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ネットに集う子どもたちの動向調査 ~Cafesta内サークルにおけるケーススタディ~

川上真哉 (CRN外部研究員)

2005年5月13日掲載

要旨:

最近、HPやゲーム、コミュニケーションサイト等を利用している際に、子どもに接する機会が増えてきている。家庭や学校へのパソコンとインターネットの普及によって、子どもの日常生活の一部にインターネットの利用が入り込んでいると考えられているが、我々は子どものインターネット利用実態を把握しているのだろうか? このような疑問を発端に、2004年秋から子どもによるインターネット活用事例の調査を始めた。本論では、調査の対象となったサイトの中からCafesta(カフェスタ)という149万人以上が登録・利用する(2005年3月現在)コミュニケーションポータルを取り上げ、このサイト内に集う子どもたちの利用動向の調査研究をまとめている。
1.はじめに
 
最近、HPやゲーム、コミュニケーションサイト等を利用している際に、子どもに接する機会が増えてきている。家庭や学校へのパソコンとインターネットの普及によって、子どもの日常生活の一部にインターネットの利用が入り込んでいると考えられているが、我々は子どものインターネット利用実態を把握しているのだろうか? このような疑問を発端に、2004年秋から子どもによるインターネット活用事例の調査を始めた。*1


本論では、調査の対象となったサイトの中からCafesta(カフェスタ)*2という149万人以上が登録・利用する(2005年3月現在)コミュニケーションポータルを取り上げ、このサイト内に集う子どもたちの利用動向の調査研究をまとめている。


2.Cafestaサークル『TeensResearchNet』

Cafesta内のサークル機能を利用して、Cafestaサークル『TeensResearchNet』を設置した。『TeensResearchNet』はCafesta会員である子どもにとって、各種調査・情報発信の場となることを目的とし、「子どもとメディア研究室」のスタッフが運営した。サークルでは子どもがCafestaの諸機能の利用、創作活動や意見発表を促すような企画を行った。各企画に参加してくれた子どもには、お礼としてアバター・ホームページアイテムをプレゼントした。ネット上のサークル活動を通じて観察された子どものネット利用の様子を報告する。


3.サークル企画

1)アンケート企画
サークル会員(子ども34名)に、各自のMyHPでアンケートを行い、その結果をサークル掲示板に貼り付けてもらった。11月から3月末までに108件の結果が寄せられた。それらのアンケートのテーマ別分類を図1に示す。子どもたちは非常に様々な種類のテーマに興味を持ち、アンケートを行っていた。アンケートは様々な人と関わりを持つことができるネットの特性を活かした行為であり、異なる世代の人と接する機会の少ない子どもたちは活発に利用している様子であった。中には、「自分は性同一障害で、それについてどう思うか?」というような自分自身の悩みを公開し、意見を求めるアンケートを行った子どももいた。


lab_02_06_1.gif



2)読書感想文コンテスト
「新時代の子どもたちとの接触」*3を読んでもらい、3人の会員に感想文を書いてもらった。19歳の会員は、自分が高校生のころに触れ「私に初めてインターネットを教えてくれたのは小学生の姪っ子でした」と思い出を語り、そのパソコンを使いこなしている小学生の姪に対して「恐い」と感じたと書いていた。また、中学生の子どもは家庭のパソコン有無によって同級生のキータイプの速度に違いがあると認識していた。そして小学生の子どもは、「今はキット幼稚園とかの子も遣ってるんじゃない(原文ママ)」と推測していた。低年齢の子どもたちでも、自分らの年代のパソコン利用の様子を素直に把握している様子であった。

3)フォーラム企画
「ネットであった嫌なこと」「小学生に携帯電話は必要か」の2つのテーマについて、ティーンズ・ネット*4の掲示板を利用して議論する企画を行ったが、参加者は殆どおらず、散発の意見が寄せられるだけで、議論として展開しなかった。

4)友だち紹介キャンペーン
サークルの会員に、友だちを紹介してサークルに入ってもらうよう促したところ、Cafesta上の友だちを誘った子どもとクラスメイトを誘った子どもがいた。前者は高校生で数名あり、後者は小学生であった。高校生ではネット上の関係が現実と切り離されて存在しているのに対して、小学生では現実と繋がっている様子が観察された。


4.子どもとのコミュニケーション

1)チャット
小学生のサークル会員から、何度かチャットに誘われることがあった。それぞれ30分程度チャットを楽しんだが、最初の挨拶、発言の仕方、退室の挨拶など、チャットのマナー及びスキルは充分に習得している様子であった。特にレスポンスの速さ(キー入力の速さ)は大人と遜色ない程であった。また、オープンなチャット部屋では、他の知らない人が入室することも多く、何人かの高校生が入って来た。チャットに対する意欲は大人と子どもに差はないと感じられたが、ただし、子どもは会話のトピックの量は少なく、他のチャット参加者を交えて集団で活発に会話をすることはなかった。

