CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 研究室 > 世界の幼児教育レポート > 【中国】 子どもの初期足し算方略の発達とその教育的啓発

このエントリーをはてなブックマークに追加

研究室

Laboratory

【中国】 子どもの初期足し算方略の発達とその教育的啓発

要旨:

計算方略は、子どもの計算能力の発達に影響を与える重要な要素であり、子どもの思考プロセス及び問題解決能力のレベルを示す有効な指標となる。本稿では、子どもの足し算方略のタイプやレベル及び発達の特徴を紹介するとともに、子どもの計算方略を発達させるために現在の幼稚園の数学教育における間違った認識や足りないところに焦点をあてる。概念的理解と実践を結びつけながらバランスをうまくはかることによって幼稚園における計算教育を促進するために、いくつかの提案がなされている。提案の中には、子どもの計算方略の発達にもっと関心を払う、認知に導かれた指導を行う、子どもたちが方略について話し合う機会を設けるなどがある。

Keywords;
中国, 劉頌, 子ども, 就学準備, 幼児教育, 幼児期, 幼稚園
中文 English

中国の基礎データ

足し算・引き算の計算は子どもの初期の数学認知能力の重要な構成部分である。認知心理学の発達に伴い、子どもの足し算・引き算の計算結果の正確性と年齢の違いを理解するだけに限らず、子どもの足し算・引き算の心理プロセスとその影響要因を探ろうとする研究が行われるようになった。足し算・引き算の計算は個人の計算処理プロセスの実行及び制御部分として、個人の問題解決能力を測る重要な指標であり、1980年代以降広く研究者の関心を集めてきた。特に足し算方略については、熱心で実のある研究が行われてきた。子どもの初期の足し算方略の研究は、子どもの初期の計算方略の型・数・構造・レベルを取り上げた。情報処理プロセスの分析は、子どもの初期の数学認知能力の発達の特徴と規則性を深く理解するための新しい視点を生み出し、有効な足し算・引き算についての教育方針及び指導方法を決定するための科学的根拠をもたらした。海外の有名な数学教育プログラムの多く(Cognitively Guided Instruction、Math Trailblazersなど)は、子どもの足し算・引き算の計算方略の発展の研究を基にして、教師の足し算・引き算教育の重要な法則を提示している。例えば、子どもが足し算・引き算の方略を理解することを評価すること、問題の処理のための教材を幅広く提供すること、適切な問題場面設定によって子どもが様々な方略を使用しようとする気持ちを引き出すこと、子どもが方略について発表したり話し合ったりすることを奨励することなどが挙げられる。こうした子どもの問題解決プロセスを重視し、子どもが自分自身でプロセスを構築するよう励ます教育方法は、アメリカの学校教育及び人材育成に深い影響を与えている。教師にとっては、子どもの計算方略を理解し、その思考プロセスを観察することは、教師が子どもの認知レベルを科学的・客観的に評価する助けとなるだけでなく、子どもの自発的で日常的な数学経験を積極的に活用して、適切な指導を行うことにも役立ち、「理解するために教える」・「意義のある数学学習」を実現させる。子どもにとっては、活発で興味深い問題解決プロセスの中で、問題解決の方略を知ってそれを調整し、数学概念を構築・発展させ、数学学習に対する自信と積極的態度が体験とともに形成されることとなる。


上記とは逆に、我が国の幼稚園の足し算・引き算の計算教育は、足し算・引き算の正確性と速度が我々の追求する唯一の目標のように思われる。このことについて考えてみたい。このような状況のもとでは、計算方略は、幼稚園教育において軽視されがちで、正しい認識や評価が得られなかった。教師によっては、方略についていくらかは知っていても系統だった知識はない。また、教師や保護者の中には間違った認識を持っていて、簡単な足し算・引き算の計算は、とにかく早く答えることが唯一の正しい方法であると思い込み、子どもが自発的に生み出した多種多様な方略の世界を見落としている。指で数えるといった、認知発達の特徴に合致した計算方略を選ぶことを拒絶または禁止する先生もいるようである。筆者は、幼児の数学認知能力の研究において、子どもたちの次のような行為を何度も目にしている。どうしても手を体の後ろに隠して計算する子ども、或いは、明らかに指を使って数を数えているのにそれを否定する子ども、また、答えをどうしても思い出せない時でも、他の効果的な方略を使って問題を解決しようとしない子ども、既得の技能だけで全ての問題を解決しようとして、柔軟に多様な方法を使おうという問題解決意識と能力に欠けている子どもに出会った。他にも、計算に飽き飽きしている子や、逃れたい気持ちがありありと見て取れる子ども等がいる。

