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都市災害の中の障害児たち

宮本 信也(筑波大学心身障害学系助教授)

2011年5月20日掲載

要旨:

「子ども」「老人」「障害を持つ人」などをいわゆる「災害弱者」とすれば、障害を持つ子どもたちは二重の意味で災害弱者となる。被災地の特殊学級で聞き取り調査を行い、震災後の障害児の状況と、今後の援助の可能性を示す。

季刊子ども学「子どもたちの震災復興」について(1996)

はじめに

「災害弱者」という表現を耳にすることがある。今回の阪神大震災は、この表現の意味するところをまざまざと見せつけられた災害であった。災害弱者と呼ばれる立場の人たちの代表的なものは、高齢者、子ども、障害を持つ人たちである。これらの立場にある人たちは災害に際して、何らかの援助がなければ、被害を大きく受けてしまう可能性が高い人たちと言える。

それでは、障害を持つ子どもたち、つまり、二重の意味で災害弱者と言える障害児たちは、あの阪神大震災のとき、どのような状況にあったのであろうか。そして、あのような災害のとき、障害を持つ子どもたちには、どのような援助が必要とされるのであろうか。私たちが知り得た範囲ではあるが、その障害児たちの姿を通して考えていくことにする。

障害を持つ子どもたちの状況

以下に紹介する事柄のほとんどは、神戸大学医学部小児科の高田哲先生たちが調査された結果と、私が被災地の特殊学校で行った聞き取り調査結果(1校のみ文書連絡)をもとにしている。

高田先生たちは、神戸市内の通園施設と養護学校に通っている子どもたちの保護者の方々にアンケート形式で調査をされた。調査は、震災後約1か月半(平成7年3月上旬)に行われている。この調査では488人、調査対象の約70%近い方から回答が寄せられており、全体の傾向がかなりよく把握されているものと思われる。

聞き取り調査は、学校への直接訪問7校、電話での調査2校、文書によるもの1校の計10校の特殊学校(養護学校4校・聾学校3校・盲学校3校)で、私自身が行わせていただいた。

(1) 身体面の問題

高田先生たちの報道によると、488人の子どもたちの中で死亡した子どもは5人で、すべて肢体不自由児、外傷を受けたのは18人とのことである。その他、嘔吐やけいれん回数の増加などの身体面の変化が約3分の1の子どもたちに認められている。

私が聞いたところでも、震災後の学校での課外活動で宿泊の際、発熱した子が例年の3倍おり、行事後の欠席も多かったとか、学校再開後の運動で捻挫などのケガをする子どもが増えたなどのこともあった。

ある養護学校では、生徒の半数近くに地震後1か月時点で体重増加不良が見られたとのことであった。ただし、体重増加を示した子どもたちも全体では少なくない。また、ある聾学校では、震災1か月後から聴力低下が進行した子どももいた。

死亡した5人のうち、震災で直接亡くなられたのは3人で、残りの1人は震災翌日の突然死、後の1人は避難所での死亡とのことである。肢体不自由児とは、麻痺や筋肉の病気などのため、からだの自由がきかない子どもたちのことである。からだが不自由なことが、死亡と何か関係があったのであろうか。人数が少ないため、推測することしかできないが、あるいは、とっさの避難行動をとりにくいなどのことがあったのかもしれない。

死亡に関連してもう一つ重要なことがある。震災後に死亡した子どもが2人いるということである。私も、それとは別に、精神遅滞の子どもで疎開先の病院で肺炎で亡くなった子どもがいたということを聞いている。マスコミでは避難所や仮設住宅で亡くなられた高齢の方々の報道が行われているが、障害を持つ子どもたちも身体的余裕が少なく、災害後のストレスが強い状況では、日常なら大したことのない病気が重篤になりやすいものと思われる。せっかくあの大きな災害から助かったのに、ご家族の方々も残念でならないことであろう。このことは、障害を持つ子どもたちでは、被災後の身体的健康管理に普段以上に気をつけなければいけないことを、私たちに強く教えてくれるものと思われる。

その他、指摘されたことに、日常使用している薬の名前や量がわからずに困ったということがある。避難生活の中で、薬がなくなっていっても、名前も量もわからなければ、近くの病院や援助医療団からもらうこともできない。幸い、今回はいろいろな通信網を使って、病院間で情報交換しながらなんとかなった方が多かったようだが、それでも、だいぶ苦労されたようであった。

