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【子どものからだと健康】第6回 卵アレルギーの新事実!?

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このコーナーでは、小児科医であるCRN所長が子どものからだや健康に関する疑問・悩みにお答えしていきます。一覧はこちら


【質問】
1人目の子どもが卵アレルギーです。2人目(現在3ヶ月)の卵アレルギーを予防したいのですが、離乳食は卵を避けたほうがいいでしょうか。また卵を始める時期はどのくらい遅くしたほうがいいのでしょうか。

【回答】
卵はピーナッツなどとならんで、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを起こしやすい食物として有名です。アレルギー疾患には家族性があることが知られていますので、上のお子さんが卵アレルギーというお母さんの心配もごもっともです。

食物アレルギーの治療法の一つに、アレルギーを起こす食材を食事の内容から除去する方法がよく知られていますので、離乳食で卵を使わない方法はアレルギー予防の方法として、医師だけでなく一般の方々の間にもよく知られています。乳児期の腸は、まだ未熟でアレルギーを起こす物質(アレルゲン)をそのまま吸収してしまいますが、次第に腸が成熟するとそのようなことが起こりにくくなるという「理論」に基づいて、例えば1歳過ぎまでは卵は与えない、とする指導が現在でも行われています。

しかし、卵を与える時期を遅らせると、卵アレルギーになりにくいという科学的事実はないのです。世界中のアレルギーの研究者が、調査をしていますが、結果は同じなのです。

オーストラリアのアレルギー学会は、2005年に学会の声明を出し、さらに調査をする必要があるが、と慎重に前置きをしながら「生後4-6ヶ月以降に、アレルゲン(卵アレルギーの場合は卵)を除去した食事(離乳食)を与えても、(卵)アレルギーを予防することができるという事実はない」と言い切っています。

アメリカ小児科学会も、2008年にアレルギーの予防に関する学会声明を発表し、その中で、「4-6ヶ月以降アトピー性疾患の予防を目指してアレルギーを起こしやすい卵や魚、ピーナッツといった食品を離乳食から除く事が有効であるという事実はない」と言っています。

さらに驚く事は、2010年にはアメリカの権威あるアレルギー専門の学術雑誌に、2,589人の赤ちゃんの追跡調査によって、4-6ヶ月から茹でた卵を離乳食として食べた子どもは、卵を10-12ヶ月で初めて食べた子どもより、その後卵アレルギーになる率が3分の1になることが確かめられたという報告が発表されているのです。

読者の皆さんは驚かれるかもしれませんが、このような科学的に検証された事実もあるということを、ここにご紹介しました。


文献:

  1. The Australian Society of Clinical Immunology and Allergy position statement: summary of allergy prevention in children. Med J Aust. 2005 182: 464-7
  2. Effects of Early Nutritional Interventions on the Development of Atopic Disease in Infants and Children: The Role of Maternal Dietary Restriction, Breastfeeding, Timing of Introduction of Complementary Foods, and Hydrolyzed Formulas. Pediatrics, 2008, 121: 183-191
  3. Can early introduction of egg prevent egg allergy in infants? A population-based study. J Allergy Clin Immunol. 2010, 126:807-13



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筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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