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新時代の子どもたちとの接触 ~小中学生へのインタビューとワークショップを通しての考察~

河村智洋 (CRN外部研究員)

2004年4月16日掲載

要旨:

今の若い世代のパソコンやインターネットに対する能力が非常に高くなっている。今後、パソコンとインターネットの普及によって、この逆転現象は、より鮮明になるであろう。しかし、だからといって大人が役に立たなくなったわけではない。大人はそれまで築いてきた歴史や文化の中で、様々なコンテンツを製作する能力を持っており、それは未来においても重要な役割を果たす。それぞれの能力を認め合ったところで、新しい本当の意味での文化が創造されるのではないだろうか。
■はじめに

「我々は、大きな勘違いをしていたのかもしれない。」
そんな思いから、この調査プロジェクトは始まった。私は、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの1期生である。湘南藤沢キャンパス・SFCと言えば、日本で初めてメディア教育に力を入れた大学であり、実際、私も大学に入ったときからEメールなどのインターネットを使いながら大学生活を過ごした。そして、我々の世代が社会に出て、インターネットの分野で活躍しているのも事実だ。だからこそインターネットに関しては、我々が最先端だという自負もあった。しかし、最近になって今の若い世代のことを過小評価していたのかもしれないということを思い知らされた。それは、中学生に今のインターネットの利用についてのインタビュー調査を行ったときからだ。


■中学生が語るインターネット

その中学生(3年生・男子)は、我々の行っていた「マルチメディア家族キャンプ」というイベントに小学生のとき参加した。1999年のことである。当時はウェアラブルコンピュータが注目されはじめたころで、参加した子どもは、自分用のウェアラブル服をつくったり、実際にそれを着てPDAを入れて街の中を探検したり、様々なイベントのなかで3泊4日のキャンプを過ごした。その様子が放映されたNHK朝のニュースのビデオを見るたびに、そこに映る彼の姿が印象強く心に残っていた。久しぶりに会った彼の姿は、当時の面影を残しながらずいぶん大人びていた。それでもやっぱり彼は彼だった。しばらく話をしていると、昔のようにすぐにうちとけることができた。

彼によると、クラスの同級生と協力して、フリーサーバー上でホームページを運営しており、情報交換はそこの掲示板やチャットを使って行っているという。また、バナー広告を自分たちのホームページに出して、広告費を稼ぐことも知っている。「2ちゃんねる」などのアンダーグラウンド系の掲示板も使いこなし、そこの文化やルールにも精通している。余談だが、この話を聞いて、「2ちゃんねる」などはずっと若い世代が使っているのではないかと思うようになった。私も別の掲示板で知り合ってやり取りをしていた人がいたのだが、その人はほぼ自分と同世代(20代後半)と思っていた。しかし、ある時年齢を尋ねてみると中学生と小学生だという。「2ちゃんねるの中でへまをやらす人のことを中坊というけど、へまをやらかしているのは大人達。僕たちはそんなことはしない。」中学生自身が言っている。

彼は、インターネット上の情報ソースを使って、インターネットのかなり深いところまで知っていた。アンダーグラウンドの情報も。また、セキュリティ意識も高く、メールや情報の扱いにはそれ相応の注意をしている。実際、話をしていると、「個人情報保護法案」や「出会い系サイト規制法」などに関してもかなり詳しい知識を持っている。正直、驚いた。私は、インターネットを含めたメディアの研究をしているので、インターネットにはかなり詳しいという自負があったが、インターネットを使いこなすという意味で、中学生は自分のレベルと全く遜色のないレベルであることがわかった。そして、それが彼らにとっては「普通のレベルだ」という。彼の仲間の中には、それぞれの分野においてもっと詳しい人がいて、情報を教えあっているというのだ。


■この中学生は特別な存在なのか

彼ら中学生の世代には、インターネットを使うことに対する抵抗感がない。また失敗に対する恐れも少ない。そして若さという適応能力の高さが、これだけ高度な使い方を短期間で身につけることになったのであろう。それも、彼らはパソコンを中毒のようにやっているのではなく、普通に学校に行って、クラブ活動をし、帰って宿題をして、我々がテレビを見ていたような感覚で、一日に1時間とか2時間、インターネットをやっているだけなのである。だからこそ、その適応能力の速さ、使いこなすレベルの高さには驚かされる。

彼らは、インターネットに関して、大人より自分たちのほうが優れていることを知っている。反対に彼らが恐れているのは、彼らにとっての「若者」、つまり「小学生」である。彼らはいう。「自分たちがインターネットを使い始めたのは、ブロードバンドが普及して、家でもインターネットが気軽に使えるようになったこの1年だ。でも、小学生は今からインターネットを使い始めている。だから、彼らにはかなわない。」と。

