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【日本】保育現場における絵本を読みあう活動 ―読みあう活動が生み出す人と人との相互作用―

要旨:

保育現場における絵本や本を読みあう活動は、子どもの育ちを支える上での重要な活動の一つです。本稿では、絵本や本を読みあう活動を支える保育者等の役割に着目し、具体的な方法に関する検討を行いました。現地調査の一つの例として、保育現場の実践事例も紹介します。

キーワード:

絵本、子ども、保育者、読みあう活動、相互作用、大人の役割

現在、絵本や本は、子育ち・子育て環境においてはなくてはならないと言っても過言ではないほど、子どもならびに養育者や保育者にとって身近なモノです。筆者は、これまで保育現場を中心に人と人とが絵本や本を読みあう活動について研究し、その活動が子どもの育ちにどのような影響があり、傍らにいる保育者等にはどのような役割が必要なのかについて検討してきました。その一部を、保育現場の様子も踏まえながら紹介します。

1. 読みあう活動とは

子どもが大人と共に絵本や本を読む時は、読み聞かせという言葉で表現することが一般的です。筆者は、社会において読み聞かせがどのような活動として捉えられているのかを知るために、絵本や本を読むことを解説する近年の文献21冊を調査しました(仲本, 2015)。その意義を整理した結果、①一緒に読む ②絵本の内容・感情・愛情・対話・行為・場の共有 ③楽しみ・喜びなどの共感 ④子どもまたは子どもたちの主体的(能動的)な活動 ⑤人間関係を深め、構築する ⑥コミュニケーションやスキンシップをとる ⑦文字・言葉への興味関心を抱かせる ⑧感性を磨き探究心を育てる ⑨読んでいる最中もしくは読み終わった後、遊びへと発展する、の9つの要素が含まれていることが明らかになりました。また、筆者は保育現場を訪問し、絵本を通した活動を調査する中で、その多くの場面では保育者と子ども、子どもと子どもといった双方向のやりとりが生み出されていることを発見しました。さらに、絵本や本は読んでいる時間だけで活動が終わるのではなく、読みあった後、子どもたちのさまざまな活動が広がっていました(仲本ら, 2011)。これらの調査結果から、絵本や本は大人から子どもへ一方的に読み聞かせられている・・・・・・・・・・のではなく、人と人が読みあっている・・・・・・・という相互作用があることが明らかになりました。そこで、それらの一連の活動を「読みあう活動」と定義し、以下4点の特徴があることをまとめました。

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2. 子どもを絵本や本の世界へ誘う保育現場の役割

(1)保育現場での読みあう活動における保育者の役割

筆者は、日頃から読みあう活動に取り組んでいる保育者238名を対象に、「日常の保育において、どのように読みあう活動に取り組んでいるのか、さらに、その読みあう活動を行う上で配慮していることは何か」について自由記述回答による質問紙調査を行いました(仲本ら, 2013)。この調査内容について、筆者ら5名(保育者2名、保育を専門とする教員3名)がブレインストーミングを前提としたKJ法(注1)により、次のような分類化を実施しました。自由記述で得られた、保育者が読みあう活動で取り組んでいると考えられる保育方法に関連する言語および文章の分類化です。分類化したそれぞれのカテゴリーにラベリングをした結果、

  1. 「絵本の知識・技術の習得」
  2. 「読みあう時の保育技術」
  3. 「子どもに対する保育者のねらいや願い」
  4. 「子どもと保育者、子ども同士の共感・共有」
  5. 「子どもに対する保育者の気づきや関わり」
  6. 「子どもの想像世界に対する理解」
  7. 「保育者の資質・教養の向上」
  8. 「読みあう状況・環境に対する配慮」
  9. 「読みあう活動中の雰囲気づくり」
  10. 「読みあう活動と日常生活をつなげる」
  11. 「読みあう活動後の雰囲気づくり」
  12. 「読みあう活動を家庭へつなげる」
の12項目にまとめられました。

この12項目を、さらに

  • A) 「絵本および読みあう活動の知識・技術」
  • B) 「保育者の子どもに関する理解と支援」
  • C) 「保育者の資質・教養の向上」
  • D) 「読みあう活動に関するねらい・保育計画・環境設定」
の大きく4つの枠組みに分類し、読みあう活動の前・中・後に関連する項目ごとに分類しました。その結果が、下記の図の通りです。

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図 読みあう活動における保育者の取り組みおよび配慮


図に示されるとおり、日常の保育で読みあう活動に取り組む保育者は、読みあう活動前から絵本および読みあう活動の知識・技術を習得し、さらには日頃から保育者として自らの資質・教養の向上に努めていることがわかります。その保育者自身の知識・技術を基礎として、読みあう活動に取り組む上での子どもに対するねらいや願い、さらに読みあう状況や環境に関する保育計画を立てています。

