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研究室

Laboratory

アメリカのドゥーラに10の質問

岸 利江子 (昭和大学横浜市北部病院 助産師)
Shana Salik (イリノイ大学シカゴ校看護学部大学院生)

2010年5月14日掲載

要旨:

「アメリカのドゥーラに10の質問」プロジェクトは、ドゥーラの体験活動内容を、12名のドゥーラに10項目による質問に回答してもらう形でまとめたものである。養成プログラムの内容、実践活動だけでなく、ドゥーラの真の声や体験談、メッセージなども垣間見ることができる。結果としては、過去の調査研究と比べて大きな矛盾はなく、さらにコミュニティベース・ドゥーラ特有の背景について理解を深めることができた。アメリカで活躍しているドゥーラの熱意が、国や文化を超えて、日本でドゥーラに関心をもつ方々に伝わり、日本におけるドゥーラサポートの検討に貢献できることを願う。
はじめに

アメリカでドゥーラとして活躍している女性たちは、どんなプロセスを経て、どんな思いや智恵をもって活動しているのでしょうか。ドゥーラサポートの「効果」を調査する研究は数多くされてきましたが、ドゥーラの「体験」についての研究はまだそれほど多くありません。

ドゥーラ研究室の連載8回目「ドゥーラになる女性たち」では、社会学分野の論文(Meltzer, 2004; Morton, 2002)や、主に自営業タイプのドゥーラを対象にした全米調査 (Lantzら, 2004; 2005)をもとに、ドゥーラの体験について紹介しました。

この「アメリカのドゥーラに10の質問」プロジェクトでは、ドキュメンタリー映画『ドゥーラ物語:若年妊娠への支援』の中のロリーサのようなドゥーラがたくさんいることをお伝えしたくて、12名のドゥーラの体験や智恵を集めてみました。


方法


2009年9月にシカゴで行われたコミュニティベース・ドゥーラが多く集まる全米集会(Birth, Breastfeeding, and Beyond)の開催中に10名のドゥーラから回答をいただきました。100名以上の参加者全員に呼びかけられましたが、時間も限られており多数の回答を得ることができませんでした。

加えて、1名は別ルートからの紹介で、もう1名は共著者のShanaから回答を得ました。結果、今回の調査に協力してくれたドゥーラのタイプ(モデル)は、社会的に弱い立場にある女性を対象にしたコミュニティベース・ドゥーラが大半で、裕福な女性を対象にした自営業型や、各病院のサービス向上のための病院ベース・ドゥーラは少数でした。イリノイ州シカゴだけでなく、アトランタ州、テキサス州、ニューハンプシャー州など、全米のドゥーラから回答を得ることができました。

データ収集にはアンケート用紙を用いました。ドゥーラの体験について、以下の10項目について、自由回答式で尋ねました。

質問1. ドゥーラになった理由は何ですか?

質問2. ドゥーラになるための養成プログラムについて教えてください。

質問3. あなたのドゥーラの実践活動について教えてください。

質問4. あなたにとって理想のドゥーラのイメージは?

質問5. ドゥーラとして働く時、一番報われると感じること、一番困難だと感じることは何ですか?

質問6. ドゥーラとして働く時に、クライエントの妊産婦や家族の方たちと良い関係をつくるためのコツは何ですか?

質問7. ドゥーラとして働く時に、医療スタッフと良い関係をつくるためのコツは何ですか?

質問8. 燃え尽きずにドゥーラの仕事を続けるためのコツは何ですか?

質問9. 妊産婦や家族、医療スタッフ、ドゥーラ仲間、社会の人々に伝えたいメッセージがあれば教えてください。

質問10. 一番心に残っているドゥーラとしての体験談を教えてください。

その他、年齢や年収、発表時の匿名希望の有無なども尋ねました。さらに、事前に同意が得られていた場合は、メールやインタビューでさらに詳しく説明をお願いしたこともありました。

以下、金額については、US$1=90円(2001年12月現在)で換算して併記しました。


結果

1) 回答してくれたドゥーラについて
はじめに、回答を寄せてくださった12名のドゥーラ の背景を紹介します。

性別:
全員が女性でした。

年齢: 
20代1名(9%)、30代7名(55%)、40代と50代がそれぞれ2名(18%)で、過半数のドゥーラが30代でした。

出産経験: 
12名中9名のドゥーラに出産経験がありました。そのうち、5名が2回経産、3名が3回経産、1名が6回経産でした。「出産経験なし」のドゥーラは3名とも、公衆衛生や母子保健、助産、看護などの専門家でした。つまり、全員のドゥーラが、個人的または職業的に、妊娠・出産・育児に精通した背景をもっていました。

資格・認定: 
12名中9名がDONAのドゥーラ認定を受けていました。DONA International認定だけでなくドゥーラ養成員、ラクテーションコンサルタント、看護師、助産師、WIC(母子の栄養改善のための連邦政府によるプログラム)の職員など、さらに専門的な資格を持ったドゥーラも7名いました。HealthConnect One(前Chicago Health Connection)によるコミュニティベース・ドゥーラの認定を受けたドゥーラも4名いました。ドゥーラの認定がなく、専門職のバックグラウンドもないドゥーラは1名でした。

ドゥーラ経験年数: 
12名中11名から回答がありました。ドゥーラとしての経験年数は、1年未満が2名、1~5年が4名、6年~10年が3名、11~15年が2名でした。なりたてのドゥーラからベテランまで、幅広いドゥーラから回答が得られました。クライエントを支援した経験件数についても、2件~200件以上と幅広い回答でした。

どんなペースでドゥーラ経験を積んでいるのかについては、詳細に調べることができませんでしたが、3年4カ月でクライエント150名というハイペースなドゥーラから、7年で10名というドゥーラまで、さまざまでした。