2)日記と掲示板
サークルオーナーのMyHPには、多くの会員が掲示板にサークル参加の挨拶や企画のプレゼントの申請を書き込んでいた。その反面、日記に対するコメントは殆ど無かった。こちらが子どもの日記にコメントを書いた場合でも、お返しのコメントを書いてくれることは殆ど無かった。しかし、仲の良い子ども同士ではお互いの日記にコメントを書いており、さらにそれ以上の回数で掲示板に書き込みを行っていた。日記と掲示板の利用には、子ども特有の使い分けがあるのかもしれない。

3)サークル内掲示板
サークル内に、会員同士の案内や自己紹介、アンケート結果の紹介等の掲示板を設置しているが、誰かの書き込みに対する他の会員からの返事は全体に少なかった。


5.子どもによるCafesta利用の様子

1)子どもの自己主張・表現
CafestaではユニークなIDの他にニックネーム(ハンドル名)を設定するが、ニックネームを途中で変更する子どもがいた。ある子どもに変更した理由を聞いたところ、「飽きたから」と答えてくれた。会員はIDよりもニックネームで相互に認識していることを考えると、ニックネームの変更にはそれまでの人間関係にネガティブな影響を与えかねないが、子どもにとってニックネームは不変の固有名ではなく、一時的な文字通りの"あだな"あるいは自らの"名乗り"として捉えられているのではないだろうか。

2)子どもの対人関係
Cafestaには友だち登録の機能があるが、子どもが登録している友だちには同年代の子どもたちが多い。年代の異なる相手に対して"友だち"と認識するのには違和感があると思われる。しかし特別に仲の良い年長者の会員(いわゆる"おねえさん"や"おにいさん")がいる子どももいる。逆に自分より低年齢の子どもに対して、ある高校生が中学生のIT・PCスキルの習得度に対して「怖い気がする」と述べ、他の高校生は「低年齢の子どものマナーが良くない」と感じてネチケットのアンケートを行った子がいた。これは大人が子どもに対して同様に感じていることを考慮すると、興味深い現象である。

多くの子どもは日記や掲示板、メッセージを利用して1対1の対話を行っていたが、多人数でのチャットや議論は活発に行われなかった。集団での対話というコミュニケーション形式に対して消極的な様子が観察されたが、これが不慣れなためであるのか、または何らかの回避意識があるのかは分からなかった。日記や書き込みについても、子どもは誰に対しても書き込むのではなく、相手によって、あるいは状況によって書き込む/書き込まないを選択している様子である。「住所などの個人情報を聞かれて嫌だった」と述べた子どもが個人情報に関するアンケートを行った例もあり、子どもは他者に対してまったく無警戒でネットを利用しているのではないと考えてよいであろう。

3)現実的な子どものネット利用
子どもは直接の行為・人間関係が濃密であり、ネット利用にもその影響が見られた。小学生では、クラスメイトや現実の友だち同士で誘い合ってCafestaを行う子どもが多くいた。それらの子どもたちにとってのネット利用は、現実の人間関係を基盤とした遊びの拡張であり、そのような子どもたちにとって、ネットは現実と切り離された特別な世界としては意識されていないのではないだろうか。

これまでの期間中に、仲の良くなった子どもでCafestaに来なくなった子が何人かいたが、来なくなる前後の日記や掲示板の書き込みを読むと、誰かと喧嘩をしていた様子であった。Cafesta上での喧嘩の場合もあり、クラスメイトや直接の友だち間での喧嘩の場合もあった。喧嘩の相手もCafestaを使っていることから、本人はCafestaに来難くなったと思われる。喧嘩の理由は現実の直接的行為と、ネット上の行為によるものがあった。子どもたちは、ネットというメディアを介した場合でも、人間関係について敏感であり、喧嘩が起きた場合にはネット上の活動にもクリティカルに影響するのではないだろうか。


6.まとめ

多くの子どもたちはCafestaの機能、遊び方をよく理解して利用していた。サークル活動では、自分の興味のある事柄について数多くのアンケートをとり、結果をまとめて情報発信を行っていた。また、自分自身についての悩みを公開し、他人の意見を聞いて励まされている子どももいた。

子どもたちの対人関係は同年齢の相手と友だちになるケースが多いが、年齢によって異なる特徴も見られた。ハイティーンではCafestaで知り合った友だちが、ローティーンでは学校や地域の友だちが強く意識されていた。ローティーンではそれらの友だちとの関係が、ネットの活動に対してクリティカルに影響している様子であった。また、子どもたちは世代間でITスキルの習熟度合いが異なることを認識しており、それらの世代間に意識差がある可能性がある。


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*1 「子どもによるWEB活用事例調査」(川上.2004)参照
https://www.crn.or.jp/LABO/MEDIA/REPORT05.HTM

*2 Cafesta(カフェスタ)は誰でも無料で会員登録ができる。
http://www.cafesta.com/

*3 「新時代の子どもたちとの接触~小中学生へのインタビューとワークショップを通しての考察~」(河村.2004)参照
https://www.crn.or.jp/LABO/MEDIA/REPORT04.HTM

*4 ティーンズ・ネット
https://www.crn.or.jp/LABO/PYANKO/tn.html
※現在では企画を終了しております。


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