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第1回「放射線と子ども~正しく恐れるための知恵を学ぶ~」研究会:フリーディスカッション④専門家への信頼を回復するために

2012年9月28日掲載
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専門家への信頼を回復するために

木都老 横浜で幼稚園の園長をやっています木都老(きどころ)です。今、食品のこともそうなのですが、放射能のことでお母さんたちは本当に疑心暗鬼になって、どうしようもない状態になっているのです。ついこの間、3月11日の追悼ということでお母さんたちが福島の避難者に向けて、ある企画をやってくれたのですが、その際にも、福島から逃げる人、福島にとどまる人、福島にもう一回帰ろうとする人、いろいろな考え方の人がいました。放射線被害の何が本当なのかということを求めるのもそうなのですが、しっかりとした人間の関係性を紡いでいかない限り、問題は解決しないと思うのです。だから、そこのところを中心に考えていって、なおかつ専門の方から、こういう数字だから大丈夫ですよというコメントが出てくるとすごく安心するのです。関係性が崩れ去ろうとしているときに、いろいろな数字が出たとしてもまるっきり信用してくれない。

1年経ってやっと落ち着いてきて、このくらいだったら平気ですよと政府が出しているのですが、その政府さえも信用できないみたいな風潮になっている。国が信用できなかったり、隣の人が信用できないという状態をつくり出しては、ちょっとまずいんじゃないかなという気がするので、なるべく専門の方によって、安心できるような流れをつくっていただきたいと思っています。


稲葉 今のお話、とてもよくわかりますし、専門家の末席にいる人間として責任を感じるのですが、政府と言っても、数字を出している人間たちは基本的に学者、研究者ですので、もう少し信用していただいてもいいのかなと思っています。もちろんいろいろな人間の意見が入って、数字が動くことはあります。しかし、基本的な数字の枠組みというのは、専門家、要するに僕らみたいな人間がつくるんですね。週刊誌が喜びそうな政治的な思惑もないですし、誰かの利益のためにとか、そういう発想でやっている人間はまずおりませんので、お帰りになりましたらお母様方に、そんなに腹黒そうなやつがやっているわけじゃなさそうだよ、とおっしゃってくだされば助かります。


木下 今日お話しされた先生たちもそうですが、どこかから何かをもらっているわけじゃありませんと、枕詞のように言わなくてはならない状況は非常に危険だと思いますし、おかしな状況だと思うんですね。今回のことなんて本当に専門家が結集して、多少の意見の対立があったって協力するぐらいの体制をつくらなければならないのに、マスコミが低線量に関して意見の対立に焦点を当てて、「何も明らかになっていない」などと煽り立てるのは、少し違っていると思うのです。専門家の知恵を集めて、淡々と事実を伝えながらやっていくということ以外、信頼を回復したり、もう一度正常化していくというのは難しいと思うんです。多分、福島のお母さん方も、いろいろな違う分野の専門家から淡々と同じような事実や理屈が出てきたときに初めて安心すると思うので、そういう環境をつくるための一助にこの研究会がなっていけばいいと思っています。最後に講師の先生方に締めの言葉をいただければと思います。


稲葉 こういう会に出させていただくといつも思うのですが、学問をやっている立場と現実の世界というのが大きく乖離しているなと思います。なかなか言い切るのが難しい微妙な問題でもありますし、私は割と社会への露出が少ないので助かっていますが、露出が多い人たちは激しい個人攻撃を受けていまして、すごいストレスになっている。それを見ていてこちらまでトーンが下がってくるんです。

今、木下さんのおっしゃっていたことがすごく大事だと思ったのは、結局、みんなが同じことを言うと、それが世論になっていくんだろうと思うんです。少なくとも福島に関して、大きな健康被害は出ないだろうということを言い続けないといけないと思うんですね。去年の秋にもありましたね。「福島で白血病が増えていると日本医師会が言っている」という怪情報が流れて、さすがにマスコミが否定しにかかりました。ところが、もとはネット上のつまらないニセ情報だったものが、かえってマスコミに乗っかっちゃった感じで、やっぱり危ないのかというような噂話に広がっていきました。それが私のところまで及んで、「今、福島では何人が白血病になっていて、それは去年より増えたのか減ったのか」と聞いてくる人がいるのです。そんな数字は誰も持っていないわけです。「何で数字を持っていないんだ、怠慢だ。それとも隠しているのか。」とか言われても、困ってしまう。

本当に一人ひとりの力は小さいですが、そういうことを専門家として言い続けることが重要だろうと思っております。こういう機会をいただきまして、今日お話しできたことは大変幸いでした。大した力はありませんが、今後とも協力させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。


眞鍋 放射線の専門家じゃない者が、いいかげんな話をして恐縮です。今日は稲葉先生の話をうかがって、自分が勉強させていただいて、今まで自分が言っていたことはそうおかしくなかったんだなと安心しました。

稲葉先生がちょっとおっしゃったように、最近、ネットの情報というのが結構怖い。安全の部分は科学だと思うのですが、安心の部分というのがなかなか難しい。ここをいかに今後きちんとやっていくかということを、逆に私たちもいろいろ教えていただけたらと思います。今日はどうもありがとうございました。

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【第1回「放射線と子ども~正しく恐れるための知恵を学ぶ~」研究会】
1.研究会の4つの方針
2.講演1「放射線による健康被害のとらえ方」(稲葉 俊哉氏)①  
3.講演2「放射性物質の乳製品への影響」(眞鍋 昇氏)①  
4.コメンテーターからの発言
5.フリーディスカッション①   
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