こうした現象を見たり、聞いたりすると、以下のように自問せざるを得ない。足し算・引き算の計算は刺激と反応の流れにすぎないのだろうか? 何度も繰り返し暗唱させるだけで、子どもにその間にある数量関係を充分理解させなくてもいいのだろうか。 大人の教えた正答を素早く覚えるよう求めることは、時間をかけて一生懸命自分のやり方で問題を解かせて、数学の「再発見」のプロセスを体験させることに勝っているのだろうか。また、もし子どもが手や口を使って数を数えて問題を解いたなら、何の方略も使えずにいる子どもよりも大人を戸惑わせてしまうのか。幼稚園の計算教育は、子どもに大量の計算練習をさせたり、一時的効果しかない技能を訓練したりするのか、それとも豊富な教材や有益な活動を作って、子どもに効果的に計算方略を選択・運用させ、問題解決プロセスに積極的にかかわらせて自分の計算能力に充分な自信をつけさせるのか。以上の問いに対してよりよい答えを見つけるために、我々は子どもの初期の計算方略の表現(本論文では足し算方略を例として取り上げる)をもう一度認識し直し、子どもの概念理解と技能練習の間のバランスとつながりをうまく取って熟練した計算のレベルに到達させるにはどのような効果的方法を取れば良いのかを考える必要がある。


一、子どもの初期の足し算方略の発達の特徴

(一) 子どもの初期の足し算方略のタイプ

Siegler等の研究によれば、子どもは小学校に入って正式に数学教育を受ける前からすでに、数と計算について相当豊富な概念と経験を備えており、簡単な足し算問題を解くにあたってはさまざまな方略のタイプを示す。それらは一般には以下の5つに分けられる。

1. 指で数える方略。子どもが指を用いて2つの加数を表象し、指で数えて和を求めることで、しばしば数唱の行為を伴う。この方略は、さらに3つのタイプに分けられる(3+5を例にとる)。
・全数方略:1から順番に2つの加数を表象する全ての指を数え上げる。指を一本一本立てながら「1、2、3、(ポーズ)4、5、6、7、8」というように声に出して数える。
・最大方略:小さい加数から指で数えはじめること。指を立てながら「4、5、6、7、8」というように唱える。
・最小方略:大きい加数から数え始め、「6、7、8」と指を立てながら唱える。

実際の計算では、子どもは一番目の数から順に数えていって全数方略に替える。小さい加数を前に置く足し算問題の時(3+5のように)は、一番目の加数から大きい方へ数えていくのが最大方略で、子どもが2つの加数の大小を意識し、大きい加数から数え始めるのが最小方略である。

2. 数唱の方略。子どもが声に出して数を数えて和を求めることで、時には僅かに口が動く程度にもごもご数える場合もある。この方略も同じく上述の全数方略、最大方略、最小方略の3つに分類できる。指で数える方略との区別は、指を使う動作がないことである。

3. 指で表す方略。子どもが2つ以上の加数を指で示し、数えることなくすぐさま答えを出すものである。

4. 分解の方略。子どもが加数をより小さい2つの数に分解し、一方の数をもう一方に加えて自分が熟知している答えを導き出した後、残りの分解した数を足していくというやり方である。例えば、3+4では、子どもが、3が2つで6になることをすでに覚えているなら、4を3と1に分解して先ず6を導き出し、さらに1を加えて7という答えを出すであろう。2つの数の和が10以上の足し算については、例えば6+5なら、子どもは先ず6を5と1に分解し、2つの5を足して10、10足す1は11となる。これは分解の方略の特殊類型───十を集める方法である。