クライエントの背景: 
今回の調査に協力してくれたドゥーラの多くはコミュニティベース・ドゥーラであったことを反映し、10代の若年層、ヒスパニック系、アフリカンアメリカン系、ネイティブアメリカン保護地区、貧困層など、社会的に弱い立場(マイノリティ)にある妊産婦を主に支援しているドゥーラが過半数(有効回答10名中7名)でした。「初産婦」、「多様(diverse)」と答えたドゥーラや、無回答も数名ありました。

教育レベル:
教育レベルは幅広く、高校卒業が2名、短大などが4名、大学が1名、大学院が3名、無回答が2名でした。

年収:
世帯あたりの年収も幅広く、$15,000-$24,999(約135万円~225万円)と$25,000-$34,999(約225万円~315万円)が各1名、$35,000-$49,999(約315万円~450万円)が3名、$50,000-$74,999(約450万円~675万円)が2名、無回答5名でした。

ドゥーラの仕事から得る収入が主な収入源かどうかも尋ねました。回答の得られた9名のうち、4名がそうであると答えました。「いいえ」と答えたドゥーラは、看護師や他の仕事から得る収入があったり、夫の収入に頼っていたりしました。

2) 10の質問への回答

質問1.ドゥーラになった理由は何ですか?

・「自分自身または親しい女性の出産体験がきっかけ」

「自分自身が10代の時に出産をした時にサポートがありませんでした。自分がしてもらえなかったサポートを、他の女性にしてあげたいと思いました。」
「私の娘がつらいお産を体験したこと。もっと良い方法があったにちがいないという思いでドゥーラになりました。」
「自分の初めてのお産の時に、夫に負担をかけすぎないようにと思ってドゥーラに付き添ってもらったことがきっかけです。その3ヶ月後に自分もドゥーラになりました。今は天職だと思っています。」
・「世の中の困っている女性を助けたいという気持ち」

「困っている女性を助けたいという気持ちからです。貧困層で、未婚で、家族の助けもない、薬物依存のあるような女性を支援したいと思いました。」
「自分では気づかないうちから、ドゥーラになるために勉強する前から、私は常にドゥーラでした。私のいとこたちが病院でお産をした時も、私はドゥーラとして付き添っていました。やがて、「傷つきやすくもろい時期にある女性に、彼女らの内にある智恵を取り戻す手助けをしてあげたい」ということに使命感と情熱を感じるようになりました。」
・「自然出産・母乳育児に関心・共鳴」

「母乳育児は自然だから関心があり、ドゥーラも自然なことだと思ったから。」
「私は若くて子どももいない頃から、お産のプロセスを見たいと思っていました。赤ちゃんが体から出てくるところをとても見たかったのです。ボランティアをしている事務所で、ドゥーラになってみないかと勧められ、嫌なら止めてもいいという条件で始めたのですが、時を経るうちにドゥーラの仕事に夢中になってしまいました。」
・「もともと母子保健関連職種の勉強や活動の経験があった」

「私が妊娠している時にクリニックで両親学級がありました。そこで出産準備教育に携わるようになり、トレーニングを受けるよう勧められてやってみました。助産師に教わりました。やがて、ドゥーラの養成トレーニングを受けてみないかと勧められたので、受けました。」
「もともと助産師であったけれど、その資格は州で法的に守られていなかったのでドゥーラになろうと思いました。ドゥーラは自然なお産について女性を教育することができるからです。 」
「助産師になるか、家族看護ナースプラクティショナーになるか迷っていました。ドゥーラに付き添われたお産は良い研究結果があることを知って、お産中の女性を支える人になりたいと思いました。看護や助産の勉強をしていると病院でのお産が中心になるけれど、病院外の、自宅分娩などのお産についても知りたかった。」
「ドゥーラに付き添われたお産を経験した友人に、そのビデオを見せてもらった時に即座にドゥーラに仕事に惹かれました。公衆衛生の仕事をしていくうえでドゥーラの仕事は大きなプラスアルファになると感じました。」

質問2.ドゥーラになるための養成プログラムについて教えてください。

2-1)講習会の長さはどのくらいでしたか?

16~23時間の講習会を受講したというドゥーラが多く(8名)、これはDONA認定のための講習会の条件と一致します。また、コミュニティベース・ドゥーラのトレーニングを受けたドゥーラは「半年」や「20週間」などと回答しました。

最も集中的なトレーニングを受けたベテランドゥーラの一人は、ドゥーラになるための養成についてこのように回想しています。

「記憶が間違っているかもしれませんが・・・、初めにコミュニティベース・ドゥーラになるために12週間以上のトレーニングを受けました。その後、3件のお産に見習いとして付き添った後、さらに3件は自分が主なドゥーラになって付き添いました。後に、DONAの講習も受けましたが、それは3日間で20時間の講習会でした。」

ほとんどのドゥーラが、3件のお産に立ち会うことがドゥーラになる条件の一つだったといいます。5~7件と答えたドゥーラもいました。

講習会にかかった費用は、300ドル(2万7000円)前後(275ドル~400ドル: 24,750~36,000円)がほとんどでしたが、これはDONA International主催の講習会の参加費にほぼ一致するようです。500~700ドル(4万5000~6万3000円)だったという回答も1名ありました。

一方、コミュニティベース・ドゥーラになるための参加費は、助成金でカバーされたため無料でした。

多くのドゥーラが、ドゥーラの認定を受けるために4~5冊の本を読んでいました。最多は15冊でした。

2-2) ドゥーラになるためのトレーニングで、どんな内容や方法が一番役に立ちましたか?

