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第7回 「ドゥーラの効果(5)まとめ」

岸 利江子 (イリノイ大学シカゴ校看護学部博士課程)
スーザン・アルトフェルド (Ph.D. 研究評価コンサルタント)

2006年4月14日掲載

要旨:

連載第7回では、ドゥーラサポートが分娩結果にもたらす効果について調べた50件の研究結果を再度統計的に分析した研究(メタアナリシス)3件を紹介し、ドゥーラサポートの効果についてのまとめとする。分娩時間、分娩中の痛み止め使用率、オキシトシン(子宮収縮剤)使用率、帝王切開率、分娩体験への満足度といった具体的な調査内容と数値を示しながら、分娩結果に与える効果と、分娩結果と産婦の心理に与える効果を説明する。

ドゥーラのサポートが分娩結果にもたらす効果について調べた研究はこれまでに約50件ある。そのうち、実験の条件が似通ったものを集め、追加情報を各研究者からさらに得てまとめたものを再度統計的に分析した研究(メタアナリシス)がいくつか発表されている。今回は、それらの結果を年代順に紹介し、ドゥーラサポートの効果についてのまとめとする。それぞれのメタアナリシスで用いられた研究を表1にまとめた。



表1:メタアナリシスに使われた研究

各実験研究 メタアナリシス
著者 出版年 Hodnett et al.,2006 Scott et al.,1999 Zhang et al., 1996
Sosa, et al. 1980  
Klaus, et al. 1986
Cogan & Spinnaro 1988    
Hodnett & Osborn 1989 (○)
Hemminki, et al. 1990a  
Hemminki, et al. 1990b  
Hofmeyr, et al. 1991
Kennell, et al. 1997
Breat_Belgium 1991-1992  
Breat_France 1991-1992  
Breat_Greece 1991-1992  
Kennell & McGrath. 1993    
Gagnon, et al. 1997    
Langer, et al. 1998    
Madi, et al. 1999    
Dickinson 2002    
Hodnett, et al. 2002    



1. 分娩結果に与える効果:若年、低所得、初産婦(Zhangらのメタアナリシス, 1996)

Zhangら(1996)は、平均年齢19~21歳、低所得の初産婦計1,349名を扱った4件の無作為化臨床実験を用いて、分娩結果に与える効果についてメタアナリシスを行った。その結果、ドゥーラサポートありの分娩では、ドゥーラサポートなしの分娩に比べ、

分娩時間:2時間48分短縮
分娩中の痛み止め使用率:17%減少
オキシトシン(子宮収縮剤)使用率:56%減少
鉗子分娩:54%減少

という有意な効果がみられたことが分かった。


2. 分娩結果に与える効果:継続的サポートvs.間欠的サポート(Scottらのメタアナリシス, 1999)

1999年に発表されたこのメタアナリシスは、1990年代前半までにされた11件の無作為化臨床実験研究を再分析した。約4,500名の産婦を対象にした11件のうち、5件(Kennell et al., 1991; Klaus et al., 1986; Kennell & McGrath, 1993; Sosa et al., 1980)ではドゥーラのサポートは継続的で、6件(Breat et al. in Belgium, France, and Greece, 1992; Hemminki et al., 1990 (2件); Hofmeyr et al., 1991)では間欠的であったと判断して両者を比較した。その結果、ドゥーラによる継続的なサポートがされた群では、ドゥーラなしの分娩に比べて、

分娩時間:1時間38分短縮
分娩中の痛み止めの使用率:36%減少
オキシトシン(子宮収縮剤)使用率:71%減少
鉗子分娩:57%減少
帝王切開率:51%減少

という有意な効果がみられたことが分かった。間欠的サポート群ではどれも有意な結果は見られなかった。


3. 分娩結果と産婦の心理に与える効果
:継続的付き添い(Hodnettらのメタアナリシス, 2006)

Cochrane Library(コックレイン図書館)はさまざまな論文検討文献を出版しており、2003年以来、分娩時サポート効果のメタアナリシスも更新し続けている。ドゥーラサポートの効果を調べたものとしてもっとも該当するこの論文も、前述のZhangら(1996)、Scottら(1999)と同様に、「分娩時の継続的付き添い」について調べている。選ばれた計15件の無作為化臨床実験研究は12,791名の産婦を含んでおり、全ての項目でサンプルサイズ1,000名以上を確保して統計的分析が行われた。その結果、継続的な付き添いがされた群では、付き添いなしの分娩に比べて、

分娩中の痛み止めの使用率:13%減少
吸引または鉗子分娩:11%減少
帝王切開率:10%減少
自然経膣分娩:8%上昇
分娩体験への満足度:37%上昇
分娩を自分でコントロールできたという感覚:27%上昇
分娩中の胎児心音モニタリング:5%減少

という有意な効果がみられたことが分かった。分娩時間、オキシトシン使用率、新生児のアプガールスコア(出生直後の健康状態)、新生児の小児科入院、痛みの感覚、産褥うつ病については有意な効果は見られなかった。

さらに、Hodnettらは、これらの効果は、分娩施設の方針や、付き添う人の種類、付き添い開始の時期によって変動すると分析している。付き添う人の種類について、病院関係者でないほうが良い効果がみられると指摘している。病院関係者でない人が付き添った場合には、

分娩中の痛み止めの使用率:28%減少
吸引または鉗子分娩:41%減少
帝王切開率:26%減少
分娩体験への満足度:36%上昇

と、効果が上昇したという(Cochrane Pregnancy and Childbirth Group Coordinator, 2003)。


まとめ


これら3件のメタアナリシスを比較すると、Zhangら(1996)とScottら(1999)の検討では分娩結果について帝王切開率が半減するなどの著しいドゥーラ効果が結論付けられているのに対し、Hodnettら(2006)の検討では身体面や医療介入の頻度については比較的穏やかな効果で、心理面への効果の方が目立つ。ネガティブな効果はどのメタアナリシスにおいてもみられない。

Zhangら(1996)とScottら(1999)のメタアナリシスの結果と、Hodnettら(2006)のメタアナリシスの結果の差は、前者が1990年代前半までの初期の研究を扱い、後者は2000年代前半までを含む最近の研究が含まれていることが挙げられる。年代が進むにつれて、研究対象者の範囲と、ドゥーラサポートの定義の両方が拡大した。研究対象者にミドルクラスなど社会的に恵まれた層の女性が含まれ、ドゥーラサポートに施設のナースにドゥーラ機能を強化したものまで含まれるにつれ、初期の研究にみられたようなドラマティックな結果が少なくなっていることは興味深い。

ドゥーラのサポートにより医療処置の頻度が減少するという効果は、自然出産の尊重、医療費の削減という面で重要な指標となる。しかし、帝王切開や陣痛促進剤の使用など、それ自体は善でも悪でもなく、必要な医療処置のおかげで昔は失われていた母児の命が救われるようになったのも確かである。つまり、医療介入は一般に少ないのが望ましいが、その解釈には多面的な考慮を要する。同様に、分娩時間が長いこともそれ自体は悪いことではなく、母親によってはそれを乗り越えられたことでさらに自信がついたり児への愛情が高まったりすることもあるだろう。一方で、心理面への効果については、分娩体験の満足度も産婦の自信も、例外なく、高ければ高いほど望ましい。よって、年代、研究対象者ともに最も広くカバーしたHodnettらの研究(2006)で、心理的効果が有意な結果を示していることはとても重要であると考えられる。

次回以降は、ドゥーラになる女性の背景や経験に焦点をあてた研究について紹介していく。


謝辞


この原稿は小林登先生(東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長・CRN所長)のご指導のもとに作成しました。


参考文献


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