5. 取り出しの方略。子どもが記憶の中から、すでに覚えている答えを直接探し出すことである。

指で数を数える(finger counting)方略と指で表す(finger representation)方略については、どちらも指を使っているが、子どもの外部行為と内在的認知プロセスには違いが存在していることを指摘しておかなければならない。例えば、3+5を計算するとき、もし、子どもが指で3つ数えて、さらに指で5つ数え、それから指を一本一本立てて合計を数えていったなら、それは指で数える方略である。一方、もし、子どもが左手の3本の指を同時に立てて、右手も同時に5本の指を立てて、手を見ながら、数は数えないでかなり速く答えを導き出したなら、それは指で表す方略である。外部行為からは、子どもが指で表す方略を使用している時、その頭の中にはすでに加数に対応する指の図式が出来上がっていることが容易に見て取れる。例えば、5は片手の5本指、7は片手の5本ともう片方の手の2本の指と、一々数えることをしなくても、加数に対応する指の本数を導き出すことができる。よって、計算速度と正確性は指で数える方略に勝っている。

この他、我々が比較的熟知している視覚物体を使用する方略(積み木や棒を動かしたり、紙に線や丸を書いたりする)は、指を使って数える方略と同じ認知機能を持っている。つまり、子どもは物体(自然の計算道具としての手指であろうと外部道具であろうと)を用いて抽象的な数字の意味を表象し、同時に数を数える間、数える過程をコントロールして間違えないようにしている。多くの研究者は子どもの計算方略を観察するとき余分な道具を提供しないので、視覚物体による方略は、計算方略の一種として数えられていない。子どもの認知発達の特徴と学習への興味を考慮に入れて、これらの視覚的物体を用いることで、子どもが数の概念をより理解し、計算プロセスをさらに上手にチェックできるよう補助することを奨励したい。

(二)子どもの初期の足し算方略のレベル

5つの方略は、実行される過程で、認知資源への要求と時間の要求との間にはっきりとした差異があり、かつそれは子どもの計算学習の初期に一定の順序で現れ、それらが習熟度によって段階的に変化していく過程を反映している まず、他の4つの「外的支援性の方略」と比べてみると、取り出しの方略は、主に記憶の中から答えを探し、作業記憶の資源の問題解決プロセスのチェックはあまり必要としないので、反応速度が最も速い。同時に、取り出しの方略の答えの正確性は、かなりの程度、子どもが以前に外的支援性の方略を使用いた際の経験によって決まる。言い換えれば、外的支援性の方略は、子どもが2つの加数と答えの間に正確で安定した関係を確立させるのを助け、その結果正確な答えを長期記憶に保存できるこようになる。次に、指で数える方略と数唱の方略は、子どもの数を数えるという概念的知識と手続き的知識に比較的多く依存している。子どもは、方略を実行する中で、より多くの認知資源を動員して加え、数を数える行為の制御と調整をして、外部動作や外部言語処理を行わなければならないため、思考過程は相対的に外化している。一方、指で表す方略と分解・取り出しの方略は、子どもの既有の表象または内部言語の助けを借りて計算を行うので、長期記憶システムが計算過程にますます多くの作用を発揮し、思考が徐々に内化していく特徴がある。三番目に、指で数えるのと数唱では方略内部でもレベル上の差異が存在する。つまり、全数方略から、最大方略、最小方略へとレベルはだんだん上がっていく。子ども計算はみな1から数え始めるが、その数を数える概念が発達していくにつれて、子どもは数列の途中どこからでも数え始められることに気づき始め、何度も試行した後、さらには2つの加数の位置を変えても計算結果に影響が無いということを発見する。こうして、最小方略は速く正確に簡単に実行出来ることから、指や数唱による方法の中で優位に立つ方略となった。

(三)子どもの初期の足し算方略の発達の特徴

子どもの足し算方略の発達は2つの顕著な特徴を持つ。その1つは、5つの基本方略が子どもの足し算学習の初期に一定の順序で現れ、高レベルの方略は低レベルの方略運用に熟達することを基礎に発達してきたこと。もう1つは、子どもによる方略の適用は波形に発達する、すなわち子どもは一定期間に低レベルの方略と高レベルの方略を同時に使用し、熟練度の異なる方略は、時間及び子どもの認知能力の発達に伴って、使用頻度に大きな変化が生じるということである。

