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PCR検査とは?

榊原 洋一(CRN所長、お茶の水女子大学名誉教授、
ベネッセ教育総合研究所常任顧問)

2020年4月 3日掲載
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新型コロナウイルス感染症の報道でよく出てくるPCR検査ですが、無症状の人も受けたほうが良いという意見がある一方で、専門家の医師の間ではその必要がないという人もいます。

こうした意見の相違は、多くの皆さんの不安をあおることにもつながっています。一人一人が正しい知識をもつことは、新型コロナウイルス感染症と闘う上で、最も重要なことですので、ここでPCR検査の意味について分かりやすく説明します。

PCRはPolymerase Chain Reactionの略語で、意味はポリメラーゼ連鎖反応です。ポリメラーゼは私たちの細胞の中で遺伝子(DNAあるいはRNA)が増幅するときに働く酵素の名前です。ウイルスはとても小さいので、そのままでは通常の検査法をすり抜けてしまいますが、PCRでは特定のウイルスの遺伝子の一部を大量に複製させることによって、ウイルスの存在を検知することができるのです。

新型コロナウイルスの遺伝子はDNAではなくRNAという遺伝子ですが、口や鼻の粘液を綿棒で擦りとって、PCR法で検査をすることによって、ウイルスの感染の有無が明らかにできます。

PCR検査で陽性であれば、新型コロナウイルスに感染していることになります。発熱や咳あるいは肺炎の症状があれば、すぐに入院ということになりますが、全く症状がない人でも、検査を受けると陽性反応が出ることがあります。こういうケースは、ウイルスには感染しているけれど症状がでない、いわゆる無症状感染(不顕性感染)です。感染しているのに症状が出ない人は、そのまま全く症状が出ないままで治ってしまう人もいれば、少し時間が立つと症状がでてくる人に分けられます。陽性反応が出た人は、現在症状がある人も症状がない人も、ウイルスを他人にうつす可能性がありますから、入院あるいは自宅待機することによって、感染の広がりを抑えることができます。PCR検査を症状のない人も含めてもっと大勢の人にやるべきだ、という意見はこうした考えに基づいています。

ここまで聞くと、多くの方は「すぐにやるべきだ。どうして反対する専門家がいるの?」と思われるでしょう。
しかし実際は、大勢の症状のない人にPCR検査を行って、陽性の人を見つけても、それで終わりではありません。上記のように、入院してもらうことになります。無症状で陽性の人の割合は分かりませんが、検査数が増えれば大勢の無症状感染の人で病院のベッドがいっぱいになってしまう可能性があります。もうすでに首都圏の病院では、中等症や重症の患者さんで病床が埋まりつつある今、症状のない人でベッドが埋まってしまえば、医療崩壊を加速させてしまうことになります。ですから、無症状の人に検査対象を広げる前に、無症状陽性者の入る施設を準備しなくてはならないのです。残念ながら、まだその準備ができていないのが現状なのです。無症状陽性者は、自宅で自己隔離という考え方もありますが、家庭内で感染を広げてしまう恐れがあり、それは現実的ではありません。

さらにPCRの検査は医療関係者が行う仕事であり、口や鼻の粘膜を綿棒で擦るという検体採取の際に、咳やくしゃみが誘発されやすく、きちんと防護策をとっても、そこで医療従事者に感染が広がる危険性もあります。今後、患者数が増えることが予想されますが、その過程で医療施設や医療関係者の数が不足することによる医療崩壊を起こさないためにも、医療従事者の感染は避けたいところです。ドイツでは、ドライブスルーなどでPCR検査を広く行っております。そのドイツでは医療崩壊にはつながっていないというものの、国民1,000人に対する医師の人数が4人のドイツと、2人の日本を単純比較するのは危険です。

今日本で行うべきことは、まず軽症者や無症状の陽性者が一時的に宿泊できる十分な数の施設を、急いで確保することです。そうした準備が整ってから、医師や看護師などの医療従事者、老人や病院の介護者などから、順次無症状の人にもPCR検査を広げて行くのが良いのではないかと思います。

筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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