自由回答式で尋ねたにもかかわらず、ほとんどのドゥーラが"Hands-on(見るだけ・説明を聞くだけでなく実施体験する方法、実習)"と"Role-playing(ロールプレイ、役割演技)"が最も役に立ったと答えました。

「ベテランのドゥーラから学ぶ演習がとても役に立ちました。ただ本を読むだけと違って、自信がつきました。お産の時の体位やマッサージの技術について学びました。先輩ドゥーラから、お産に付き添った体験談を聞くこともできました。」

「役割を演じてみてコメントがもらえるのも役に立ちました。お産のサポートやコミュニケーションについて、難しい状況を想定して練習しました。たとえば、ドゥーラが、陣痛中の女性に『あっちに行って』と言われたらどう対応しようか?など。」

「お産の進み方、母乳育児、ドゥーラバッグの中身など。新しいクライエントに会う時の面接に向けてどう準備するかについて学んだことも役に立ちました。」

他には、対象とする女性をとりまく社会的状況について学んだり、先輩ドゥーラとペアを作って指導を受けたりしたドゥーラもいました。

2-3) トレーニングの内容で、どんな内容が足りなかった、もっとあればよかったと思いますか?

初めてお産に付き添う時はベテランドゥーラと一緒が良かった、という意見が複数ありました。

「ベテランのドゥーラと一緒にお産1件に付き添う、ということが、ドゥーラトレーニングの要件に含まれていればいいのにな、と思いました。私の場合、私の初めてのドゥーラ経験はバックアップ(待機・予備)ドゥーラでした。ベテランのドゥーラが主に付き添うことになっていて、ドゥーラになりたての私と同僚2人は待機していました。ところが、ベテランのドゥーラが来られないことになり、私たちはその状況にどう対応したらいいのかわかりませんでした。でもなんとか一緒に頑張って、終わってみると上手に働くことができていたのですけど、初めは2人ともかなり緊張しました。」

他には、実習や産痛緩和法はどれだけ学んでも学び足りないことはないようでした。どうしようもない状況や未知の問題に直面したらどうしたらいいのかついて、もっと知っておきたかったという意見がありました。また、対象者集団の特徴を理解するために、たとえば、赤ちゃんについてや、若い子たちとのかかわり方などについても、もっと学びたかったという意見がありました。ドゥーラとして立会った後の記録の方法や、起業など管理についても知りたかったという意見もありました。

ドゥーラになるための初めのトレーニングだけでなく、ドゥーラになった後にも継続的にトレーニングを受けたいという意見もありました。


質問3.あなたのドゥーラの実践活動について教えてください。

3-1) 普段、どうやってクライエントを見つけていますか?

ドゥーラは私的・公的なルートを使ってクライエントを見つけ、妊産婦の方からも同様に公私両方のルートでドゥーラを見つけて支援を受けていることがわかりました。

私的な経路としては、過去のクライエントや知人・友人からの紹介、個人からの電話やメールでの問い合わせなどが主でした。さらに、バスの中や路上で、というものもありました。 公的な経路では、WICなどの福祉プログラム、ボランティアプログラム、学校の教員やカウンセラー、クリニックや病院、裁判所、チラシ、出産準備教育、ドゥーラのネットワーク、DONA Internationalのホームページ、NPO組織などがありました。

「DONAのホームページを通して私にコンタクトをとってくるクライエントもいるし、専門職である友人からの紹介、ドゥーラ仲間からの紹介のこともあります。」

3-2) 通常、クライエントにどんなことをしていますか?


<妊娠期>
お互いに知り合う
妊婦健診に付き添う
マタニティブルー・うつのスクリーニング
父親になる男性や祖父母への教育や支援
家庭訪問
コミュニティベース・ドゥーラは特に産前の家庭訪問を多く行っています。
「計3~15回の産前訪問を保健師と交代で行います。」
「妊娠7カ月目に1回、8か月目に3回、9か月目に4回。」
病院ベースと自営業型で活動しているドゥーラも妊娠後期に家庭訪問をおこなっていることがありました。
出産準備教育
内容:お産の準備、バースプランを立てる、陣痛について、産痛緩和法、分娩について、親になること、母乳育児について

特にコミュニティベース・ドゥーラでは、生活全般の手助けとして総合的に提供されていることもありました。

「情報提供におまけをつけています。それに、たくさん気にかけているよということを示します。時々、食べ物や衣服、住まいなどの支援もしなければいけないことがあります。」

<分娩期>

電話連絡をもらう。「本人がどんな気持ちでいるかによるのですが、子宮口が4センチになる頃までに会うことが多いです。」
継続的な心理的・身体的な支援
アイ・コンタクト
愛情を示す
お産に立ち会う
バースプランをサポートする
陣痛を和らげるケア
無限のサポートを提供する
赤ちゃんが生まれた後は、少なくとも1~2時間は付き添って母乳育児を開始する

<産後>
母乳育児の支援
赤ちゃんとのきずなづくりを助ける
必要に応じて専門家への紹介
産後の教育、質問に答える
産後うつ病のスクリーニング
家で落ち着いたかどうかを確認する。食べ物などあるかどうか、など。
学校に復帰する手助けをする
電話訪問
家庭訪問
「3~15回の家庭訪問を看護師と交代でおこないます。」「退院したら、6~12週間の間、家庭訪問で会うようにしています。」(コミュニティベース・ドゥーラ)「病院ベースのプログラムの場合は入院中に面会して、自営業型の場合は退院後に家庭訪問をします。」(病院ベースと自営業型で活動しているドゥーラ)

