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ポスター発表:保育者は子どもにとっての「困難」をどう捉え、どのような実践を通してレジリエンスを育んでいるか ~アジア8か国におけるインタビュー調査結果より~(PECERA Annual Conference 2024 Tokyo)

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研究の背景

先行研究より、コロナ禍が子どものメンタルヘルスに影響を及ぼしていることが明らかになっていた。そこで私たちは、2021年にアジア8か国の母親を対象としたアンケート調査を行い、子どものレジリエンス(困難に適応して立ち直り回復する力)が彼らのウェルビーイングに関連することを明らかにした(小川ら、2024)。その研究の中で、レジリエンスをどう育むのかについて、保育の実践を検討することを次の課題として挙げた。

研究目的とリサーチ・クエスチョン

本研究の目的は、レジリエンスを育むどのような実践が園で行われているかについて、アジア8か国全体での傾向と国別の傾向を、保育者を対象としたインタビュー調査を通して概観することである。その前提として、幼児にとっての困難や逆境を保育者がどう捉えているかについても確認する。

調査方法

インタビューはアジア8か国の4~6歳の子どもを保育する園の保育者(各国10名前後)を対象に、2023年12月~2024年2月に行った。インタビューではすべての国に共通の調査項目を用い、半構造化面接をオンラインで実施した。

本研究では、各国ごとにまとめたケースレポートを用いて、「4~6歳の子どもにとっての困難や逆境」「レジリエンスの用語の認知」および「レジリエンスの概念を育む保育アプローチ・実践や活動の場面・育成プログラムや教材など」の調査項目に対する各保育者の回答を抽出した。抽出した回答を国別の一覧表にして整理し、比較検討を行った。

調査結果と示唆

本発表では、まず保育者が幼児にとっての困難や逆境をどのように捉えているかを検討した。この分析を 通して、「心の状態」に関する困難が突出して多い国(マレーシア、フィリピン)、「自尊感情・自立」に関する困難が突出して多い国(日本、台湾)、そして困難が複数の項目にまたがっている国 (タイ、シンガポール、インドネシア、中国)という、ある程度の傾向を捉えることができた。

次に、保育者のレジリエンスに関する実践について8か国の比較分析を行った結果、レジリエンスの概念を考慮した実践が100%行われていた国は、日本、マレーシア、タイ、シンガポールであった。このうち、マレーシア、シンガポールは用語の認知も100%、タイも81.8%と高かったが、日本は用語の認知が54.5%にとどまった。

このように、子どもの困難や逆境のとらえ方、およびそれらを乗り越える力であるレジリエンスを育む保育実践には、国による共通性と違いがある。本発表では、8か国共通で見られた項目と、各国の特徴的な項目を取り上げ、その後日本の結果に焦点化して議論する。


※このポスターは、2024年8月2日~4日に東京で開催されたPECERA(環太平洋乳幼児教育学会)Annual Conference 2024 Tokyoで発表されました。
筆者プロフィール
Junko_Ogawa.jpg 小川 淳子(おがわ・じゅんこ)

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)研究員、ベネッセ教育総合研究所研究員。
アジア諸国の研究者からなるCRNA(Child Research Network Asia)を組織。アジア8か国の研究者と共に、子どもへのレジリエンスの育成をテーマとした国際共同研究を推進している。

Nozaki_Yuka.jpg 野﨑 友花(のざき・ゆか)

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)研究員、ベネッセ教育総合研究所研究員。
専門は教育社会学、学校臨床学。
これまでに関わった主な研究:「第6回幼児の生活アンケート(2022)」、「第4回幼児教育・保育についての基本調査(2023)」等。

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