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【発達障害】第1回 「気になる」子どもたちと「発達障害」

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最近、保育園、幼稚園あるいは小学校で、「気になる子ども」が増えているという声を良く聞きます。では、どんな子どもが気になるのか、保育士や教師に尋ねてみると、次のような行動特徴をもった子どもが「気になる」という答えが返ってきます。

  • 指示がよく理解できない
  • 集団に入れない
  • 集団行動ができない
  • 衝動的な行動が多い
  • 生活習慣が身についていない
  • 社会的ルールが身についていない
  • 社会的なサインが理解できない、発信できない
私自身のかすかな記憶(もうずいぶん前です!)を手繰り寄せてみると、一クラスに一人や二人そんな子どもがいたような気がします。

こうした行動上の課題をもつ子どもたちは、かつては親の育て方や教育の仕方にその原因があると思われてきました。しかし、近年の子どもの発達についての研究の進歩によって、このような「気になる」子どもたちの行動の中に、発達障害と呼ばれる状態に起因するものがかなりあることが分かってきました。

発達障害とは

では発達障害とはなんでしょうか。「発達」も「障害」も共によく使用される言葉です。「発達」が「障害」される、と聞いても、その意味は広く、捉えようがないようにも思われます。しかし、この2つの良く使われる言葉が組み合わされて「発達障害」となると、特定の意味をもつようになります。

発達障害をうまく定義するのは難しいのですが、「生まれつきの認知や行動の特徴によって、対人関係やコミュニケーション、行動や感情のコントロール、学業などに大きな困難を伴う状態」ということができます。でも、この定義を見ても、なんだかよく分からないなあ、と思われる方が多いのではないでしょうか。定義を詳しく言うよりも、発達障害という広い概念に含まれる個々の障害名を挙げたほうが理解しやすいでしょう。

発達障害を構成する個々の障害名を挙げると、学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD)、そして自閉性障害(自閉症スペクトラム:ASD)ということになります。
これを分かりやすく図示すると図1にようになります。

lab_07_2.gif
この図を見るとさらに次のような疑問が浮かんできます。「発達障害の中に3つの障害があることは分かるけれど、どうして重なっているの?」「3つの障害に含まれない隙間の意味は?」「そもそもLD,ADHD,ASDってどんな障害なの?」

本コラムでこれから6回に分けて、皆さんのそうした疑問にお答えして行こうと思います。
次回は、ADHDについて解説します。
筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg 榊原 洋一 (CRN副所長(2013年4月より所長)、お茶の水女子大学大学院教授)

医学博士。CRN副所長、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。日本子ども学会副理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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