あるドゥーラは、相手のニーズによって支援の内容を決める、ということを以下のように説明してくれました。
「私の場合、ドゥーラの支援内容は、クライエントである女性によります。(ヒスパニック系の女性を主に対象にした)病院のボランティアプログラムでは、多くの女性は初め、ドゥーラとは何かさえ知りません。だから、私は初めに、なぜドゥーラが付き添うかを説明します。ティーンやシングルマザーの場合は、(祖父母や姉妹、親戚なども含めた)拡大家族のサポートが重要になります。一方、Bradleyクラス(夫立ち会いのための集中的な両親学級)に参加するような夫婦は、夫が既に良い支援者になっています。Bradleyクラスに参加する夫婦は、ドゥーラとは何かを良く知っているし、ドゥーラに付き添ってもらおうと自分たちで決めています。ドゥーラは、夫がコーチとしてうまく付き添えるように尊重して、夫もお産をいい体験と感じられるように支援します。夫が引っ張っていくタイプでない場合には、ドゥーラが導く役割をもっと分担したりします。」

3-3) 通常、ドゥーラのサービスに対して、どのくらいの料金を請求していますか?どうやって額を決めますか?

<コミュニティベース・ドゥーラの場合>

コミュニティベース・ドゥーラの場合は、助成金で費用がまかなわれるため、料金は無料でした。

「私たちのサービスの対象者は、主にアフリカンアメリカンやヒスパニックのティーンです。ドゥーラの事務所は国や地方の助成金で支援されているので、ドゥーラサービスは彼女らに無料で提供されます。」
「私が所属するNPOからお給料をもらっています。」
「家庭訪問の回数により最高で1000ドル(9万円)を助成金から払われて、受け取っています。」

<自営業(プライベート)ドゥーラの場合>
自営業タイプの場合、通常、1件につき200~1000ドル(1万8000~9万円)の料金設定で活動していました。

「もし(自営ドゥーラとして)料金を請求するとしたら、シカゴの相場は400~800ドル(3万6000~7万2000円)くらいだと思います。料金の決め方は、ドゥーラの経験や、+αでどんなサービスが付くかによると思います。例えば、ドゥーラが経験豊富だったり、認定を受けていたり、マッサージセラピストの資格もあったり、看護師免許もあったりすると、料金は高くなる傾向があります。」
「ドゥーラの認定をとりたての頃は、650ドル(5万8500円)で始めました。経験を積んで、コストがかかるようになっていたので、今は750ドル(6万7500円)にしています。私が提供できるサービスをすべては要らないというクライエントもいるため、そういう場合は値引きします。」

<病院のボランティアプログラムの場合>
今回回答してくれたドゥーラのうち1名は、病院ベースのボランティアプログラムでの活動経験がありました。病院ベースのドゥーラの料金設定は病院により異なります。

「この病院では、ドゥーラに付き添ってほしい女性はサービスを無料で受けられます。ドゥーラへの支払いはありません。」


質問4.あなたにとって理想のドゥーラのイメージは?


理想とするドゥーラの資質、能力、態度、活動内容について、様々なイメージが挙げられました。

「ものわかりがよくて、相手をジャッジしなくて、優しくて、フレンドリーなドゥーラ。」
「卓越したケアができるようなドゥーラ。」
「親切で、情け深くて、パートナーもお産に巻き込むことができて、ものわかりのいいドゥーラ。」
「陣痛からお産までずっと付き添い、支援的で、自分のクライエントの意思を尊重するドゥーラ。」
「お産がどんな段階かを見極めることができて、とても支援的で、産婦が痛みから気を紛らわせることができる。産痛緩和法の経験が豊富で、母親と信頼関係を築けて、母乳育児を増やして無痛分娩や帝王切開を減らすなど良い結果を生むようなドゥーラ。」
「強くて、支援的で、伝統的なドゥーラ。」
「自分自身が理想のドゥーラよ!」
「『ドゥーラ物語』の中のロリーサ。何を言うべきか、何をするべきかを知っている。自信をもっている。人々に信頼されていて、彼女と一緒にいると安心できる。良いドゥーラとは、自分が立ち会うお産の場に調和を生みだす。」
「自分がケアをする女性に思いやりがあって、女性が受けるケアについて彼女が自分自身で決断できるように支援するのが理想のドゥーラ。可能な選択肢や医療介入の利点・不利な点について女性を教育し、女性がお産を怖がることなく積極的に立ち向かえるように支援するドゥーラ。」
「ドゥーラを育てることもできるドゥーラ。そうすれば、母親たちにもっとドゥーラサポートがいきわたるようになるから。」


質問5.ドゥーラとして働く時、一番報われると感じること、一番困難だと感じることは何ですか?

自由回答式で、上位3つずつ尋ねました。上位に多く挙げられた順に紹介します。

<ドゥーラのやりがい>
・お産、母子の姿に感動

「新しい命の誕生」「元気な赤ちゃん」「お産に立ち会えること」「元気なママ」「ママと赤ちゃんのきずな」

・お産の場で女性とその家族に必要とされ、効果的に支援できているという感触
「自分が必要とされている、女性を助けている、と思えること。違いを生み出していると思うこと。」
「過去の自分のような若い少女たちを支援していること」
「その女性にとって理想であるお産を達成するのを手助けすること。」
「幸せで健康な赤ちゃんがこの世の中に生まれてくるためのお手伝いができること」
「夫にとっても報われると感じられるようにすること」
「家族を支援すること」

・クライエントとの信頼関係、感謝の言葉
「いてくれて、助けてくれてありがとうと言ってもらえること。」
「赤ちゃんが生まれた後も続くような関係をクライエントと作ること。」
「私のクライエントに、私の説明が、お医者さんよりも上手だったと感謝してもらえること。」

