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ポスター発表:コロナ禍での子どものウェルビーイングを予測する、母親の「応答的な養育態度」と「子育て肯定感」に関連する要因:アジア8か国データを用いた検討(PECERA(環太平洋乳幼児教育学会)第23回大会)

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a. 研究の意図

先行研究より、コロナ禍が子どものメンタルヘルスに影響を及ぼしていることが明らかになっている。コロナ禍のような困難や変化の中において、子どものウェルビーイングをどう実現するか。本研究では、以前に実施した分析を通して子どものウェルビーイングを予測することが分かった、母親の「応答的な養育態度」と「子育て肯定感」に着目し、これらの母親変数と関連する要因を検討する。

b. 研究目的とリサーチ・クエスチョン

母親の「応答的な養育態度」および「子育て肯定感」を説明する要因は何かについて、アジア8か国全体での傾向と国別の傾向を概観する。

c. 調査方法(対象、尺度、データ分析について)

共通の調査項目を用いて、アジア8か国の5歳児をもつ母親計1,973名を対象に、2021年8月~11月にアンケート調査を実施した。 本研究の従属変数として、母親の養育態度に関する10個の質問項目につき、最尤法、プロマックス回転を用いた因子分析を行い、「応答的な養育態度」と「懲罰的な養育態度(逆転)」の2因子が抽出された。また母親の意識に関する6つの単項目のうち、先行研究でアジア各国にて特に子どものウェルビーイングとの関連が見られた「子育て肯定感」と「他の子どもとの優劣比較(逆転)」を抽出した。

説明要因(独立変数)は先行研究を参考に、母親をサポートする変数にあたる「父親要因(夫の妻サポート/夫の子育て)」「園のサポート」「家事/育児分担比率(父親に限定しない家族内サポート要因)」を設定し、デモグラフィック変数として「母親の学歴」と「世帯年収」を加えた。

8か国の全体データと国別データを用いて、SPSS Statistics24にて重回帰分析を実施した。

d. 調査結果、結論や示唆(継続中の研究の場合:期待される成果や貢献)
調査結果

分析の結果、独立変数の説明率が高かった、母親の「応答的な養育態度」「子育て肯定感」を従属変数としたモデルに焦点化して発表する。

  1. 母親の「応答的な養育態度」「子育て肯定感」のいずれに対しても、「園のサポート」がもっとも 強く関連していた。8か国の全体データ分析結果では従属変数をもっとも強く説明する変数であり、 国別データ分析においてはもっとも多くの国で有意となった変数であった。
  2. 8か国の全体データ分析結果を見ると、「母親の育児分担比率」はいずれの従属変数に対しても正の 関連を示したが、「母親の家事分担比率」は「子育て肯定感」に対して負の関連を示した。
  3. 国別分析結果からは、国によって有意の変数が異なっていることが見て取れ、同じアジアといって も国によって状況が異なることが明らかになった。
結論と示唆

本研究において、母親の「応答的な養育態度」「子育て肯定感」のいずれに対しても、「園のサポート」がもっとも強く関連していたことは特筆すべきである。「園のサポート」は、保育者の子どもに対する関わり方と母親に対するサポートの両方を足しあげた合成変数であるが、コロナ禍の中において、保育者の子どもとその母への関わり方がいかに重要かを示す結果となった。全体データにおいて、母親の家事分担比率が高くなるほど子育て肯定感が低くなる結果が出ているため、周囲の支援者は家事の面から母親をサポートできると良いのではないか。ただし国別分析結果から、同じアジアといっても結果を一概には語れないことが明らかになっており、考察を深めるためには各国の社会文化的背景に基づいた解釈が必要であることが示唆された。


※このポスターは、2023年7月7日~9日にインドネシア・バリ島で開催されたPECERA(環太平洋乳幼児教育学会)第23回大会で発表されました。
筆者プロフィール
Junko_Ogawa.jpg 小川 淳子(おがわ・じゅんこ)

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)研究員、ベネッセ教育総合研究所研究員。
2013年よりベネッセ教育総合研究所に所属し、CRNを運営。近年はアジア諸国の研究者からなるCRNA(Child Research Network Asia)を組織し、アジア8か国の研究者との国際共同研究を推進している。

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