このような中学生はまだ一部の限られた存在であろう。しかし、このレベルの中学生が、これから大量に出てくることは、間違いない。そんな彼らが、数年後には世の中の中枢に出てくる。インターネットを使いこなせていない大人が考える未来像は、彼らの感覚からすればかなりかけ離れたものになってしまう可能性が高いのではないか。


■大人のメディア感・子どものメディア感

例えば、携帯電話を例にあげよう。実際、携帯電話によるインターネットの使い方、写真送付メールやショートムービー送付メールなどの使い方や可能性について、大人と中学生での適応性は全く違う。大人は、かつてのメディア、アナログカメラやデスクトップインターネット、ビデオカメラなどをベースにして使い方を考えるのに対し、子どもは直接そのメディアに最初から入っていって本能的にそれを使う。たとえば第3世代携帯電話のテレビ電話などを使わせてみると、大人は、固定型テレビ電話やテレビ会議のイメージから抜け出せず、お互いに顔を見ながら話をして、一週間もすれば飽きてしまう。しかし、子ども世代は、それを使って自分の周りのもの、手元の本や自分の文字などを映すなど、使い方のポテンシャルがまったく異なることがわかる。

また、我々大人が、光ファイバーのブロードバンドで動画を流すためにはどのようなコンテンツが必要で、それをどうやって作り、どうやって課金し、回線の効率的な利用方法をどうするか、などと考えている間に、10代~20代前半の若い人たちは現状のADSL環境の中で、ファイル交換ソフトなどを使い、もちろん違法ではあるが、最新の映画などからもっともっとアンダーグラウンドなデータまで非常に簡単に無料でやりとりをしているという現状がある。そういった現象は多々見られ、双方の間には意識のギャップが大きくなりつつある。

これはある意味では、しかたがないといえよう。はじめからそういった環境に生まれでた子どもと過去を持っている大人では、そのメディアに対する見方が全く異なるのだ。そういったメディアの飛び越し現象は、どうしても起きてしまうので、子どもを観察するしか、新しい使い方の感覚についてはわからないのが実情だ。しかし、だからといって大人が役に立たなくなったわけではない。大人はそれまで築いてきた歴史や文化の中で、様々なコンテンツを製作する能力を持っており、それは未来においても重要な役割を果たす。それぞれの能力を認め合ったところで、新しい本当の意味での文化が創造されるのではないだろうか。


■小学生が語るインターネット

その後、実際に彼らが恐れる(?)小学生を対象に、ホームページをつくるワークショップを行った。2003年の夏休みに行った「チーきちメディアキッズ」である。多摩市内の小学生数名を集めて行ったが、その中にもスーパー小学生がいた。彼は小学4年生だがヤフーのジオシティというフリーのホームページスペースを使って、自分のホームページを公開していた。彼は、少しコンピュータオタク系が入っており、家でも毎日、かなりの時間、パソコンを使ってインターネットをやっているようである。

彼のホームページをのぞかせてもらうと、ちゃんと日記が更新されている。前日の日記も写真付きで更新されていた。掲示板もあり、友だちからの書き込みがちゃんとある。自分の作ったソフトウェアも公開している。学校の先生が手伝ってくれたそうだが、何回かバージョンアップまでされており、ちゃんと画面付きのインストールガイドまでついている。

「私たちのホームページのトップページを作ってよ」とお願いしたら、次回の集まりのときには作ったものをフロッピーに入れて持ってきてくれた。私がノートパソコンを使っていることを知っていて、ちゃんとUSB接続のフロッピーディスクドライブまで用意してきてくれる。今の大学生でもここまで気が利く人はそういない。こういうのは、メディアに対するセンスだと思う。教えて身に付くものではなく、ある程度使っていて、経験として出てくる行動といえる。彼のインターネットについての知識は、確かに稚拙な部分もあるが、一部においてはかなりのレベルまで持っている。おそらく、今の平均的な文系の大学生以上のレベルであろう。


■おわりに

今の若い世代のパソコンやインターネットに対する能力が非常に高くなっていることがわかる。今後、パソコンとインターネットの普及によって、この逆転現象は、より鮮明になるであろう。

若い世代の持つメディアに対する能力は一考の価値があると思う。たぶん、我々とは、まったく違った受け止め方をしているはずだ。そのあたりをもう少し詳しく調べていきたいと思っている。

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