(2) 心理・行動面の問題

今回の震災では、子どもたちの心の問題に早期から関心が集まった。実際、ほとんどの子どもたちに、震災後しばらくの間、不眠や恐怖感や落ち着きのなさなどが見られたと言われている。しかし、そのほとんどは、あれほどの大きな災害に遭った人ならば、誰にでも見られるような一時的な反応にすぎないものであった。特殊学校の聞き取り調査でも、多くの学校で同様の行動面の変化を認めている。高田先生たちの調査でも、障害を持つ子どもたちの約3分の1に精神面の変化が見られている。この頻度自体は、おそらく障害を持たない子どもたちと比べても、とくに多いということはないと思われる。

しかしながら、行動面の問題の内容(表1)を見ると、健常児ではあまり見られないものが多いことに気付く。表1は、学校現場で先生方が気づかれた問題である。精神薄弱養護学校の子どもたちで、行動面の問題が多彩であることが注目される。高田先生たちも、精神遅滞児で興奮やパニックが高頻度であったと報告されている。

表1 学校生活で見られた子どもの心理・行動面の問題
 養護学校
  精神薄弱






  肢体不自由

 興奮・パニック・奇声・自傷
 多動・集中力低下
 自発性/活動性の低下・徘徊
 幻覚・妄想着想様言動
 排泄障害・摂食量低下・過食
 恐怖感情・落ち着かない

 依頼行動増加
 聾学校  多動・失声
 恐怖感情・落ち着かない
 盲学校  音に対する過敏反応・退行
 自傷(重複障害児)
 恐怖感情・落ち着かない

精神薄弱養護学校全体で見ると、精神遅滞だけの子どもよりも、自閉症の子どもに問題行動が多く、また、種類も多彩に認められる傾向があるようである。自閉症児では、もともとパニックを起こしやすいということがあり、災害後のパニック行動もそうしたことが関係しているものと思われる。その他、震災後、欲動の減退あるいは制止が強く、動作をしている途中で行動が止まってしまう、という状態が見られるようになってしまった自閉症児もいた。この子は廊下を歩いていても、歩いている姿勢の途中でフッと止まると、そのままの格好でじっとしていて、しばらくしてまた歩き出す、という感じであった。もっとも、精神遅滞が中心の子どもでも、幻覚や妄想様の症状を示した子どもたちでは、もともと心理的な問題を持っている子どもや家庭内で子どもを支える体制が十分でない場合が多いと言われている。同じことは障害を持っている子どもたちに対しても当てはまる場合が少なくなかった。

肢体不自由児では、自分でできるはずの行動を人にやってもらいたがることが増えた、という点も指摘された。肢体不自由児は、運動の障害が大きいため、日常生活での介助がどうしても多くなってしまう。避難所生活では、ボランティアや他の人手が多く、こうした状態に対してつい介助が多くなってしまっていたことも、大きく影響したようである。難聴児の失声や盲児の音に対する過敏反応(注意の雑音や人の声に耳をふさいでしまう)なども含め、それぞれの障害の特徴に合った形で出現する心理・行動面の問題があると言うことができると思われた。

問題行動への対応は、医療機関などの専門機関で対応してもらった子どもは少なく、多くは、家庭や学校での日常的関わりの中で自然に改善していた。だいたい1、2週間から1か月半程度の経過で軽快・消失しているものが多かったが、症状の強いものでは2か月以上持続しているものもあった。

(3) 生活上の問題

表2 障害を持つ子どもに直接関連して保護者が困った点と要望
 精神遅滞児の保護者(275名)  肢体不自由児の保護者(191名)
 地震直後に困ったこと
  子どもの介護 9%
  子どもの異常興奮・パニック 8%
 地震直後に困ったこと
  定期薬・医療器材 10%
  医療機関への連絡 7%
 地震直後に欲しかった援助
  障害児家族のための避難場所 7%
  介護サービス 6%
 地震直後に欲しかった援助
  医療機関についての情報 8%
  紙オムツなどの日用品 7%
(高田ほか、1995を改変)

