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【カナダ】 カナダ・オンタリオ州における子どもの幼少期について

マレーネ・リッチー (理学士、看護学修士、国際教育者)

2010年9月22日掲載

要旨:

受胎から6歳までは、脳の発達に重要な時期である。子どもの学習に親が介入することで、子どもの学習能力は増幅され、情緒的健康は促進される。カナダでは、幼児教育や育児の制度は州政府や地方政府が定めるが、資金援助や指導は連邦政府が行っている。オンタリオ州では、全ての教育委員会に、5歳児を対象とした半日幼稚園プログラムの提供が義務付けられており、その多くが、半日保育園プログラムを提供している。国から給付金を受給していない限り、あらゆる育児施設や保育園は有料である。オンタリオ州の幼稚園は、所定のカリキュラムを忠実に実行している。オンタリオ州の学校は、2010年から、全日制保育および全日制幼稚園の拠点となり、親業のクラスを提供する。また、年間50週間開放され、休校・休暇期間に有料活動を提供する。

Keywords;
カナダ, マレーネ・リッチー, 保育園, 子ども, 家族センター, 就学前教育, 幼少期, 幼稚園, 育児, 脳
English

「受胎から6歳までは、脳の発達や、その後の学習、行動、健康状態に関して、人生の他のいかなる時よりも重要な影響を与える時期である。」 (McCain and Mustard 7) 「親や保護者は、幼児の発達に影響を与える中心的役割を果たしている。子供の学習機会や情緒的健康は、親の介入によって増幅される。」(Cook, Keating and McColm 7) この複雑な社会において、カナダ人の親は子供に必要な保育や教育を受けさせられるよう、政府や民間機関からの援助を必要としている。カナダでは、教育や育児制度の制定は州政府や地方政府の管轄下に置かれているが、経済状況や優先順位が異なるため、子供が必要としていることを提供できる事業について、国全体ではかなりの差がある。だからと言って、連邦政府が資金援助や指導をしないわけではない。現在、カナダ連邦政府は、6歳以下の子ども1人に対し毎月100ドルを親に給付している。連邦政府はもっと育児に関わるべきだと思っている人は多い。「カナダ育児連盟(Canadian Child Care Federation)が2001年に行った世論調査では、90%のカナダ人が国の組織的な育児計画があるべきだということに賛成および強く賛成していることがわかった。さらに、86%が、カナダ人の子ども全てを対象にした質の良い保育を提供する公的育児制度があってもよいということに賛成および強く賛成していた。」 (Lauzière 2) 全ての州政府が、毎年、移転支出を受けており、あらゆる分野の子ども向け事業に充てている。その中には、読み書きや計算を教えたり、親業についてのアドバイスを提供したり、大人や子どもに対する様々な指導を行う、幼児発育・親業センター(Early Child Development and Parenting Centres)などの事業がある。

現在、オンタリオ州教育委員会には、5歳児に対して半日(2時間半)の幼稚園プログラムを提供することが義務づけられており、4歳児向けの保育園プログラムの提供は任意とされている。1998年には、72の教育委員会のうち68が半日保育園プログラムを提供した。園の教員は、大学を卒業し、オンタリオ州教師会から教員資格および教員免許を付与された者でなくてはならない。(Cooke, Keating and McColm 15)

育児や就学前教育は、公立および民間の機関や家族によって行われている。オンタリオ州では、0歳から6歳までの子ども全体の10%が1年生になる前に何らかの形で保育を受けている。親は、1週間に50ドルから150ドルを育児に費やし、87ドルから127ドルを保育園教育に費やしている。(1990) (Kropp and Hudson 83) その中の約5万5千人が、州や自治体から給付金を受けている低所得家庭の子どもである。その認可は、託児所法(Day Nurseries Act)に基づいて下りる。子どもが必要としていることに応じて、親には:家族または雇い入れのベビーシッター;州が定員を設定し健康状態や安全性を監視するが、教育内容や教育者の学歴を指定しない認定自宅保育施設;教育的な遊びを提供し、ほとんどの教員が4学期間の幼児教育コースの修了資格を持った認定保育施設;などの選択肢がある。提供するプログラムは保育園によって異なる。例えば、モンテッソーリ学校では発見的学習や独立心を養い、神学校では特定の宗教哲学に基づいた教育を行い、語学学校は第二外国語に重点を置く、などである。 (Kropp and Hodson 85, 86) オンタリオ州には、0歳から5歳までの子ども90万人に対し、規定に基づいた保育所が13万6千ヵ所しかない。 (Cooke, Keating and McColm 10)