・女性の人生を手助けすること
「女性がそれぞれの自分の正しい道をみつけること」
「彼女らの人生を良い方へと変えていくお手伝いをしていること」
「その女性の人生に大きな貢献をしていると感じられること」
「若い女性やその家族のために、前向きな出産教育をすることはかけがえのないこと。たとえ、自分が望むような選択をしなかった場合でも、彼女らはよく、自分の体験を他の若い女性に話して、否定的なお産の体験が連鎖することを止めることができる。」
「若い女性のために、健全な人間関係のお手本となることはやりがいを感じます。それを他のドゥーラと分かち合うことも。」

・母乳育児が成功すること
「母乳育児を開始して成功すること」
「若い母親たちが母乳育児に目覚めてその大事さをわかってくれるようになること。1人目の赤ちゃんの時に母乳育児をやってみると、多くは2人目の赤ちゃんの時にも母乳育児を選ぶことが多いし、コミュニティの他の女性を教育してくれる。」

・地域(コミュニティ)に根差した活動
「コミュニティとコミュニティをつなぐことができる。」

<ドゥーラの困難>
・医療従事者からの理解・協力・支援の不足

「医療従事者と良い協力関係を築くこと」
「スタッフの支援を得られないこと」 「母親を支援するうえで、全員が同じ考えをもつこと」
「フェアでない人々と関わること」
「ドゥーラの付き添いを認めようとしない病院のスタッフ。病院内で味方になってくれる人がたくさんいても、それ以上の人(多くはナース)が、ドゥーラの仕事を好ましく思わないことがある。それはナースは自分がやりがいを感じる仕事の部分をしていないのでドゥーラにジェラシーを感じているからかもしれないし(ナースも記録に追われるせいで産婦をケアする時間がないことがよくあるので)、ドゥーラの役割を理解していないためにドゥーラはナースの邪魔をする人だと思っているのかもしれない。ドゥーラの人柄によると思う。」

・オンコール
「1日24時間で週7日間オンコール、というか25時間×週8日間かな。ハハハ」
「お産の前にはオンコールで待機して、いつお産が始まるかわからないこと。ドゥーラの仕事が(無給のボランティアではなく)有給だったら自分の感じ方は異なるかもしれないけれど。」

・医療介入
「帝王切開」
「無痛分娩(硬膜外麻酔)」
「お産は自然に始まるべきだと思う。」

・重労働、無力感
「お産の後には疲れ切ってしまう」
「長時間のお産」
「できるだけのことをしてみても、それでもうまくいかない時。」
「自分自身のケアが必要」
「身体的にも情緒的にも重労働。不眠が次の日にこたえる。」
「お産は本当に大事なことなのに、という考えを表明すること」

・クライエントとの関係づくり、不真面目な妊婦
「母親との関係づくり」
「お産に付き添うことになった産婦について、前もって何も知らないこと」
「予約を守ってくれないクライエント」
「協力的でないクライエントとかかわること」

・ドゥーラ管理者の無理解・支援不足
「ドゥーラを管理する者が、ドゥーラの仕事について十分に理解していないこと。多くの管理者は、ドゥーラが実際に何をしているかを知らないし、ドゥーラの仕事が実際どんなに大変かを知らない。そうすると、ドゥーラの仕事はどんなものかについて非現実的な思い込みを抱いてしまう。ドゥーラサポートの実践のために助成金を申請する時には、ドゥーラの過剰労働につながって、支払いが十分にされないはめになってしまう。」
「上司が公平でないこと」

・書類報告の負担
「記録や書類の作成。助成金を受け取っていると、申請したとおりにお金を遣っているということを証明するためにたくさん書類を書かなくてはいけない。複数の助成金を受けている場合には書類がもっと増える。書類の仕事はすぐに済ませていかないと、どんどんたまっていく。」

ここで、「クライエントとの信頼関係」、「医療スタッフとの協力関係」、「重労働で燃え尽きないこと」、という3点がドゥーラの成功の鍵である可能性は、過去の研究で明らかになっており、今回の調査でも再確認されました。そこで、ドゥーラの仕事の困難な面を予防し、やりがい感を増すために、これらの3点についてコツを詳しく尋ねました。


質問6.ドゥーラとして働く時に、クライエントの妊産婦や家族の方たちと良い関係をつくるためのコツは何ですか?

・ジャッジしない態度*

*注釈:「ジャッジしない態度(non-judgmental attitude)」とは、自分の個人的な価値観や基準を相手に押し付けたり、決めつけたり、一方的にレッテルを貼ったりせず、相手をあるがまま肯定し受け入れる態度のことをいいます。

「クライエントの家族に、ドゥーラが、クライエントを裁くためではなくて、助けるために本心からそこにいるのだとわかってもらう。」
「クライエントの個人的な状況についてジャッジしないこと。」
「謙虚で、ジャッジしないこと。」
「コミュニケーションはとても大事です。とりわけ、聴くこと、ジャッジしない態度、女性に仕えることを名誉に感じている態度はとても大事です。私はできるだけ自分のやり方を押し付けないように気をつけます。たとえば、私自身は無痛分娩は好きでないけれど、私のクライエントが無痛分娩をしたいなら尊重します。文化の違いも受けいれるようにしています。」

・誠実に、ありのままで、本心から支援すること
「親切にすること、気にかけること、愛すること、本心から支援すること」
「正直でいること」
「ありのままでいること。クライエントときずなをつくること、心をこめて仕事をすること。」
「なんとしても助けようとすること。クライエントは、ドゥーラが自分をどんなに気にかけているかを知らないうちは、ドゥーラがどんなにたくさんのことを知っているかなんて全く興味をもたないものだから。」
「境界を伝えておくこと。」

・継続的にかかわること
「家庭訪問」
「コミュニケーションを欠かさない。たくさん質問をする。いつでも電話をかけてもらえるようにして、質問に答えたり、妊娠について話したりできるようにする。」

・相手を理解すること。
「クライエントの願望やニーズについて理解すること」
「クライエントに自分自身について話してもらうこと。積極的に聴くこと。」
「一人ひとりをよく知ること。どんな背景があるのか理解すること。」
「バースプラン」


質問7.ドゥーラとして働く時に、医療スタッフと良い関係をつくるためのコツは何ですか?

