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【ニュージーランド子育て・教育便り】第37回 子どもの水泳(初心者編)

要旨:

ニュージーランドでも、たくさんの子どもたちが水泳を習っています。年齢的には5歳の小学校入学前に習い始めることが多いようです。子どもを励ましてくれるポジティブな雰囲気にあふれる息子の水泳教室の様子を中心に取り上げています。

<本稿について>

※CRN編集部より:この夏、世界の水泳授業・体育授業の様子を子育て応援団の各連載執筆者が、レポートいたします。
本稿執筆に当たっては、6か国の学校で学んだ経験のあるキリーロバ・ナージャさんの記事に着想をいただきました。
ニュージーランド、ドイツカナダインドサウジアラビアの順で掲載いたしました。お楽しみください!

ニュージーランドで「子どもの教育と水」という観点で見た時、大別すると水辺の安全(Water Safety)と水泳(Swimming)に分かれるようです。水辺の安全に関する教育は、学校での教育が中心になります。水泳(Swimming)については、学校でも大会が開催されたりしますが、泳ぎ方を覚えたり競技としての泳法を習得するのは学校時間外の習い事であることが一般的です。水難事故防止に関する教育も、ボートが転覆した時の脱出方法を学ぶといったものもあり、日本では馴染みのなかったような内容で、興味深いです。我が家には最近5歳になったばかりの息子が水泳を習い始めたということもあり、今回の記事では水泳について取り上げたいと思います。

水泳を習い始める年齢は、身近な人たちの様子では5歳より前に始める人が多いようです。5歳になると小学校に通い始めるニュージーランドでは、小学校に入る前には、曲がりなりにも泳げるという状態にしておきたいという保護者の思いがあるのかもしれません。息子の場合も、本来であれば4歳後半くらいを考えていたのですが、そろそろ習おうかという話をし始めていたころに、コロナによるロックダウンがあったり、規制が緩和されるのを待っていた方がレッスンの中止などで生活リズムが崩れず良いのではないかという気持ちもありで、5歳を少し過ぎ、徐々に規制も緩くなってきた入学して1か月後に水泳を習い始めることになりました。

3~4歳の頃(7~8年前)に水泳を習っていた娘のときは、簡単に公の施設から教室を探すことができたのですが、今回はいざ探し始めると、コロナ禍でスタッフ不足などにより、教室が縮小していて空きがないなど、なかなか簡単に見つかりませんでした。結局、「あそこの教室は子どもを励ましてくれる声かけや雰囲気があって良いと思うよ」という地元の友人の勧めもあり、大手の水泳教室に通うことになりました。ニュージーランドでは、子どもの水泳教室は、初心者レベルからある程度しっかりと泳げることを目指すコースと、そこをクリアすると参加することができる競技レースの選手を目指すコースの2つに分けているようです。それぞれのコースの中にいくつものレベル分けされたクラスが存在します。

息子は、学校に入っている子の中では最も初歩レベルの、入門クラス1からスタートしました。人数は4人までとなっています。1週間に一回、30分のクラスの内容は本当に盛沢山で、休みなく子どもに活動させるような内容になっています。以下は、私が見に行ったある日のレッスンの流れです。 あいさつすると間もなく、以下のような内容が始まりました。

  1. バタ足
  2. 水の中を歩
  3. コップで頭の上に水をかける
  4. 水に潜る
  5. ビート板に乗ってバタ足
  6. コップで頭に水をかける
  7. 浮いた状態で先生が手で引っ張って泳ぐ感覚をつかむ
  8. ビート板をつかみ先生が引っ張り泳ぐ感覚をつかむ
  9. 顎を下げるという指示とビート板で泳ぐ
  10. 手をまっすぐにしてビート板なしで泳ぐ
  11. 両手足を開いて浮いて5秒数える
  12. 手をまっすぐにしてビート板なしで泳ぐ
  13. 長い距離をビート板で泳ぐ
  14. 何度か⑩⑪の繰り返し
  15. 先生が投げた輪っかを潜って探す
  16. プールからあがって終了

一つ一つの動作について非常に単純な英語で1~2文で指示があり、子どもが試し、褒めるという一連の流れで、2~3分以内でどんどん次に進んでいきます。褒めるといっても「Good job, Good try(よくやった、頑張ったね)」といった程度なので、日本語にすれば、「バタ足してくださーい」→試す→「よくできました。次!」→「歩いてみましょう!」→試す→「はい。頑張りました。次は...」くらいのものでしょうか。これがひっきりなしに30分続くというスタイルです。

この内容は、娘が最初にニュージーランドで水泳を習った時とそっくりです。一つ一つの動きをもう少し丁寧に覚えて、次に進むような印象のあった日本の水泳教室と比べると、ニュージーランドの教え方は、動き自体の意味やフォームの良し悪しを言語化して説明している感じはほとんどなく、あまりにも子どもたちの一つ一つの動きの完成度が低いままどんどんと次のタスクに進んでいくので、当時は新鮮さと一抹の不安を覚えたことを思い出します。結局、レッスン回数を重ねていくと時間とともにすべての動きが統合されてきて、全体的に形になっていったときには、今まで自分の知っていた水泳の習得方法とは違うものを見ているような驚きがありました。

息子は、娘よりも年齢がいってから習い始めたということもあるのか、上達も早く、1カ月半で、入門クラス1終了のチェックに合格して賞状をもらいました。決められた項目ができているかどうかをクラスの間に担当の先生がチェックしていくような形で合格を告げられたそうで、特にその日にチェックがあると伝えられていたわけでもありません。この日はたまたま夫が息子を連れて行ってくれていたのですが、合格すると鳴らせるというプールの端にあるベルを鳴らし、その音に気が付いたプール内の人たちが拍手をしてくれたそうです。賞状を持ち帰って見せてくれた息子の誇らしげな様子を見て、これがニュージーランドの人がお勧めしてくれた「子どもを励ましてくれるような雰囲気」なのだなと思いました。帰宅してしばらくすると、専用のウェブサイト上でも、入門クラス1に合格するためのチェック項目にチェックが入り、クリアしていることが確認できました。現在入門クラス2に楽しく通っていますし、現在のところ家族もその様子を見て非常に満足しています。

幼い子の習い始めと競技レースに進むような子では、同じ「ニュージーランドの水泳教室」でも、全く違う世界が広がっているのだと思います。水泳を極めて頑張っているような子どもたちの姿をお伝えするような機会があれば、また取り上げたいと思います。

report_09_444_01.jpg

クラスを修了するとならせるベル。

「ベルを鳴らしていいよ!」と言われたそうですが、紐に手が届かず、

この後、夫が抱きかかえて鳴らしたそうです。

report_09_444_02e.gif

賞状を手にしました。
筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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