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新しいネット世界のはじまり

河村智洋 (チャイルド・リサーチ・ネット 外部研究員)

2007年6月 1日掲載

要旨:

2007年現在、高校生以下である子ども達は、生まれた頃からITと隣り合わせで成長してきた「ITネイティブ」だ。彼らにとって、ネットや通信は体内に染み付いた存在であり、彼らの遺伝子にはITが組み込まれているのではないかとさえ思うほどだ。数年後、私たち大人とは遺伝子レベルでITの受容度が違う「ITネイティブ」世代が社会人になったとき、社会はどう変化するかについて、今から真剣に考えておかなくてはならないだろう。

はじめに

2007年現在、高校生以下である子ども達は、生まれた頃からITと隣り合わせで成長してきた「ITネイティブ」だ。彼らにとって、ネットや通信は体内に染み付いた存在であり、彼らの遺伝子にはITが組み込まれているのではないかとさえ思うほどだ。一方、今いわゆる大人といわれている世代にとって、ITとは、成長した後に訓練することで使えるようになったツールであり、遺伝子そのものに組み込まれるといった類のものでは決してない。

数年後、私たち大人とは遺伝子レベルでITの受容度が違う「ITネイティブ」世代が社会人になったとき、社会はどう変化するかについて、今から真剣に考えておかなくてはならないだろう。


驚くべき新感覚を持つ「ITネイティブ」世代


私は、チャイルド・リサーチ・ネットの中で約10年間、「子どもとメディア」について、ネットやその他様々な活動をしてきた。実際に子どもに触れる機会の多い活動の中で、子どもたちが大きく変わってきたと感じている。

まず、最初の驚きは、今、20代前半から高校生である世代が、「携帯世代」として出現したことであった。彼らは、携帯電話を使って、インターネットやメールを行い、携帯電話特有のメールの文章表現を生み出した。彼らにとって、最初に触れたITが携帯電話であり、インターネットもメールもそこから入ってきた存在なのだ。また、彼らに共通する、ITツールの捉え方にも驚かされた。私たち世代は、携帯電話とパソコンを分けて考えがちだが、ちょうど中学生くらいのときから携帯電話を持ち始め、パソコンとの両刀使いに慣れた「携帯世代」には、その区別がない。私たちは、コンテンツをまず考え、携帯コンテンツ、パソコンコンテンツと分類するのだが、彼らは違う。彼らにとって、自分のやりたいことを果たすことが最も重要であり、そのツールはパソコンであろうが携帯電話であろうが全く意に介さないのだ。

そして最近の驚きは、さらに次の世代が出現したことだ。今、小・中学生である彼らは、新しいパソコン世代、といっても一昔前のパソコン世代ではなく、「ブロードバンドインターネット世代」である。面白いことに、「携帯世代」と呼ばれる高校生でさえ、「今の中学生(すなわち「ブロードバンドインターネット世代」)は怖い。」とか、「今の中学生にはかなわない」といった発言をしている。

「ブロードバンドインターネット世代」の彼らは、親もITを使う世代なので、ブロードバンドのインターネットをパソコンで使える環境が自宅に整備されている。その結果、インターネットはパソコンから入っていくことになるのだが、彼らの大部分が、ほぼ毎日、1時間以上、インターネットをやっているそうだ。まるで私たち世代にとってのテレビのようである。ちなみに、「携帯世代」と比較すると、彼ら「ブロードバンドインターネット世代」は、携帯電話をあまり欲しがらず、その替わりにパソコンを欲しがるそうだ。つまり、彼らにとって、携帯電話は、低機能なツールなのである。

彼らのインターネットの使い方は、私たちのようにまずバックグラウンドを勉強し、使えるようになった世代とは、大きく異なる。彼らは、バックグラウンドとなる知識を持たずに感覚としてインターネットを使う。例えば、いきなり何百人という仲間とコミュニケーションをしたかと思ったら、仲間の誰かに少し不快感を与えられたというだけで、一切のコミュニケーションを断ち切ったりする。そのような感覚的な情報の受け止め方が、インターネットに対する新しいパワーを持っているように感じる。


「ITネイティブ」がもたらす社会へのインパクト

つまり、彼らのような「ITネイティブ」が社会に出てくることで、「情報の発信」が変わるのではないだろうかと、私は感じている。例えば、一昔前の新しい世代が、受信のための装置だったポケベルを、送受信するものとして使い始めたように、「ITネイティブ」世代が新しい情報の発信方法を生み出すのではないだろうか。既に、ブロードバンドインターネットを使った発信は始まっており、第4世代の携帯電話の出現が予定されているので、今言われているCGM(Consumer Generated Media)の世界が、強化されていくであろう。

具体例を挙げると、インフラ自体がCGMになる世界だ。つまり、個人が集まってインフラを整備してしまうのである。日本に受け入れる風土があるかどうかはさておき、最近、日本に入ってきたフォンのようなものがある。フォンとは、無線LANすなわちインターネット環境をみんなで共用して使うというコンセプトのものである。インターネット環境そのものを、個人同士でつなげることによって、本来のインターネットの姿が出来上がりつつある。例えば、プライベートですべての人が持ち、東京中のすべての車につけたら、東京はプライベートなインターネット空間をつくることができる。このような感覚が「ITネイティブ」世代には既に備わっており、容易に実現させていくだろう。例えば、フォンの装置が2000円程度で手に入り、ある学区内の全員が始める。そうすれば、そこにプライベートなインターネット空間ができ、電話代、映像の通信代は無料である。いわゆる既存のインフラは一切使わず、完全にプライベートなインフラによって情報のやり取りができる世界が、実現するのではないだろうか。

もうひとつの具体例は、セカンドライフのような、バーチャルな世界だ。バーチャルな世界に、本当に住み、土地を買い、家を建て、儲けを生み出す。セカンドライフの面白い点は、そこで儲けたお金を、リアルなお金に換金できることだ。既にこの儲けだけで生計を立てている人も存在する。この規模が大きくなり、バーチャルの中だけの儲けだけで生計を立てる人が増加する可能性は、高いであろう。


チャイルド・リサーチ・ネットの取り組み

チャイルド・リサーチ・ネットでは現在、「子どもとメディア研究室」で、子ども(10代)を対象にしたSNS(Social Networking Service)を作り、実験を行っている。

SNSとしての機能は、ほぼミクシィと同等のものであり、メールでの写真付きメッセージでの日記投稿ができる。もちろん、携帯電話からの利用も可能である。

商業目的ではないので、大人数を集めたコミュニティを作るのではなく、子どもたちのネットでの行動パターンを観察することを目的としている。そのため、少人数から始め、SNSとしてコミュニティがどのように形成されていくのかどうかを調査している。

入会方法は、オープン制(誰もがメールアドレスを登録すれば参加できる)と招待制(誰かの紹介がないと参加できない)の2種類ある。しかし、今回は、子どもにとって安全なコミュニティを提供することが最優先なので、招待制で始めることとした。

SNSは、どちらかというと実際に会ったことのある人達をベースに、ネット上でやりとりを行うシステムである。よって、子どもたちが、どのようにして友人関係を構築するのか、どのようなコンテンツを取得するのか、どのようなコメントのやりとりが行われるかを観察し、男女や年齢によるコミュニティ形成の特徴を明らかにできると考えている。

また、コミュニティなど不特定多数と特定テーマでやるシステムをどのように利用するかについても観察できるかもしれない。

このように、チャイルド・リサーチ・ネットで「ITネイティブ」を観察していく中で、彼らが台頭してくる数年後の社会を予見する足がかりを見出すことができるのではないかと、期待している。

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