・相手を理解し尊重すること
「意見を言う前に、相手の言い分に耳を傾けて、相手の背景や今までどんなことを経験してきたかということを理解すること。」
「事前に、相手の方針を知っておくこと。」
「敬意をもって接すること。」
「友好的な態度、許可を求めること、病院では来客者としてふるまうこと。」

・謙虚、誠実、低姿勢な態度
「とても礼儀正しくふるまうこと。」
「自分を見失わず正直でいること」
「中立な立場を貫くこと、相手の領域に立ち入らないこと、上手に報告をすること。」

・ドゥーラについて理解を得る
「率直に、自分が誰であるかや立場について知らせること。」
「自分たちがどうやって母親を手助けしているか分かってもらうこと。」
「目的やドゥーラの効果について直接会って説明すること。」
「クライエントと一緒に医師に会い、彼女から医師にドゥーラについて話すようエンパワーすること。」

「私は看護師としてのトレーニングも受けたので、それがとても役に立っていると思います。というのは、私は看護師とドゥーラの役割を理解しているし、どう異なるのかがわかったので。私はドゥーラとしてお産中の女性を支援する時には、看護師が責任を持ってやっていることをありがたく思えるし、尊重することができます。私は、自分がドゥーラとしての役割を踏み超えることがないようにとても気をつけて、自分が医療スタッフからどのように思われているかについてかなり慎重にしています。病院のお産の場は医師や看護師の職場であり縄張りであり、ドゥーラはそこを訪れている客なのだ、と理解しています。ドゥーラは自分のクライエントのために自己主張をするべきではありません。例えばもしお産の直後に看護師が忙しくて、すぐに母乳育児開始を手助けするのを忘れていたとしたら、私は母親のバースプランを覚えておいて、彼女から看護師に自分のバースプランについて言うよう思い出させてあげます。私から看護師に直接頼むことはしません。医療スタッフが産婦に質問した時も、ドゥーラは産婦の代わりに答えるべきではありません。」


質問8.燃え尽きずにドゥーラの仕事を続けるためのコツは何ですか?

・燃え尽きないコツはわからない
「コツなんて今でもわかりません!」(ドゥーラ経験15年以上)
「よくわからないです。」

・十分な休息
「元気回復のために、静養の時間をとること。ストレス発散法。」 「休暇、スパ、休憩!」

・仕事量の調整
「一度に多すぎる人数のクライエントを引き受けないこと。自分がさばききれない量を引き受けてはだめ。」
「予定日が近い妊婦を複数受け持たないこと。月に1~2件で、バックアップ(予備のドゥーラ)を用意してあれば大丈夫。」

・職場や家庭で自分を支えてくれる人を得ること
「同僚と良い関係を築くこと。」
「支援的な上司をもつこと。」
「家庭(パートナー、夫、ドゥーラ仲間)や職場で強力な支援を得ること。」
「医療スタッフとスムーズに働くことができれば、ドゥーラは快適になる。私はできるだけ助産師に喜んでもらえるように気をつけています。そうすれば相手もドゥーラに付いてほしいと思ってくれるから。」

・自分自身を優先すること
「お産の後には、体験を処理するために自分のための時間を確保すること。」

・宗教心
「神様」

・クライエントの選別
「なぜ私がドゥーラとして付き添っているのか理解していない女性に付き添うよりは、ドゥーラにいてほしいと思ってくれるクライエントを支援する方がやりがいを感じられるかもしれない。本当は、ドゥーラについて知識のない女性こそドゥーラのサポートが必要だということはわかっているのですが。自分がとても疲れ果てている時には、陣痛中の女性に対してうらみがましい気持ちを抱いてしまうことがあって、とても申し訳なく思います。」


ドゥーラから社会へのメッセージを集めました。


質問9.妊産婦や家族、医療スタッフ、ドゥーラ仲間、社会の人々に伝えたいメッセージがあれば教えてください。

<母親になる女性やその家族の方たちへ>

・ドゥーラを利用してください

「助けてと声をあげてください。」
「ドゥーラからもっとサポートを得ることができますよ。」
「ドゥーラが必要な皆さん、ドゥーラがいますよ。」
「ドゥーラは、妊婦のための応援団の一員です。」

・妊娠・出産・育児について知ってください
「医療介入なしでも、良いお産を体験することは可能です。」
「どんなに初めが大変だとしても、母乳育児をしましょう。」
「メディアを通じたお産のイメージは非現実的なことがよくあります。お産は医療化されています。お産をする女性は、お産の準備について勉強してほしいです。自分のお産を自分のものにして、疑問があれば声をあげてほしいです。」

<医療スタッフの方たちへ>
・ドゥーラを理解してください
ドゥーラを支援してください。」
「一緒に働いて、より良い結果を出しましょう。」
「ドゥーラはとても役に立つかもしれませんよ。」
「ドゥーラは母親とその家族を助けるためだけのためにそこにいるのです。ドゥーラは、母親のために意思決定したりはしません。お産の間、母親の味方をするためにそこにいるのです。」