表2は、高田先生たちが調査された結果である。子どもたちに関して困った点を回答された人の割合が少ないように見えるが、これは、困った点を全体的に調査されているので、いわゆるライフラインや情報の確保の問題が第一に挙げられており、その分、子どもたちに関する回答の割合が相対的に低くなっているためである。障害の種類が異なると、生活上で要望される内容も異なることが示されている。障害を持つ子どもを世話しながら避難生活を送る保護者の関心の大きなものは、精神遅滞児の場合には行動面の問題への対処であり、肢体不自由児の場合は身体的医療問題への対処と言うことができそうである。介護サービスが要求された背景には、子どもたちから目が離せないために、水汲みにも出られないという現実があった。ある学校では、先生方が家庭訪問をしながら、水を配って歩いたところもあるほどであった。

表3 学校教師の目から見た子どもたちの問題点
 学校生活で困った点
  すべての特殊学校




  養護学校
   精神薄弱


   肢体不自由

  授業中、騒々しい
  落ち着かない
  次の行動に移れない
  生活リズムの乱れ


  運動時のケガ
  給食を食べない

  給食を食べない
  依頼行動増加
 避難所で困った点   興奮・パニックのため避難所生活困難
  肢体不自由児が使用できるトイレの不足
  入浴介助が必要な子の入浴時の性別

学校の先生方から見た子どもの問題点を示したのが表3である。学校生活は、早いところでは震災の2週間後くらいから、多くは1か月から1か月半後くらいから再開されていた。再開後、どの学校の先生方も感じられたのは、何か騒々しい、落ち着かない、毎日の日課のリズムに乗った行動がとれない、などのことであった。これらに対して、先生方は、自宅待機や避難所などの避難生活の中で、一日の生活リズムが崩れてしまったことが大きく影響している、と考えておられるようであった。その他、からだを動かすことの少ない避難生活の影響からか、それまでと同じ運動をさせても、続かなかったり捻挫などのけがをする子どもが多く、体力や機敏性が低下したためと判断されていた。

偏食が激しい精神遅滞児・自閉症児や刻み食しか食べられないような肢体不自由児は、用意されたパンと牛乳だけの簡易給食では食事をとれず、それが給食を食べない(食べられない)という問題点の指摘となっていた。

避難所生活を送る子どもたちに関しては、行動面の問題のために避難所生活を続けることが困難なことが指摘された。人の大勢いる避難所で子どもが奇声を発しウロウロ歩き回るため、周囲の人への気兼ねもあり、壊れかけた家に戻ったり、車の中で夜を明かしたという家族もおられた。肢体不自由児では、車椅子で使えるトイレがなく、避難所を転々としたという方もおられ、トイレの問題が無視できないと思われた。  入浴の問題では、介助が必要な子どもでも年長の場合、たとえば、男の子を女性用の風呂に入れることができず、困ったということもあった。ただし、この問題は他の保護者の方に代わって介助してもらうことで、なんとか対処できたようであった。

障害を持つ子どもたちへの対応状況

(1) 学校での対応

表4 学校の対応の工夫
 自宅待機期間
  訪問教育(家庭訪問)
  分教室での出張授業
  FAXによる家庭学習課題

 学校再開後
  安全通学ルートの選定
  登下校の介助
  体育館・教室のやりくり(避難所となっている学校)
  食事形態の工夫(肢体不自由)
  避難訓練

各特殊学校で行われた工夫をまとめたのが表4である。学校が再開されるまでの間も、先生方は、家庭訪問での指導(散歩をしたり、からだを動かすなどの運動面が主)や分教室での出張授業をやっておられた。

学校再開に際しては、通学路の安全確保がまず考慮されたことであった。特殊学校の場合、かなり遠方から通学している子どももいるため、通学路の問題は大きなものとなっていた。先生方は、登下校の度に通学路に立ち、時には、送り迎えをしながら、子どもたちの通学を保障していた。

避難所に入った方々への炊き出しのために、給食センターが使用されていた。そのため、すぐ近くに給食センターがあるところも例外なく、すべての学校が簡易給食となっていた。刻み食しか食べられない肢体不自由養護学校では、先生方が庭で汁物の副食を作り、給食を食べやすくする工夫がされていた。

