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コロナ禍での子どものウェルビーイングとレジリエンス【後編】―カギは"保護者の養育態度"と"園でのサポート"

前編のふり返り

前編では、CRNで日本を含むアジア8か国の5歳の子どもをもつ母親を対象に「子どもの生活に関するアジア8か国調査2021」を実施した背景に始まり、「ウェルビーイング(心身の良好な状態、幸福)」「レジリエンス(困難な状況に適応して回復する力)」といった調査の中核となる用語についてご紹介しました。

そのうえで、調査結果から、コロナ禍において8か国共通で子どものウェルビーイングにレジリエンスが関連していることが明らかになったことをお伝えしました。コロナ禍のような困難な状況で子どものウェルビーイングを実現するには、レジリエンスを育むことが重要な要素のひとつであることは間違いなさそうです。

それでは、レジリエンスの育成につながるのは、どのような要因なのでしょうか。後編では、主に日本5歳のデータに絞り、分析結果をご紹介していきます。

*参加したアジア8か国:日本、中国、フィリピン、マレーシア、台湾、インドネシア、シンガポール、タイ

コロナ禍の日本で子どものレジリエンスの育成に関連する要因

本調査では、先行研究やアジア8か国の共同研究者の課題意識などを参考に、母親の養育態度や意識、周囲の子育てリソースの状況(配偶者のサポート、家事育児分担)、園のサポート、デジタルメディアの子育て活用のあり方、子どもの日常生活や遊びなどが子どものレジリエンスの育成に関連するのではないかと仮説を立てて、調査項目を設定しました。それらの状況について問う、全部で150以上の項目からなる質問紙を設計し、母親から回答を収集しました。その結果、日本では①母親の応答的な養育態度、②母親の子育て肯定感、③園(保育者)のサポート、④デジタルメディア使用時の母親のサポート、⑤遊ぶことができる友達の数が、子どものレジリエンスに関連していることが明らかになりました(図1)。

■図1【日本】子どものレジリエンスに関連する5項目
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続いて上記①~⑤の各項目を高群・中群・低群に分けて群ごとに子どものレジリエンス得点を比較したところ、高群の方がレジリエンス得点が高いという結果が得られました(図2~6)。

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さらに、合成変数である①母親の応答的な養育態度、③園(保育者)のサポート、④デジタルメディア使用時の母親のサポートにつき、それぞれの変数を構成する単項目について詳細分析を行ったところ、特に下記の項目が子どものレジリエンスに関連していることが分かりました。

—①母親の応答的な養育態度の構成項目のうち、子どものレジリエンス育成に特に効果的な項目
  • 温かく優しい声で話しかける
  • スキンシップをとる
  • 子どもが求めることに応える
  • やりたがることに取り組める環境を用意する
—③園(保育者)のサポートの構成項目のうち、子どものレジリエンス育成に特に効果的な項目
  • 保育者/先生は子どものことを気にかけてくれている
  • 子育てについて相談できる保育者/先生がいる
—④デジタルメディア使用時の母親のサポートの構成項目のうち、子どものレジリエンス育成に特に効果的な項目
  • 子どもが使用・視聴している様子を気にかける
  • 子どもが難しいことに取り組めるよう支援する
  • 使用・視聴時間を決めるよう声をかける
  • 子どもが使用・視聴するものを親が選ぶ
まとめと考察

今回の調査では、コロナ禍での子どものウェルビーイングにレジリエンスが関連していることが明らかになりました。この結果は、対象としたアジア8か国のすべてで共通していました。コロナ禍のような困難な状況で子どものウェルビーイングを実現するには、レジリエンスを育むことが重要だと言えます。

そのレジリエンスの向上につながるのはどのような要因なのか分析したところ、日本では、①母親の応答的な養育態度、②母親の子育て肯定感、③園(保育者)のサポート、④デジタルメディア使用時の母親のサポート、⑤遊べる友達の数、が子どものレジリエンスに関連していました。子どものレジリエンスを育むには、子どもにとってもっとも身近な存在である「家庭(保護者)」と「園(保育者)」の両輪でのサポートが重要であると言えそうです。

また、これらが示す具体的な内容について、日本のデータを見たところ、家庭(保護者)の側面からは、母親の温かな働きかけや環境設定などの支援行動に加えて、親子の間で一定のルールを設けることが普段から子どもの適応力を高め、子どものレジリエンスの向上につながる可能性が示唆されました。

さらに、園(保育者)のサポートについても日本のデータを用いて分析した結果を見ると、保育者が一人ひとりの子どもの様子に目を配ることだけでなく、保護者の悩みに寄り添うことの重要性も浮かび上がりました。園(保育者)がサポートすることで保護者は安心して子どもに接することができ、このことが子どものレジリエンスの向上につながるのではないかと考えられます。

コロナ禍は3年目に入りましたが、子どもたち一人ひとりの健やかな成長発達のためには、身近にいる保護者や園(保育者)のサポートがカギとなります。本調査の結果が、保護者のみなさまや幼児教育・保育にかかわるみなさまに少しでも役立つことを願っています。



参考文献

筆者プロフィール
Junko_Ogawa.jpg 小川 淳子(CRN研究員)

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)研究員、ベネッセ教育総合研究所研究員。
2004年(株)ベネッセコーポレーション入社。2013年よりベネッセ教育総合研究所に所属し、CRNを運営。近年はアジア諸国の研究者からなるCRNA(Child Research Network Asia)を組織し、アジア8か国の研究者との国際共同研究を推進している。
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