・オープンに学んでください
「陣痛中の食事、自然なお産の結果、医療介入がお産の結果に与える影響、医療以外の支援方法、母乳育児の早期開始、出産が母子関係に良くも悪くも影響を与えること、人工乳が赤ちゃんに与える影響、医療介入の少ない自然出産について、最新の知識を得るようにしてください。」
「実践方法を変えるような新しいエビデンスに対して、オープンになってください。」
 「既成概念にとらわれずに物事を考えてみてください。というのは、多くの医師や看護師は、母親のためということを考慮せずに、ただ自分たちがやりたいことをしています。例えば、陣痛中の産婦がいて、順調な場合でも、産婦と赤ちゃんの陣痛を待つことなしに彼らは割り込んで来て、人工破膜をしたり、薬を増やしたり開始したりする。そのせいで、避けることができたかもしれない帝王切開になったり合併症が起きたりしてしまう。既成概念にとらわれずに考えて、母親と赤ちゃんのことを考えるなら、結果はきっと良くなるでしょう。母親の満足感は増すし、産後の回復は早くなるし、赤ちゃんはもっと効果的に母乳をもらえるようになるでしょう。」

<ドゥーラたちへ>
・ドゥーラの仕事をずっと続けましょう

「あなたが今している仕事を続けてください。」
「ドゥーラの仕事を続けましょう。多くの母親がドゥーラのサポートを必要としているから。」
「声を広げていきましょう。」
「燃え尽きないでください。」

・学び、考え続けましょう
「自然で介入の少ないお産について最新の教育を受け続けてください。自分の中で、正常でないお産を正常化しないでください。病院でドゥーラをしていると、場によっては、正常でないお産をたくさん目にします。たとえば子宮収縮剤で陣痛誘発や促進をおこなったり、遷延分娩(陣痛が長時間に及ぶこと)が許されないために吸引分娩やかんし分娩になったり、仰向けでお産をしたり。私たちはしばしば、母親のためを思って、正常でないお産の時でも正常だとみなしてしまう。でも、私たちは常に、何が正常で何がそうでないかを考え続けなくてはいけません。」

<社会の人々へ>
・妊娠・出産・育児の現状について関心をもち共に支えてください

「妊娠する前に、お産について学んで知ってください。ポジティブなお産の体験談をシェアしてください。」
「アメリカの帝王切開率は上昇しています。そのことについて社会の人々に考えてほしい。お産は力づけてくれる体験になりうるのです。」
「お産中や母乳育児中の母親をサポートしてください。」

・ドゥーラについて知ってください
「ドゥーラのサービスは、一人の女性の人生を変えているだけではなくて、社会全体を変えているのです。」
「ドゥーラがどんなことをするのか調べてみてください。ドゥーラは家族の次に良いもので、友人以上です。」
「ドゥーラたちはお産を体験する女性とその家族にとって価値ある資産です。ドゥーラに付き添ってほしいすべての母親はドゥーラに付き添われるべきです。」


質問10.一番心に残っているドゥーラとしての体験談を教えてください。

いくつかをご紹介します。
「特別に覚えている出産はありませんが、健康な赤ちゃんが生まれてくるお産を見ると、いつもドゥーラとしてのやりがいを感じます。」
「母乳育児ができるだろうかと心配している母親がいたのですが、お産の後に肌をぴったり合わせて赤ちゃんを抱いていた時、赤ちゃんがすぐにおっぱいを吸い始めたんです。」
他にも具体的なエピソードが集まり、質問5の<ドゥーラのやりがい>に通じるものがありました。


考察

・ドゥーラの体験と智恵 

興味深いことに、ドゥーラのタイプによってドゥーラ自身の背景に差異はありましたが、ドゥーラとしての体験や智恵は、タイプにかかわらず似通っていました。つまり、比較的裕福な自営業型ドゥーラを対象にした過去の研究と一致する部分が多くみられました。例えば、ドゥーラになった動機は、先にもドゥーラ研究室「ドゥーラになる女性のタイプ」でご紹介したMeltzer(2004)による分類がよくあてはまりました。妊娠・出産に直面する女性のニーズは文化や国を超えて共通する点が多くありますが、その女性を支援するドゥーラの体験や智恵も、社会的背景の差異を越えて共通する点が多いのかもしれません。

他にも、ドゥーラ研究室内の他の記事でも触れましたが、病院出産に付き添うドゥーラにとって、医療スタッフから理解されず支援を得られないことは共通の悩みでした。ドゥーラは黒子に徹したサポートを女性とその家族に提供しますが、その黒子ぶりは医療スタッフとの協力関係にも強く表れていました。さらに、今回の調査では、ドゥーラたちが黒子に徹しつつ、医療化されたお産や医療従事者をどのように観察・分析しているかも垣間見ることができました。ドゥーラは、妊産婦やその家族の個別的なニーズを理解し、味方で支援者であるという立場を貫きます。一方、医療スタッフは、専門の知識をもち、病院出産で何が起こっているかについてドゥーラよりも熟知している強みがありますが、忙しすぎて個別のニーズを把握する前にルチーンの処置・手順を優先し、医療組織の権威にとりこまれやすいというリスクを抱えています。しかし、その仕事を始めた動機ややりがいは、両者に共通するものもかなり多いのではないでしょうか。本研究では、限りなく一般女性に近いドゥーラと、限りなく専門職に近いドゥーラの、医療や医療者に対する考え方や態度も多少の幅があるようでした。共通の目標と体験をもつドゥーラたちの内部で相互理解をさらに深めることは、ひいてはドゥーラと医療者の協力関係を築くヒントになるかもしれないと思いました。本調査からも明らかになったことですが、一般に、ドゥーラは相手の背景に耳を傾け、調和を保ちながら関係を築くことに長けている女性がとても多いので、周産期ケアにおける連携役割モデルとして最適といえます。