(2) 児童福祉領域での対応

震災からまもなく、神戸市障害者緊急ケアセンターが発足された。しあわせの村の施設を利用して、障害児および障害者と家族の方を一時保護するというものであった。実際には、障害児で利用された方はそれほど多くはなかったようである。余震が続く中、後片付けをしなければならない家族の方々の中には、「大きな余震がきたら今度はだめかもしれない、そのときに、障害を持つ子どもを一人だけ残しては死ねない、死ぬのなら一緒に」という思いで、子どもたちを離さなかった方もおられたようであった。

一方、被害の少ない施設が、被害の大きかった他の施設の子どもたちを一時的に預かることはよく行われたようであった。  

障害を持つ子どもたちへの災害時の対応

(1) 身体面の問題への対策

身体面に関する対策でまず必要なことは、日常、子どもに使用されている薬品の名前や量を控えておくことである。いつ、かかりつけの病院に行けなくなる状況が起こるかわからない。そんなとき、近くの病院で代わりに薬を出してもらうためにも、薬品名、投与量、病状の経過などは、日頃から記録しておかなければならない。高田先生たちの調査でも、今回の地震で感じたことの1番目に「医薬品・日常品の自己管理」が挙げられていた。また、医療機関からも、家族にそうした情報を積極的に出すように心がけることが必要であろう。

障害を持つ子どもたちは、体力的にも余力が少ない。このことは、肢体不自由児の場合、とくに当てはまる。そのため、災害後の劣悪な環境下での生活は、こうした子どもたちにとって健康に対する大きな脅威となる。普段なら風邪ですむところが、あっという間に肺炎にまで進み、最悪の事態になるケースもあることが、今回の震災でも示されている。しかも、今回震災後に死亡した障害児たちは、みんな、震災後1か月までに亡くなっており、災害後の身体的不調の進展が早いことを教えてくれている。障害を持つ子どもたちでは、災害の後の健康状態に留意し、軽い症状でも十分な観察を行い、進行する気配が見られた場合には、早めに入院などの十分な対応をすることが重要と思われる。

災害の後、いろいろな身体的不調が出やすくなることはよく知られている。障害を持つ子どもたちでは、とくに、発熱、嘔吐、けいれん回数の増加などの症状が出現しやすい。これらの症状に対する常備薬を用意しておくとよいかもしれない。

ほかには、体重の変化を示した子どもたちが少なくなかった。体重増加は、避難生活における勝手気ままな食生活と過食、それに、運動不足によるものと考えられる。一方、体重増加不良は、激しい偏食や刻み食中心のために食糧事情が改善するまで食べるものがあまりなかったことが関係しているものと思われるが、その他、ストレスによる食欲低下も影響していると思われる。食事状況が限られている障害児たちのために、通常の炊き出しのほかに、特別食を提供できる体制も考えられるべきと思われる。少なくとも、肢体不自由児のための刻み食を作るボランティア活動は、今後、考えておいてよいのではないだろうか。

(2) 心理・行動面の問題への対策

表5 障害を持つ子どもたちに災害時に見られやすい問題行動のまとめ
 避難生活の影響から出現する問題行動  生活リズムの乱れ、自立行動の崩れ
 健常児と同様の
 反応性の問題行動
 恐怖・不安反応、不眠、食欲異常、
 排泄障害
 その障害自体の症状としての
 問題行動の悪化
 多動、興奮、パニック、固執、自傷
 別の病態の問題行動の合併  欲動障害(精神運動性の抑制・亢進)、
 転換症状、幻覚、妄想

障害を持つ子どもたちに災害時に見られやすい行動面の問題をまとめたのが表5である。この中で、避難生活から出現する問題行動と障害自体の症状としての問題行動の2つは、障害を持つ子どもたちに比較的特有の問題行動の出方と内容と言ってよいであろう。こうした問題行動が出現する可能性を予測し、背景を考慮することで、避難生活を送る障害児の問題行動の発生をある程度は予防することができるのではないかと考えられる。

ところで、大きな心理・行動面の問題を示す子どもたちは、そうした問題を持ちやすい背景要因があることが少なくなかった。以前から心理・行動上の問題を持つ子どもや、家族間の関係に問題がある子どもの場合には、ハイリスク児として、問題が生じていなくても、しばらくの間、注意して関わることが災害時には重要と思われる。

