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ドゥーラ連載 追加

岸 利江子 (イリノイ大学シカゴ校看護学部博士課程)

2008年8月 8日掲載

要旨:

2008年6月に発表された、McGrathらによるドゥーラサポート無作為化臨床実験についての論文の紹介。この研究は夫婦が対象で、この研究のためにトレー二ングを受けたドゥーラによって支援を受け、帝王切開や無痛分娩といった医療介入率や、ドゥーラサポートへの満足度が調査された。これまでの研究では、ドゥーラサポートは社会的に不利な状況にある女性の場合に効果が高いと考えられてきたが、この研究では、裕福な女性を対象にした場合でも帝王切開率がほぼ半減するなど効果が大きいこと、夫(パートナー)のサポートがある場合でもドゥーラは夫婦にとって有益であること、夫が付き添う出産では夫婦のプライベートな時間や空間を尊重することが必須であることなど、新たに証明された。

2008年6月に、ドゥーラサポートの無作為化臨床実験についての論文が発表されました。ドゥーラ研究室連載の後、他にも新しい研究は出ていますが、この論文はこれまでの知見への影響が特に大きそうなので紹介します。

McGrath, S. K. & Kennell, J. H. (2008). A randomized controlled trial of continuous labor support for middle-class couples: effect on cesarean delivery rates. Birth, 35, 92-97.



研究方法

この実験研究はもともとオハイオ州の大学病院で15年以上前(1988-1992年)に行われたもので、これまでは情報が限られていたが、本論文で詳細に報告された。
平均年齢29歳、大半が白人で既婚、高卒以上(半数強が大学卒)の、約400名の健康で裕福な女性が、ドゥーラありとドゥーラなしの2グループに無作為に振り分けられた。90%以上の女性が夫(パートナー)に付き添われており、そうでない女性も3名を除く全員が家族や友人などに付き添われていた。
この研究のためにトレーニングされたドゥーラは、分娩入院の直後から、言葉で励ます、安心させる、教える、タッチ、アイコンタクト、そばにいて夫(パートナー)にどうしたらよいかを教えたりしながら、夫婦を対象に支援した。ドゥーラは、夫(パートナー)の役割をのっとることがないようとても気をつけていた。


結果:ドゥーラの効果


1. 医療介入の率

lab_03_20_1.jpg

2. ドゥーラサポートへの満足度
(女性と夫の両方それぞれを対象に、very positive, positive, negative, very negativeの4段階で評価を依頼、産後24時間と産後6週間の2度調査をおこなった。回収率は75.5%-87.9%)

産後24時間 very positive(93%)、positive(7%)
産後6週間  very positive(86%)、positive(13%)、negative(<1%)(注1)

(注1)産後6週間の時点でnegativeと答えた2名について
・ 1名(女性)は大変な難産の結果帝王切開になった女性だった。(彼女の夫はpositiveな回答だった。)
・ 1名(夫)は、「夫婦だけで過ごしたかった」という理由を挙げていた。(彼の妻(お産をした女性)はpositiveな回答だった。)


まとめ

これまで、ドゥーラのサポートは社会的に不利な状況にある女性(貧困、シングルマザー、若年など)の場合に効果が高く、裕福な女性にはそれほど著しい効果は見られないと考えられてきた(McGrath et al., 2008)(注2)。しかし、このMcGrathらの研究では、裕福な女性を対象にした場合でも帝王切開率がほぼ半減するなど効果が大きいことが確認された。 また、夫(パートナー)のサポートがある場合でもドゥーラは夫婦にとって有益であるということも再確認された。夫が付き添う出産では夫婦のプライベートな時間や空間を尊重することが必須であることも証明された。

全体的に裕福な日本人にはドゥーラサポートは有効でないのではないか?夫や家族の付き添いや立ち会いがあればドゥーラは必要ないのではないか?という点について考える上で本論文は興味深い。

(注2)裕福な女性を多く含んだ別の大規模な無作為化実験(Hodnett et al., 2002)で有意な結果が得られなかった理由について、(有意な結果が出なかったのは対象者が裕福な層だったからではなく)ドゥーラのサポートが本当は継続的ではなかったのでは?という論争がある(Campbell, Scott, Klaus, & Falk, 2007)。


Reference List

・Campbell, D., Scott, K. D., Klaus, M. H., & Falk, M. (2007). Female relatives or friends trained as labor doulas: outcomes at 6 to 8 weeks postpartum. Birth, 34, 220-227.
・Hodnett, E. D., Lowe, N. K., Hannah, M. E., Willan, A. R., Stevens, B., Weston, J. A. et al. (2002). Effectiveness of nurses as providers of birth labor support in North American hospitals: a randomized controlled trial. JAMA, 288, 1373-1381.
・McGrath, S. K. & Kennell, J. H. (2008). A randomized controlled trial of continuous labor support for middle-class couples: effect on cesarean delivery rates. Birth, 35, 92-97.



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