読みあう活動中には、子どもと保育者または子ども同士が共感・共有することを大切にし、子どもの発見・発想・気持ち・行動に対して保育者が気づき、関わりをもつことで、子どもによって生み出された想像やイメージに対する理解をしています。また、読みあう活動中・後の雰囲気づくりや読みあう活動と日常生活をつなげるような保育計画・環境設定を行い、読みあう活動後には、子どもの読みあう活動の様子や絵本に関して、保護者とのコミュニケーションを取りながら、読みあう活動を家庭へとつなげています。

読みあう活動における保育者の具体的な保育方法として、保育者は読みあう活動中の子どもの様子から感情や行動を読み取り、その状況に応じた保育者の言語的表現や言葉かけ、語りかけ、働きかけによって相互の関係性を重視し、発達に即した支援をしていることが明らかになりました。また、保育者は子どもに対する支援だけでなく、読みあう活動と日常生活および家庭をつなげる保育計画・環境設定をしています。さらに、各カテゴリー別の選出された項目数の合計からみていくと、日常の保育で読みあう活動に取り組む保育者は、「子どもに関する理解と支援(118項目)」及び「読みあう活動に関するねらい・保育計画・環境設定(125項目)」に特に配慮しながら保育に取り組んでいました。また、「子どもに関する理解と支援」の項目から、絵本を読みあう活動によって生み出された子どもの内生的側面の育ちを理解し、支援を行っていることがわかりました。このことから、読みあうことで育まれる子どもの意欲、好奇心、発見、発想、さまざまな気持ち、想像といった感情・心情とその感情・心情から生み出される人やものへの行動・活動に関して理解を深め、ねらいや願いをもって支援を行っている保育者の姿勢が表れています。「保育者の資質・教養の向上」の項目にも表れているように、このような支援を行うために、保育者は自らの内生的側面においても自己向上をはかり、よりよい子どもの人的環境の構築を目指していました。さらに、絵本を読みあう活動の環境の側面においても、生み出された子どもの内生的側面の育ちの理解を基礎に、安心感や落ち着いた雰囲気づくり、読み終わった後の余韻への配慮や対話、読みあう活動後の子どもがさまざまに表現したい意欲への理解、その子どもの様子を保護者に伝えていく保育者の姿勢が表れています。

以上のことからもわかるように、読みあう活動を実践している保育者は、読みあう活動の一連の流れにおいて、子どもの生み出す内生的側面を深く理解し、支援を行っています。

(2)ある保育現場の事例から ―絵本専門士と一緒に絵本や本を楽しむ―

筆者は、保育現場において、絵本や本とのふれあいを保障する役割を担うのは保育者だけではなく、その他にも多くの人的・物的環境での工夫があるのではないかと考え、現地調査を実施してきました。ここでは、その一つの例として、青森県にある幼保連携型認定こども園の八戸文化幼稚園の保育実践を紹介します。

八戸文化幼稚園には「えほんのおうち(写真1)」が併設されています。「えほんのおうち」には1,300冊ほどの蔵書があり、子どもが自らの意志で絵本や本を手に取り、楽しむ姿が見られます。図書館に行って絵本や本を選ぶように、乳幼児期から絵本や本を自らが選択する権利が、幼稚園内で保障されています。さらに、絵本専門士(注2)が常駐しており、子ども一人ひとりが絵本や本を選び、楽しむための援助や関わりをしています(写真2)。その時々の子どものニーズを捉えながら、魅力ある絵本や本との出会いをつなぐことによって、より深く絵本や本の楽しさを味わう子どもの姿を生み出しています。また、絵本専門士は、保護者に絵本の選び方や絵本を通した子どもたちとのふれあいの大切さなどを伝えたり、保護者からの個々の質問に答えたりしながら、子育て支援の一助を担っています。