(3) 生活面での問題への対策

生活面での問題は、日常生活と学校生活に大きく分けて考えることができる。日常生活では、子ども自身への援助も大切であるが、子どもから目が離せず、水や救援物資をもらいに行くことさえできない保護者への援助を考えることも重要と思われた。そのためには、少なくとも学校再開までの間、障害を持つ子どもの扱いに慣れたボランティアに、そうした子どものいる家庭を訪問させ、子どもの面倒をみてもらえるような援助体制を作ることが望ましいと思われる。

そうしたボランティアとしては、障害児関連の施設で働いておられる職員の方や障害児教育専攻の大学生などが適任と思われる。障害児援助専門のボランティアグループを作り、地域の特殊学校・療育施設を基点として家庭訪問を行うのはどうであろうか。

避難所に関して、障害を持つ子どもたちを受け入れることのできる場所を、日頃から考えておくことも重要である。子どもたちの抱える問題のために、通常の避難所にいることが難しかった方々は少なくない。高田先生たちの調査でも、障害者の家族のための避難システムがほしいと回答した保護者が大勢見られた。

ある特殊学校の校長先生は、そうした障害児および障害者のための避難所として、地域性や設備、対応するスタッフの質から言って、各特殊学校が最も適切であり、今後、そうしたシステムづくりが必要である、と話しておられた。まさしくそのとおりだと思われる。

学校生活に関連しては、可能な限り早く、一定の日課で活動する状況を子どもたちに与えてあげるという配慮が大切と思われる。障害を持つ子どもたちは、自宅や避難所で長期間放置された形でいると、生活のリズムが崩れ、日常生活動作レベルも低下してしまい、元の学校生活に戻った際、前の調子を取り戻すのに時間がかかってしまう可能性が、障害を持たない子どもたちに比べてはるかに大きいと言える。したがって、学校が再開されるまでの間、家庭訪問での関わりや分教室を作っての授業を行うことは、大きな意義があることであろう。

今回、そのような活動が実際によく行われており、その果たした役割は大きかった。とくに、家庭訪問での教育・指導は障害を持つ子どもへの教育的配慮として特有のものと思われ、分教室や学校再開の予定が立ちにくい状況でも、すぐにでも行える方法として考えておいてよいのではなかろうか。その場合、設備もなく時間も備品もきわめて限られた状況で行う変則教育に関して、日頃から、どのようなことを行ったらよいかを検討しておくことが必要ではないかと思われた。

学校再開後は通学の安全確保が最優先する課題であり、先生方のかなりの労力がそれに割かれていた。このようなときに、前述したような障害児援助専門ボランティアグループが、通学介助の手助けをすることができれば、先生方も学校内での対応にもっと力を注げるようになるのではないかとも考えられた。

おわりに

二重災害弱者である障害を持つ子どもたちであるが、今回の震災では、幸いにも大きな被害・問題を持った子どもの数はそれほど多くなかったと聞いている。これは、ご家族の方々、学校の先生方、そして、多くのボランティアの方々の努力の賜物であろう。そのご努力は大変なものであったと思うが、障害を持つ子どもたちが災害時に大きな問題を持たないようにするために、考えるべきことはまだまだありそうである。今回の経験から得たものを土台に、検討を続けていく必要があるであろう。

最後になりますが、被災地の子どもたちみんなが、笑顔を取り戻す日が1日も早く来るように祈っております。

参考文献
高田哲、新谷幸宏「阪神・淡路大震災と障害児童たち」神戸大学医学部小児科 第一回「阪神・淡路大震災とこどもの保健・医療」研究会報告書 平成7年6月 43~51頁
白橋宏一郎他「宮城県沖地震に伴う障害児の反応」『精神医学』22(6) 625~638頁 1980
筆者プロフィール
宮本信也(筑波大学心身障害学系助教授)

1952年青森県生まれ。78年金沢大学医学部卒業後、自治医科大学講師を経て、91年より現職。 専門は発達行動小児科学。小児科領域で対応可能な小児の心理・行動面の問題を確立することを 目指している。著書に『乳幼児から学童前期のこころのクリニックー臨床小児精神医学入門』 (安田生命社会事業団)。共著に『小児神経心理学』(中山書店)など。

(※季刊子ども学「子どもたちの震災復興」1996より掲載しています。
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