多いと思います。辞書を引くとplayfulは「楽しく行う」、pedagogyは「教育学」「教授法の科学」とでています。つまりplayful pedagogyは、「楽しく遊びながらの教育」といった意味になります。

なぜ "playful pedagogy" なのか?

ではECEC研究会でなぜ、 "playful pedagogy" をテーマに選んだのでしょうか?私自身もテーマ選択にかかわっていますので、私見も入りますが、その理由を述べますと大きく二つになります。

一つは、日本の保育、幼稚園教育の保育方針の根幹ともいえる「自発的な遊びを通じた保育」が、どうしてよい保育なのか、その理由が私自身すっきりと理解できていなかったことです。保育の専門家の書いたものをみると、「本来遊びは子どもの基本的行動であるから」といった説明が書いてあります。しかし、中国や台湾で、幼稚園教育における遊びへの重み付けが日本とちがうのは、「本来」論では説明できない、と思ってきました。中国や台湾の保育士や幼稚園教諭が日本の保育園、幼稚園を見学すると、「遊ばせっぱなしでいいのか?」といった疑問がでるというのです。

二つ目の理由は、CRNでも時々その記事をご紹介しているアメリカの専門研究雑誌「Mind, Brain and Education (こころ、脳、教育)」という雑誌に掲載された論文を読んだことです。この論文については、CRNの"Dr.榊原洋一の部屋"で近々ご紹介いたしますが、その論文の骨子は、子どもの能力(言語、数の概念理解)や社会性は、一方的な教示(direct instruction)ではなく「ガイドされた遊び(guided play)」でもっともよく伸びる、というものです。保育園や幼稚園で行われている活動は、大きく①直接教示②指示されて行う遊び③ガイドされた遊び④自発的自由遊び に分類されるとこの論文の著者たちは言っています。さらにこれまでの研究で、それぞれの方法の効果を比較したものを紹介し、ガイドされた遊びが一番良いと結論づけています。

遊びは「本来の姿だから」ではなく「よく学ぶことができるから」

つまり、遊びを通じた保育のよさを、「本来の姿だから」という理由ではなく、「それが一番よく学ぶことだから」と理由づけしているのです。子どもの遊びを、目的論的にみる視点は好きでない方もおられると思いますが、私にとっては、遊びを通じた保育がよい保育である科学的な理由がある、ということは実に勇気づけられる発見でした。
ECEC研究会の内容と実際の様子は、CRNのイベント報告コーナーでご紹介する予定ですので、ぜひご覧いただきたいと思います。

筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学大学院教授)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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