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【スウェーデン子育て記】 第14回 夏に多い水の事故と水泳事情

下鳥 美鈴

2016年7月 8日掲載

いよいよ、長い夏休みに突入しました!6月半ばから8月末までの2か月半は、子どもたちにとっては学校の授業が無い、夢のような時間です。日本では考えられませんが、社会人でもこの時期に3週間から5週間ほど休みを取る人が多いスウェーデンでは、夏はみんなが待ちに待った季節。どことなく、人は陽気になり、明るい表情が多いような気がします。

子どもたちが学校の終業式を迎えるのは6月の半ばころ。とはいえ、大人たちにとってはまだ通常の仕事がある場合がほとんどなので、子どもの相手をすることが難しいことが多々あります。その場合は、子どもたちは終業式後も保育園や学童に通ったり、コミューン(自治体)が行う夏のキャンプに行ったりして両親が夏休みに入るまで待つことになります。我が家も10歳と5歳の娘たちを二人だけで家に置いておくことはできませんので、しばらくは小学校の学童と保育園に通ってもらっています。

夏に増える事故

夏休みに入り、子どもたちが元気に屋外で遊ぶことができる最高に楽しい時間なのですが、それにともなって、事故が増えるのも事実です。夏の事故で特に増えるのはなんといっても、水の事故です。湖の多いスウェーデンでは、海やプールでの水泳だけではなく、近くの湖で水遊びをする機会も増えるので、子どもをもつ家族にとっては特に注意が必要となります。

国内の安全管理を統括する公的機関 Myndigheten för samhällsskydd och beredskap (MSB, https://www.msb.se/)が1998年から2007年までの10年間に行った調査によれば、この期間に残念ながら水の事故で亡くなった18歳以下の子どもの数は106名。そのうち3分の2は男の子で、最も割合が高いのは13歳から17歳の活発な年代の男子だそうです。また、事故に遭う割合が一番少なかったのは、7歳から9歳までの女子という結果も出ています。さらに、事故が特に増える時期は6月から8月の夏休み期間で、曜日でいうと何故か火曜日と日曜日が多く、午後の12時から17時までの間に事故が多く発生するとのこと。午後になって少し疲れてくると事故が起きやすいということでしょうか。事故の発生場所としては、屋外(海、川、湖など)や、プール、家庭の風呂場で溺れることがあり、また冬になると雪や氷のある場所での事故も起こるそうです。そのほか事故の要因として、周りの大人の目が行き届かなかったということが報告されているため、事故にあった就学前児童の多くは片親だけの家庭の子どもであるという調査結果もあります。とにかく、子どもが水遊びをしているときは周りの大人は目を離さない、特に屋外の広い場所では大人が付き添うことが必要であるということでしょう。

同調査のなかで、ちょっと驚いたデータとしては、水の事故を起こした13歳から17歳までの子どものうち、約13パーセントが飲酒をしていたということ。アルコール(注1)はすべて専売公社で買うことになっているスウェーデンでは、18歳未満が飲酒をすることは難しいはずなのですが、それでもどこからかアルコールを入手して、その結果、水の事故へとつながってしまうのは本当に悲しいことだと思います。

水泳の練習

このような水の事故を減らすためにも、まずは泳げるようになることが最重要。前述の調査によると、水の事故にあった子どものうちの約40パーセントは泳ぐことができなかったそうです。スウェーデンで成人に、「あなた泳げる?」と聞くと、それはたいていの場合、「200メートル泳げるか?」ということになるようです。小学校での水泳テストの基準をもとにして、泳げるか泳げないかの判断基準として一般的に認識されているのは「まずは頭まで水につかった状態から水面にあがり、200メートル泳げること(200メートルのうち50メートルは背泳)」だそうです。かなり水泳のレベルが高い感じがしますが、私がまわりで聞いた限りでは、スウェーデン人はこの基準を満たす人が多いようなのが驚きです。スウェーデンの学校にはプールが併設されていないので、子どもたちは水泳教室に通ったり、家庭で水泳を教えてもらうのが普通です。つまり、どの家庭も子どもの水泳教育には力を入れて取り組んでいるようです。

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近所の湖で泳ぐ練習を始めました!まずは浅瀬で水遊びから。


「200メートル泳げること」というのはだいたい中学生くらいから成人までの基準であり、それよりも年齢の低い子どもには当然、もっと易しい基準が設けられています。小中学校では、水泳テストというものが毎年行われており、それぞれの学年で目標が定められています。私たちが住むコミューンでは、その水泳テストに合格できなかった子どもは、無料で水泳教室へ通わせてくれるということを知り、子どもの水泳能力というものが重視されているんだなあ、と感心してしまいました。私自身は水泳が苦手なので、スウェーデン人の友人に「私は泳げないよ」と言うとちょっと驚かれたのも納得です。

小中学校の水泳テストでは、以下の目標が定められています。

  • 小学2年生 25メートルの平泳ぎと10メートルの背泳
  • 小学3年生 50メートルの平泳ぎと20メートルの背泳
  • 小学4年生 100メートルの平泳ぎと35メートルの背泳
  • 小学5年生から中学3年生 150メートルの平泳ぎと50メートルの背泳(途中で足をつかないこと)
これらはあくまで目標基準なので、厳密にメートルで測るということではないそうですが、このようなテストに合格できない場合は水泳教室に通えるということなので、かなり恵まれているなあ、と思います。私も今から通わせてもらいたいほどです。

我が家の娘たちは、母親に似たのかあまり水泳は得意でない様子です。だからこの夏はちょっと本腰を入れてプールや湖に連れて行き、水泳の特訓をしてあげないといけないなあ、と思っています。小学4年生の長女は背泳の練習、5歳の次女はまず水に慣れて、浮かんだり水中でバランスをとることから始めてみようか、という話を先日もしたばかりです。とはいえ、水泳が苦手な私は、自分のことは棚に上げて「がんばって!」と言うことしかできないのが情けないですが・・・。



注1 ここで言うアルコールは、度数3.5%以上のものを言います。それより度数が低いものは、スーパーなどでも売っていますが、それでも18歳未満は買うことができません。

筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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