方略が現れる順番は、幼児の足し算学習の典型的行動から容易に読み取れる。「三足す二は幾つか」という同じ質問に対し、子どもは先ず1から始めてそれぞれ3と2を表す指の本数を数えていき、それからまた1から全部の指を数え始める。その後、子どもは3本の指を立てて、続けて指を一本ずつ出して「4」、「5」と唱えるようになる。さらにその後は、子どもは口頭で3から始めて「4、5」と数えるようになる。暫く経つと、直接「5」と答えるようになる。この過程は、足し算方略が決まった順序で現れる規則的なものであることを反映している。方略は徐々に外的な事物に依存する足し算方略から、内部に隠れた符号表象に依存する方略へと転化する。方略がゆっくりとより高レベルに発展していく原因は、以前の方略の使用経験が増すにつれ、熟練度や正確性も上がり、子どもがその方略を実行するのに必要な認知資源への要求度が大きく低下するために、余剰認知資源が、現存の方略の中の過剰処理成分を探すのに用いられ、新しい方略の発見と探求を引き出し、方略を駆使して速く正確で力を省ける方向に向かって絶えず調整と変化を続けるからである。一方、子どもは正確に数を数える 、指で表すなどの外的支援性の方略を通して、子どもの加数と答えの間の数量関係の理解を促すだけでなく、二者間の連結をつくり、その連結がさらに速く正確に方略を運用させる。最後に外的支援性の方略が自ら消失することで、この過渡的な過程を促進し、取り出しの方略が出現し頻繁に使用されるようになる。足し算方略の発達のプロセスは、次の2つのことを示唆している。1つは、指・数唱など外的支援性の方略は、子どもが加数と正しい答えの関係を形成するのを効率よく助け、取り出しの方略の出現と使用を促すということである。2つめは、足し算問題を機械的に暗唱する方法は、記憶が正確でないために間違った答えを導きやすいだけでなく、数量の理解と外的支援性の方略の使用経験が不足しているために、子どもは有効な方略を使って新しい問題を解決することができなくないということになり、それゆえに、子どもの思考が発揮され運用されることを制限してしまうことである。

さて次に、子どもは多様な足し算方略を使用する傾向があり、それぞれの方略の使用頻度は時間の推移によって、波形の変化を生む。解答者として、子どもは多様な足し算方略を使用し、1つだけということはない。年齢がやや小さい子どもでも、全ての問題を指で数えて解決するわけではない。比較的簡単な問題に対しては、例えば加数をより小さな数や二とびにするなどして、子どもも記憶の中から答えを取り出そうと努力している。問題が少し難しいとか、答えが順調に見つからないなどの場合は、子どもは、指を使って数えるなどその他の外的支援性の方略の使用に転じて正確な答えを探し出そうとする。年長の子もまた、同時にこれらの方略を使用するが、ただ彼等は取り出し・分解などの方略の使用率がより高く、指で数える・数唱の方法の使用頻度は相対的に下降している。よって、子どもの方略の発達は、高レベルの方略が完全に低レベルの方略に取って代わる階段状の発達ではなく、波形に前進し、各方略が異なる時期にそれぞれの頂上と谷間となって現れる。このように、子どもは、問題の難度や自分が運用する各種方略の効果に柔軟に対応して適切な方略を選択することで、スムーズに問題を解き、正確な答えを出すことができるのである。


二、幼稚園の計算方略教育の推進に対する提案

幼稚園では、これまでずっと、子どもが熟練してすらすらと言えるような計算技能の養成を重視してきた。、小学校に進学後、2桁以上の計算や、文章題など簡単な計算の段取りを含む数学知識を学ぶようになったとき、簡単計算の答えを速く正確に出せるためである。こうすることで、より多くの認知資源を問題解決のための他の分野に投入することで、こうしたより高レベルの数学問題の解答を助けることになる。だが、高レベルの数学問題解決は子どもの簡単な計算の能力だけで決まるものではなく、子どもの数量理解の程度や問題解決意識やメタ認知のレベルと緊密に繋がっている。当面の研究でも、計算に熟練することは、概念的理解と技能練習の間にバランスと連絡が得られなければならないし、偏ったやり方では子どもの問題解決の柔軟性や速度、正確性にマイナス影響を及ぼすだろうということが発見されている。子どもが励まされて計算方略を運用したり、説明したり、話し合ったりするとき、数と計算に対する理解は更に確実となり、数学の問題解決の柔軟性とレベルにおいて同年齢の子どもに勝るとともに、熟達した計算能力を身につけることができる。就学前は子どもの数学学習の準備段階であるから、この時期の数学教育(計算教育を含む)を、子どもが効果的に数学的知識を構築し、柔軟に問題解決し、積極的に数学学習の成功体験を味わうために役立てるべきである。そこで、幼稚園の計算教育活動に、方略に関する内容を導入し発展させていく必要がある。