・ドゥーラサポートの内容と養成トレーニングのデザイン

ドゥーラのモチベーション、志向性、サポートの方針は、自営業型、病院ベース、コミュニティベースの全タイプに共通していましたが、ドゥーラが提供する支援の内容は、ドゥーラのタイプによって若干異なる部分がありました。特に、社会的サポートの提供内容や料金の面で大きな差がありました。これは、ドゥーラが対象としているクライエントの社会的背景(経済力や家族のサポート力など)により、社会的サポートのニーズの種類やレベルが異なるためです。例えば、学校への復帰や衣食住の支援は、若年や貧困層のクライエントにニーズが高いのですが、成人や裕福なクライエントには必要ありません。また、教育的サポート(情報提供)の内容や方法も、クライエントの教育的背景によって異なると考えられます。したがって、日本でドゥーラサポートをデザインする際には、対象集団の社会的特徴に合わせて、その文化、経済レベル、地域特性に合ったドゥーラサポートの内容、―特に社会的・教育的サポートについて―、を特に柔軟に工夫する必要があります。

また、ドゥーラになるためのトレーニングにも幅がありました。主に自営業ドゥーラを対象とした、DONA Internationalのドゥーラ認定を得るための講習会は2~3日間と短期間ですが、コミュニティベース・ドゥーラの多くは、DONA Internationalのトレーニングに加え、より集中的で包括的なトレーニングを受けていました。これはコミュニティベース・ドゥーラのより長期で包括的な支援にも関連するようです。トレーニングの長さや内容は、対象集団のニーズやサポート内容、ドゥーラになる女性のニーズに合わせてデザインされています。

・ドゥーラの雇用条件

今回の調査に参加してくれたドゥーラの多くはコミュニティベース・ドゥーラでした。コミュニティベース・ドゥーラの対象は社会的に不利な立場にあるマイノリティ女性で、ドゥーラ自身もそのコミュニティ出身であることが多いのが特徴です。アメリカ国勢調査2006-2008 American Community Surveyによると、アメリカ全体の世帯あたり年収の中央値(Median income)は52,175ドル(469,5750円)なので、今回調査に参加してくれたドゥーラのほとんどは、国全体と比べて低所得でした。さらに、ドゥーラの仕事から得る収入は生活を支えるほどは多くないということは、自営業ドゥーラを対象にした過去の調査でも明らかになっていたことでした(Lanzら, 2004; 2005)。ドゥーラの仕事量と報酬の適切なバランスについて、とりわけ、もともとが低所得層で、報酬額の決定権のないコミュニティベース・ドゥーラや病院ベースのドゥーラのために、さらに研究が必要といえます。

また、ドゥーラサポートが組織化されるにつれて、ドゥーラ管理者のあり方が、ドゥーラが働く環境ややりがいに直接影響することがわかりました。また、社会福祉としてのドゥーラサポートのシステムをつくるには寄付や公共の助成金が必要になりますが、そのための手続きや書類作成がドゥーラの体験に影響していることも興味深いことでした。これらは自営業型ドゥーラの調査では見られにくかった問題でした。ドゥーラが本来のドゥーラ・ワークにエネルギーを注げるような雇用環境づくりについて、ドゥーラと、ドゥーラサポートのシステムを支える人々が共に検討する必要がありそうです。これは、ドゥーラという社会の資産を燃え尽きさせないためにもとても重要です。


おわりに

本調査では、主にコミュニティベース・ドゥーラについて、活動内容だけでなく、ドゥーラの声を集めました。過去の調査研究と比べて大きな矛盾はなく、さらにコミュニティベース・ドゥーラ特有の背景について理解を深めることができました。アメリカで活躍しているドゥーラの熱意が、国や文化を超えて、日本でドゥーラに関心をお持ちの方々に伝わり、日本におけるドゥーラサポートの検討にお役にたてることを願っております。

今回の調査は、回答してくださったドゥーラの人数が12名と少なかったことや、質的分析の結果や日本語訳をドゥーラたちと精密に確認しなかったことから、サンプリングや解釈の点で限界があったかもしれません。至らない点については、本プロジェクトの継続と、ドゥーラたちとの交流を深めることによって改善していきたいと思います。

ご意見、ご要望などありましたらドゥーラ研究室までお寄せください。


謝辞

日本の周産期ケアの向上のために、本アンケートに回答してくださった12名のドゥーラたち(Ms. Ponchitta-Perez Ridley, Ms. Marisa Pena-Alfaro, Ms. Bobbie Humphrey他)に心から感謝します。このプロジェクトを支援してくださったHealthConnect OneのMs. Rachel AbramsonとMs. RoiAnn Phillips、スタッフの皆様、Ms. Judith Thierry、"Birth, Breastfeeding and Beyond: Embracing the New Era" カンファレンス参加者の皆様、Child Research Netの小林登先生とスタッフの皆様に深く御礼申し上げます。

参考文献
・HealthConnect One. http://www.healthconnectone.org/
・Lantz, P.M., Low, L.K., Varkey, S., & Watson, R.L. (2005). Doulas as Childbirth Paraprofessionals: Results from a National Survey. Womens Health Issues, 15(3), 109-116.
・Lantz, P.M., Low, L.K., & Watson, R.L. (2004). Doulas' views on the rewards and challenges of their work. International Journal of Childbirth Education, 19(4), 31-34.
・Meltzer, B. (2004). Paid labor: Labor support doulas and the institutional control of birth. University of Pennsylvania. Dissertation in sociology.
・Morton C, H. (2002). Doula care : The (re)-emergence of woman-supported childbirth in the United States. 2002. University of California, Los Angeles. Dissertation in sociology.
・US Census (2009). 2006-2008 American Community Survey 3-Year Estimates. American Community Survey. Available, December 16, 2009, from http://factfinder.census.gov/servlet/STTable?_bm=y&-geo_id=01000US&-qr_name=ACS_2008_3YR_G00_S1901&-ds_name=ACS_2008_3YR_G00_

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