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【不安障害】第3回 不安障害の種類 その2

榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学大学院教授)

2015年1月 9日掲載
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前回は、不安障害の種類について、①分離不安、②全般性不安障害、③強迫性障害について説明しました。今回は、残りの不安障害について説明します。


④ パニック障害

強い恐怖感が突然、次に述べるような症状とともに起こり、10分から30分持続します。ともに起こる症状としては、心悸亢進(心臓がドキドキする)、発汗、震え、息が詰まるような感覚、胸の不快感、吐き気、腹部不快感、めまい、自分自身ではないような感覚、気が狂ってしまうのではないかという感覚、寒気、ほてり感などです。このようなパニック症状が何回も繰りかえし起こります。引き金となるような状況はないことも多いのですが、たくさん人がいる広い場所への恐怖(広場恐怖症)が引き金になることがあります。


⑤ 心理的外傷後ストレス障害

数ある不安障害の中で、昨今最も多くの人が知っているのは、心理的外傷後ストレス障害ではないでしょうか。英語名のPost Traumatic Stress Disorderの頭文字PTSDという名前のほうがよく知られているかもしれません。あの東北地方を襲った大地震・津波を経験したり、テレビなどを通じた恐ろしい画像を見たことによって、被災地だけでなく日本全体で大勢の子どもがPTSDの症状を示したと言われます。

実際の体験や見聞体験が終わって1ヶ月以上経過し初期の記憶が薄れたにもかかわらず、体験時のイメージを見たり、類似の状況によって、強い恐怖感や無力感を繰り返し感じ、動悸や発汗などの身体的な症状を伴うのがPTSDの特徴です。子どもの場合にはさらに、悪夢や不眠、日常活動への不参加、集団への参加を避けるなどの症状がみられます。また大人と異なり、実際に引き金となった事柄が本当にまた起こるのでないかという思い込みが強くなり、強い身体反応が起こることもあります。引き金となった事柄について考えたり、語ったりすることを避けるようになります。

テレビなどで津波の映像を放映しないのも、現在もPTSDが完全になおっていない大勢の人への影響を考えているからだと思います。

このようにPTSDは、先の震災を通じて大きく社会に知られるようになりましたが、子どものPTSDの原因として最も多いとされているのは、自然災害ではなく児童虐待です。集団場面への参加ができない、集中できない、感情爆発をするなどの症状は自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害などの発達障害の症状と似ていますが、虐待された子どもが示すPTSDの症状でもあるので注意が必要です。


⑥ 急性ストレス障害

基本的には⑤外傷後ストレス障害と同じで、持続期間が1ヶ月未満のものです。


⑦ 社交不安障害

知らない人と会うことに不安や恐怖心を強く抱いてしまう不安障害です。他人から詮索されたり、侮辱されるのではないかといった気持ちが根底にあります。子どもの場合は、教室で皆の前で音読することを嫌がったり、教師に相談したりすることも避けるようになります。このような状態が6ヶ月以上続くことが、社交不安障害の診断の基準ですが、その結果友人もできず、ひとりぼっちで過ごすことが多くなり、やがては不登校にもつながります。


⑧ 選択的緘黙症(場面緘黙症)

上記の社交不安障害の極端な形が、この選択的緘黙症です。家族や親しい友人の前では普通に会話をすることができますが、知らない人の前では全くしゃべることができません。年少児の場合には、言葉の発達の遅れと見なされてしまうこともありますが、言語発達にはまったく障害はありません。家族にほかのタイプの不安障害をもつ人がいることが多いとされています。


⑨ 限局性恐怖症

特定の状況や物に対する強い恐怖を覚え、心悸亢進や震えなどの症状を伴う不安障害です。特定の場所や物としては、特定の動物(犬、蛇)、虫、高所、水、エレベーター、橋の上、狭いところ(押し入れの中など)があります。そのような場所や物に近づくのを避けるようになります。子どもの場合には、突然泣き出したり、大人にしがみついたりします。


以上、不安障害の種類について述べてきましたが、同じ不安障害と言ってもたくさんの種類があることがお分かりいただけたと思います。
次回は、その原因(発症のメカニズム)について述べます。

筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学大学院教授)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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