このように、現在、保育者だけでなく、さまざまな人的・物的環境を構築することによって、発展的で豊かな読みあう活動を展開している保育現場が存在します。

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写真1 えほんのおうち


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写真2 子どもと共に絵本を楽しむ絵本専門士・髙橋さん


3. 絵本から広がる遊び

筆者は、絵本から広がる遊びに関する質問紙調査に応じた保育者170名のうち、保育現場での絵本から広がった遊びに関する保育実践のエピソードの自由記述を求めた質問項目に回答した85名の記述内容について、内容分析を行いました(仲本, 2018)。その結果、絵本から広がった遊びにおける子どもの姿は、「ごっこあそび」が48回で、続いて「絵本や物語の内容と生活における経験や体験、出来事をつなげて楽しむ」「造形表現の活動を通して絵本や物語の世界を再現して楽しむ」が21回、「玩具や道具を使って絵本や物語のイメージを表現して楽しむ」が17回、「子ども自身の発想によって、絵本や物語の想像世界を広げて楽しむ」が7回、「絵本や物語の内容を口ずさんだり、語ったりして楽しむ」が6回、「子どもが絵本や物語の登場人物と自らの思いや願いを重ねて生活する」「劇遊び」「絵本や物語の内容をまねて楽しむ」「身体表現の活動を通して絵本や物語の世界を再現して楽しむ」が5回、「音楽表現の活動を通して絵本や物語の世界を再現して楽しむ」「絵本や物語に出てくる食べ物を作って楽しむ」が4回、「行事とつなげて楽しむ」が3回、「絵本や物語の内容と同じことを実際に取り組み、楽しむ」が1回という出現回数でした。

このことから、絵本は読むだけでなく、読んだ後、子どもたちの内面に働きかけ、子ども自身の主体性によって多様性のある遊びへと広がることが明らかになりました。

表 絵本から広がった遊びや生活における子どもの姿
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4. 子どもの「そうぞう(想像・創造)する力=目に見えぬ力」を育むために

現在、子どもが絵本や本とふれあい楽しむこと、選択すること、読むことの環境が整えられていることは、基本的な権利として捉えられてきています(ILA, 2018)。

人は絵本や本に限らず、あらゆる文化と触れ合った時には、一人ひとりの感じ方、考え方、捉え方に違いがあります。それゆえ、絵本や本から広がる遊びにおいても、子どもの多様な姿が現れます。その子どもの多様な姿こそが、読みあう活動によって一人ひとりの内面に育まれた「そうぞう(想像・創造)する力=目に見えぬ力」のあらわれです。上述の権利同様に、この力が育まれることも大切な子どもの権利です。だからこそ、保育者等の大人は、その子ども一人ひとりの内面に育まれた「そうぞう(想像・創造)する力=目に見えぬ力」に気づき、理解し、共感し、豊かな表現へとつなげる人的環境となることや、遊びの協同的な活動者の一人となることが必要であると考えます。

筆者は実践者とともに、保育現場における子どもと保育者による絵本と遊びの保育実践を『絵本から広がる遊びの世界 読みあう絵本』(樋口・仲本, 2017)という一冊にまとめました。読みあう活動で育まれる「そうぞう(想像・創造)する力=目に見えぬ力」について、多くの方々に触れていただけましたら幸いです。


注記

  • 注1) KJ法とは、川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)がデータをまとめるために考案した手法。データをカードに記述していき、そのカードのグループ化を繰り返すことで情報の整理と分析を行う方法。
  • 注2) 絵本専門士とは絵本に関する高度な知識、技能及び感性を備えた絵本の専門家。 その資格は2012年に創設され、絵本専門士養成講座を受講し、修了課題において必要な資質・能力を満たしていると評価された場合に認定される。

参考・引用文献およびURL

  • 仲本美央・栗原めぐみ、白石和也、樋口正春、宇野直樹(2011)読み合う活動をつなぎ、つながる保育Ⅰ―子どもの主体的・意欲的な姿から捉える―,日本保育学会第64回大会論文集.
  • 仲本美央(2013)保育現場における読みあう活動の保育方法,日本保育学会第66回大会論文集.
  • 仲本美央(2015)絵本を読みあう活動のための保育者研修プログラムの開発 子どもの成長を促す相互作用の実現に向けて,ミネルヴァ書房.
  • 仲本美央(2018)絵本から広がる子どもの遊びに関する研究―保育者によるエピソード記述の分析からー,日本乳幼児教育学会第28回大会論文集.
  • 樋口正春・仲本美央(2017)絵本から広がる遊びの世界 読みあう絵本,風鳴舎.
  • 国際識字連合(ILA)子供の読む権利(literacyworldwide.org)
    https://www.literacyworldwide.org/docs/default-source/resource-documents/ila-childrens-rights-to-read-Japanese.pdf
筆者プロフィール
Nakamoto_Mio.jpg 仲本 美央(なかもと・みお)

筑波大学大学院博士後期課程修了、博士(学術)。保育者養成校数校を経て、2018年4月より白梅学園大学子ども学部および同大学大学院子ども学研究科教授。専門は保育学・幼児教育学。保育現場における絵本や本を読みあう活動や保育者研修プログラムの開発に関する研究などに取り組んでいる。

※肩書は執筆時のものです

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