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被災した子どもの心のケア

三ヶ田 智弘(国立病院機構肥前精神医療センター小児科医師)

2011年6月 1日掲載
私たちの心のケアチームは、震災発生の9日後より宮城県入りし、翌日より塩竈地区の避難所を巡回しました。塩竈地区は津波の被害が比較的少ないと聞いておりましたが、実際に行ってみると、町中の無惨な光景は想像を超えるものでした。あたりには瓦礫と泥と海水が混ざり合った独特の異臭が漂っていました。

初日、私は、子どもの心のケア担当として、小さい子どもを抱えて不安になっているお母さんに「被災されたお子さんをお持ちの家族の方へ」のリーフレットをわたして説明したり、自閉症の子どもが避難所で不安定になり、困っている家族に避難所でもできる構造化の工夫を提案したりしました。子どもの心の相談以外にも、大人の相談や内科、小児科の診察もしなければなりませんでしたので、予想以上に忙しく、時間が足りませんでした。

翌日から小さい子どもを抱えているお母さんたちを広く支援するために、地元の保健師さんに、被災した親子の子育てサークルのようなものを開催してはどうかと提案したところ、早速いくつかの保育所でお母さんたちを集めて子どもの心のケアの講習会を開始することができました。幸いとても好評で、後に保育士さんを対象とした心理教育プログラムも始まりました。

避難所で気づいたもう一つの問題は、子どもたちが自由に遊ぶことのできるスペースがあまりない、ということでした。バタバタと子どもたちが避難所である体育館内を走り回る足音にお年寄りからクレームがつくこともありました。不安が高まり、一人でいることを嫌がる子どもが離れず、お母さんがストレスを抱え込むことも多いようでした。では、子どもたちのために遊び場を確保することが難しいのかというとそうでもなく、学校や公民館などに使われていない部屋は多くありました。そこでこちらから、子どもたちのためのスペースを設けることを避難所の責任者の方に提案すると、「なるほど、そういうスペースも必要なんですね!」と初めて気づかれた様子でした。大人は、子どもの遊び場まで考える余裕もない状況だったのです。

ある避難所では、子どもたちを集めて、お母さんと一緒に絵を描いたり、私たちが持参したシールを使ってコラージュ作りをしました。この試みは避難所内でお母さん同士の横のつながりを生む機会にもなりました。なかに「津波でシールが流された」という子どもがいて、最初はシールを使うことをためらい、大事に持って帰ろうとしました。けれど、促されると段々とシールを使い始め、最後にはカラフルな絵が出来上がりました。一日も早くこの子たちが安心してのびのびと遊ぶことができるスペースが確保されることを強く願いました。

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「教育と医学」2011年5月号より転載いたしました。
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