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【6月:追記】阪神・淡路大震災の教訓

小林 登 (CRN 所長、東京大学 名誉教授、国立小児病院 名誉院長)

2008年7月14日掲載
6月の所長メッセージでは、『自然災害の「子ども学」』と題して、地震・洪水などの災害を「子ども学」の立場から捉えて研究する必要がある事を申し上げた。これから起こり得る災害を乗り越え、わが国の将来を確かなものにするには、それなくしては成り立たないと考えたからである。

執筆にあたって、何か資料がないか兵庫県のこころのケアセンターにお尋ねしたところ、関係資料を頂く事が出来たが、残念ながら執筆後であった。頂いた資料は、1)被災児童の震災の心理的影響等に関する調査研究報告書(兵庫県ヒューマンケア研究機構こころのケア研究所、平成14年3月)、2)阪神・淡路大震災の復旧・復興の状況について(兵庫県、平成20年5月)、3)震災を越えて(兵庫県教育委員会、平成17年3月)、4)心的トラウマ研究第2号(兵庫県こころのケアセンター研究紀要、平成18年3月)、5)平成19年度阪神・淡路大震災の影響により心の健康について教育的配慮を必要とする生徒の状況等に関する調査結果について(教育企画課、平成19年11月)の5つである。心から御礼を申し上げる。

筆者が先の所長メッセージで取り上げた「母乳哺育」、「レジリエンス」についての記述は、残念ながら資料の中に見つけられなかった。考えてみれば当然かもしれない。前者は最近話題になった概念であり、後者については、少子化社会である上に母乳哺育の実施率も低い為、実際は問題がなかったのかもしれない。

14,000人程の小学生・中学生についての調査報告書である資料1)では、いくつかの重要な点が指摘されている。震災の4カ月後から23カ月後まで4回にわたって行われた自記式アンケート調査によると、「不安や怖れ」は震災直後が最も強く、時間が経つにつれて弱まり、「抑うつ・身体的兆候」は6か月をピークに発現して、23カ月目にようやく4カ月目と同じ状態に戻ると報告されている。更に、「向社会性」も、時間と共に低下する事が指摘されている。

6年後に行われた調査では、被災による影響と考えられる心理的症状のうち、PTSD症状について、被災の激しかった地域で他の地域と比較すると明らかに高い発症率が見られた。また、PTSD症状の遷延化には、失業などの震災による家庭の二次的な生活上の変化が関係すると報告されている。

兵庫県教育委員会の作成した資料3)にも、大変有用な情報がある。特に、「新たな防災教育」の展開は注目に値する。防災教育こそが、「レジリエンス」を強化する方法の大きなひとつであるからである。しかし、防災教育もチャイルドケアリング・デザインしなければならないのではなかろうか。従来の古典的教育学を取り込み乗り越えて、学際的、包括的な「子ども学」的発想にする必要があると思う。関係する諸学を束ね、新しい教育力を作らなければならない時にあるのである。

教育委員会の報告書をみると、震災後の混乱の時、学校が避難所として重要な役を果たした事がよく理解出来る。しかし、四川の場合は多くの学校が崩壊し、多くのひとりっ子が亡くなるという悲劇を起こした。学校は、自然災害の折には色々なかたちで重要な役を果たすので、これこそ耐震性を強化し、子ども達の命を守るばかりでなく、一般の人々でも災害時に利用出来る様にするのがよいと思う。

また、わが国の様に地震の多い国では、災害の学際的な研究を展開させ、その知識と技術を国外でも利用出来る様、発信すべきと考えた。





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