(一) 子どもの計算方略の表現と特徴に対し、積極的に関心を注ぎ理解する

教師が子どもの計算方略の表現と特徴に関する知識を学び理解することは、一方では、教師が子どもの認知特性と思考プロセスについての理解をより深め、子どもの計算能力発達の法則に基づいて、関連の教育活動の計画を立て、実施・調整を行う助けとなる。もう一方では、方略は子どもの同じ回答の裏にある異なる認知加工過程を鋭く反映することができるので、教師はより正確に子どもの思考レベルを判断でき、適切で個々に合った教育指導を進めるための科学的根拠を提供することが可能である。

目下、教師の子どもの計算方略に対する認識は、ややまとまりがなく欠けている部分さえあることを考慮し、我々は理論学習と教育観察の両面から着手して改善を行うことを提案する。まず、教師は子どもの数学的認知発達に関する専門書籍や雑誌を通して、子どもの計算方略の発達の一般法則と特徴を理解し、子どもの方略の発達について正確な認識を形成することができる。次に、教師は教育活動と日常生活の上で、計算方略に関する子どもの表現をもっと考察するべきで、それにより、理論知識に対する理解が深まり、教育の実践において子どもの方略の発達の知識をいかに効果的に運用するかが考えられるようにもなる。教師は、子どものやる気や必要に応じて、以下の具体的な方略考察方法を柔軟に採用してみるとよい。例えば、今学期の数学教育目標に基づいて難易度の違う計算問題をいくつか選んで、個別にテストを行い、子どもの解答や、テストを実施する間の言葉や動作などの様子を詳細に記録し、さらに子どもに「どうやって答えを出したの?」と尋ね、最終的に、個々の子どもが使っている方略のタイプ頻度を判断し分析する。また、子どもの日常生活と教育活動の中で、ランダムに 子どもの計算方法を尋ねて子どもの思考プロセスを素早く理解する。同僚との話し合いを通じて、子どもの方略の発達についての様子や考え方を交換し合うこともできよう。そして、子どもの方略使用について継続的に観察や記録をして、詳細で正確なデータによって子どもの数学能力の進歩を報告し、それによって保護者が子女の計算能力を理解し、誤った認識をなくす一助とすることも可能である。

(二) 子どもの計算方略の使用を適切に指導する

教師は、子どもの計算方略の発達を観察、 理解することを基本に、積極的に効果的な教育対策をとり、子どもに方略の使用について指導し、問題の解決方法を考えようという気持ちにさせるよう導いて、方略使用の効果を高め、概念理解の基礎の上に、しっかりと子どもの計算能力の発達を促進していかなければならない。それには以下の方法が参考になるだろう。

一、 教師は、計算教育活動中、充分な時間を与えて子どもに考えさせ、速く答えられたことに満足するだけでなく、具体的な解決方法を報告させるべきである。そうすれば、子どもが何らかの方法を用いて問題を解決することの必要性を認識する助けとなり、自分なりの方法を取り入れて答えを出す機会を与えることもでき、他人の答えをただ反復するだけという現象を避けられる。

二、 教師は、子どもに多数の方略を用いて計算問題を解くよう働きかけるべきである。例えば「他にも方法があるかな?」などと尋ね、様々な計算方略が理解できるように手助けする。

三、 教師は、子どもの方略使用に必要且つ適切な材料を提供する。例えば、積み木や棒などの実物、紙や筆記用具など、子どもが適当な材料を選んで数量関係を表したり、計算の過程をチェックするのに役立つ。これは、計算学習の初期や比較的難しい問題を解く時に特に必要である。

