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子どもの友だち形成とコミュニケーション

川上真哉 (CRN外部研究員)

2005年12月22日掲載

要旨:

子どものネット上での友だち形成とコミュニケーションについて、日記と掲示板システムの利用形態などから調査した。子どもにとっての友だち形成とコミュニケーション行為は、自分と対象間の明確な友だち関係の認識がベースにあり、その関係を土台にしてコミュニケーション行為が行われている。大人の場合、曖昧な関係から始まり、コミュニケーション行為の結果として関係の認識が強まると思われるのとは対照的である。子どもはウェブ上においても、情報発信の内容・表現、コミュニケーション手段・対象などについて1対1の関係を基盤として、1対1でのやり取りが盛んに行われる、直接的なものを選んでいると思われる。
これまでに我々は、子どものCafesta利用の実態調査として、子どもたちがCafestaを自分たちのものとして使いこなしている様子を報告した。その中で低年齢の子どもは現実の人間関係をベースに、活動がネット上に拡大している様子が見られた。今回は子どものネット上での友だち形成とコミュニケーションについて、日記と掲示板システムの利用形態などから調査した。Cafesta上での子どもたちの友だち形成とコミュニケーション活動は、自己と対象との1対1の関係を基盤として、1対1でのやり取りが盛んに行われる、直接的なものであった。


1.日記と掲示板

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1) 日記

子どもの日記は書く量には個人差があるが、内容としては学校に関する出来事や休日の遊び、家庭の様子などが書かれている。特に文章量・頻度ともに多いのが"いじめ"を受けている子どもである。その日その日に何があったか、その時に受けた気持ちなどが書かれている(図1)。子どもであっても個人情報に注意して人名はイニシャルで表しており、個人を特定されにくいように書かかれているが、それでも"現実の"知り合いにバレることを怖れている様子が伝わってくる。長く書き続けている子どもは、環境の変化や新しい友だちのことなどが書かれており、変わっていく様子がよく分かる。


2) 掲示板

子どもによる掲示板の利用は、図2に示すように1回の書込みごとに新しいスレッドを立てる特徴がある。そのため同じ人による書込みが連続して続くことがある。また書込みのタイトルや返事として意味の無い言葉が書かれている事もある。掲示板のタイトルは内容のカテゴリを表す言葉を入れるのが普通であるが、ふだんの何気ない会話のつもりで書き込む場合には、タイトルには挨拶文が入れられる。これらの言葉は子ども同士が認識している一種のサインであろう。

1対1コミュニケーションの場として掲示板を考えてみると、Cafestaの掲示板システムでは書込んだ人の情報が初めから表示されており、コミュニケーションの初めに対象が明確に意識されやすいと思われる。内容よりも対象が先に意識されるのはチャットシステムと類似しているが、対象が限定されるため第三者による書込みは敬遠されやすく、1対1のコミュニケーションが促されると思われる。また、書込みと返事がリアルタイムで行われないことと返事が簡略化されていることから、話題の続きを新しいスレッドで書くスタイルが好まれると思われる。


lab_02_08_2.gif



3) コミュニケーションツールとしての掲示板

子どもはコミュニケーションツールとして日記よりも掲示板をよく使う。日記をあまり書かない子どもでも、掲示板を利用したコミュニケーションは行われている。例えば、6月にCafestaを始めた子どもは、掲示板の書込み件数が日記の書込み数よりも多い。7月に始めた子どもは日記を頻繁に書くが、日記と掲示板の両方でコミュニケーションを行っている。

6月に始めた子 7月に始めた子
掲示板 日記 掲示板 日記
6月 17件 2回 5件 ‐ ‐
7月 17件 4回 16件 46件 9回 35件
8月 51件 5回 20件 100件 17回 116件
85件 11回 41件 146件 26回 151件


表1 掲示板と日記の書込み件数

lab_02_08_3.gif



また書込みの際に、文字を単なるテキストではなく、装飾して表現している子どもが多い。テキストの内容だけでなく"見た目"を工夫しており、直接的な表現方法として視覚的イメージを重視していると思われる(図3)。


2.子どもの友だち形成とコミュニケーション  

子どもにとっての友だち形成とコミュニケーションは直接的なものである。ここでいう直接的とは、方法と対象の二面において直接的であることを意味する。掲示板による1対1コミュニケーションの利用が多いことは、子どもは不特定多数を対象としたやり取りよりも、対象を限定したやり取りを好むことを表している。掲示板での1対1のやり取りは対象に対する直接的な方法である。おそらくはチャットも頻繁に利用されていると思われるが、研究員がチャットを行う機会が少ないためこの点は推測に留める。

また、絡み相手(友だち)募集やチャット友だち募集、彼女募集と表明している子どもは間接的でなく直接的に相手を募集している(図4)。また内容に関しても初めから直接的な表現を使っている。日記‐コメントの繰返しによる親密化を間接的な友だち形成とすると、チャットや友録(友だち登録)機能はより直接的に対象を友だちと認定する友だち形成である。

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このような友だち形成を大人の視線で考えると「友だちってそんなに手軽なものだろうか?」といった違和感を覚えるかもしれないし、匿名性の高いインターネット上での"友だち"について疑問を感じるかもしれない。確かに年齢が上がるにつれて"何でも話せる"ような、いわゆる"親友"という存在が意識されるようになり、一般の"友だち"と区別されるようになるが、そのためにはより親密なコミュニケーションが必要となる。しかし子どもにとって、友だち形成のスタートは直接的なものではないだろうか。例えば、「友だちになって」「いいよ」という会話によって友だち関係になるというケースは友だち形成のスタートとして当たり前であると思われる。Cafestaというシステム上では、こういった最初のやりとりとして、「チャット友だち募集」や友録機能の利用などが当てはまるのであろう。


3.まとめ  

子どもにとっての友だち形成とコミュニケーション行為は、自分と対象間の明確な友だち関係の認識がベースにあり、その関係を土台にしてコミュニケーション行為が行われている。大人の場合、曖昧な関係から始まり(関係を定義することが憚られる?)、コミュニケーション行為の結果として関係の認識が強まると思われるのとは対照的である。子どもはウェブ上においても、情報発信の内容・表現、コミュニケーション手段・対象などについて1対1の関係を基盤として、1対1でのやり取りが盛んに行われる、直接的なものを選んでいると思われる。

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