McClainとMustardは、1999年の報告書『真の頭脳流出を食い止める:幼少期研究(Reversing the Real Brain Drain, Early Years Study)』のなかで、オンタリオ州は6歳から18歳までの子ども1人当たりに7,250ドル費やしている一方、6歳以下の子ども1人当たりには2,800ドルしか費やしていない、と嘆いている。その報告書は、保育の必要性を指摘している。「カナダにおける女性の社会参加は1951年の25%から今日の60%に増えている。(1995) 0歳から11歳までの子どもを持つ女性の67%が社会参加をしている。(62) 報告書は、 「生後11歳までのオンタリオ州の子どもの約4分の1が学習や行動に問題を抱えている。(67)」と結論づけている。

また、Cooke, Keating and McColmは、2004年の報告書『市の幼児教育と保育、オンタリオ州の新しい青写真(Early Learning and Care in the City, A New Blueprint for Ontario)』のなかで、破壊的行動は幼児教育者にとって最大の課題であると述べている。文字や単語の認識や数の理解といった学力の重視によって、自尊心や情緒的・社会的成熟を促す時間は、ほとんど取られていない。(7)

69ページから成る幼稚園カリキュラム(2006)をオンラインで見る事が出来る。 (http://www.edu.gov.on.ca) この冊子は、保育園児から小学校3年生までの子どもに対し、読み書きや計算を上達させることの重要性を強調している。「子どもの発達速度や発達のしかたは異なる。(中略) 幼稚園プログラムは、全ての子どもの身体的、社会的、情緒的、認知的、言語的発達に必要なことに取り組み、 (中略) 音楽、ドラマ、ゲーム、語学、友達との共同作業などの様々な分野における学習機会や自己表現、自己発見の機会を提供すべきである。」(1) 「選別・配置・審査委員会 (Identification, Placement, and Review Committee)において、特殊児童と認定された子どもには、個別指導計画(Individual Education Plan: IEP)を提供しなければならない。また、特殊児童と認定されない子どもに対しても、教育委員会は、特別教育プログラムおよび/またはそれに準ずる教育を提供する。」(25) 教員は、一人一人の子どもの上達状況や必要としていることについて、こまめに評価・診断・報告することが義務付けられている。

2009年6月15日, オンタリオ州首相ダルトン・マクギンティ(Dalton McGuinty)は、チャールズ・パスカル(Charles Pascal)からの提言により、「一連の幼児教育」に5億ドルの資金援助を発表した。 (http://www.ontario.ca/earlylearning) 2010年から、学校は4歳児・5歳児合同の全日制保育および全日制幼稚園教育の提供を始める。その管理は、幼稚園の教員が半日、幼児教育者が残りの半日行う。公立学校は、最良の就学前教育のための子どもと家族センター(Best Start Child and Family Centres)と呼ばれる拠点となり、胎教、親業、栄養指導、就学後プログラム、8歳までの子どもを対象にした柔軟な保育、などを提供する。学校は、午前7時30分から午後6時まで、年間50 週間開放され、休校・休暇期間には有料講座を提供する。この計画を喜んでいる教育者や親もいるが、全日制保育や全日制幼稚園教育が子どものためになるという証拠はあるのか、予算は十分なのか、学校はどのようにこのプログラムを運営するのか、などについて疑問視する者もいる。


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