四、 教師は子どもの計算方略の発展の法則及び子どもが今持っている方略のレベルに基づいて、適切な指導を行い、子どもが更に高いレベルの方略に挑戦して使用できるようにする。例えば、我々は、最小方略が計算問題を解くときに速くて正確で簡単であるという特徴を知っているわけだが、単に子どもに「大きい方の数を頭に置いて、続けて数えていこう」と助言するだけでいいのだろうか。方略指導の効果は以下の3つの要素で決まる。1. この方略は、子どもの"発達の最近接領域"内にあるのかどうか。2. 子どもは、この方略の優れた点や使用方法を理解しているか。3. 子どもは、適切な方略の練習機会を与えられているか。もし子どもがすでに初めに出てきた数から数え上げる方略を使っているなら、この時に最小方略を紹介するのが時宜を得ている。なぜなら、子どもはすでに「順序は関係ない」という数え方の原則を理解しているからであり、肝心なのは、教師が子どもに2つの数の大小を注意して比較するようヒントを与えることであるからだ。そしてもし、子どもの優位を占める方略が1から数えるものであれば、その子どもは、どこから数え始めても結果に影響がないことをまだ理解していないので、この時は、まず数え方の原則を理解する手助けをするべきである。よって、我々は子どもの方略発達のレベルに基づいて適切な方略のタイプを選択し指導を行っていくべきである。この他に、方略指導の方法は子どもが方略を選択して正しく使用することがとても重要である。最小方略を例に説明してみよう例えば2+9のような、足し算で、最初の数が二番目に足す数よりずっと小さい問題を提示し、子どもが最小方略を発見するよう導き、この方略の使用方法を理解させる。それから、3+22や4+33などのように、より何度の高い問題を練習させ、例と結びつけてこの方略の優れた点を解説し、最後に子ども自身に方略を説明させる。こうすることで子どもたちの方略に対する理解と記憶が強化され、この方略を使用する頻度が上がっていく。

(三) 子どもが計算方略を話したり交流したりする機会を作る

機会を作って、子どもに計算方略について話したり交流したりさせることは、子どもが自分の使っている方略について理解し、よく考えて、より効果的に方略を実行する過程をコントロールし、方略の使用効率を高めることができるようになるための助けとなるだけでなく、さらに他人が使っている方略について討論や観察をすることで、問題解決のための方略の多様性を理解し、他人の意見を尊重する態度を育てることにも役立つ。

まず、我々は適当な問題の場面を作ることができる。例えば、日常の数学問題では、子どもが様々な計算方略を使うように励まして、用いた方略を説明させたり、実演させたりすれば、子どもが自分の思考プロセスを徐々に認識しじっくり考える助けとなる。就学前の児児は言葉の表現力やメタ認知レベルに限りがあるので、往々にして、こうした方略の報告活動は、初めのうちはやや困難を伴う。そんな時には、教師は柔軟性のあるゆっくりした対策をとり、子どもが意識的に自分の用いた方略について考えられる力を育てるようにする。例えば、大きく声を出して考える見本を見せるとか、子どもが動作で説明してもよいことにする等の策を講じる。次に、教師は子どもたちを集めて方略の報告や交流を行うことで、計算方略が豊富で多様であることを認識できるよう導くことができるし、また子どもが観察や模倣といった方法を通して、その他の方略を学習したり試したりするよう促せる。分かち合いや交流活動の中で、子どもは、複数の方略を理解し比較することで発散的思考が引き出され、その上、観察や模倣などの方法を通じて友達の問題解決方略を学ぶだろう。同時に、子どもはその中から、どのようにして他人の意見をしっかり聞き、それを尊重していけばいいのかを学ぶこともできる。

本論文は、足し算方略を例にとり、幼稚園の計算教育に対する筆者の考えと提案を示したが、その目的は、これをたたき台にして、次のような提案をすることにある。是非、幼稚園の数学教育はどのように子どもの数学認知能力の発達特徴と有効に結びつくのかを積極的に考え、子どもの思考プロセスと問題解決能力を重視してほしい。そして、それによって幼稚園の数学教育の質を更に向上させ、就学準備教育としての役割を十分に果たし、子どもの数学能力の長期的な発達を促進してもらいたいと願うものである。


(参考資料、以下省略)

-----------------------------------------------
本稿は「学前教育研究」(中国学前教育研究会出版)の2007年3月号内の記事を転載したものである。


このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

遊び

メディア

特別支援

研究室カテゴリ

アジアこども学

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP