ザンビアは10月が最も暑い月です。日本では紅葉を楽しめる季節ですが、ザンビアでは、ジャカランダという紫の花が満開になる季節です。ジャカランダは、丁度、日本での桜に似た感じもありますが、桜のように、同じ地域に生えていても一斉に咲くのではなく、木によって少しずつ満開になる時期がずれています。それでも、満開になった紫の花はとてもきれいで、歩いていると思わず足を止めて見入ってしまうことがあります。ザンビアの運動会については第5回でご紹介しましたが、10月は、日本ではスポーツの行事も多く開催される時期ですので、それに合わせて、今回はザンビアの子ども達のスポーツ事情について、ご紹介したいと思います。

満開の花をつけたジャカランダの木(近所を散歩している途中に撮影)
水泳
ザンビアは、6月から7月にかけての寒い時期を除けば、半そでで過ごせる気候なので、ほぼ1年を通じて、屋外のプールで泳ぐことができます。特に、暑さが厳しい10月は、プールで泳ぐことや、水遊びを楽しむ人達も多くなります。ただ、ザンビアは内陸国なので、川や湖の近くに住んでいる人達を除けば、水に接する機会が少ないか全くなく、泳いだ経験のない人達がかなりの割合でいます。外国人や富裕層の人達の中には、自宅にプールが設置されていて、いつでも好きなときにプールで泳ぐことができる、という恵まれた環境におかれている人も多くいます。私の家族はいくつかのフラットに住んできましたが、その中でプール付きのフラットだった事が、1回だけあります。でも、メンテナンスが良くできておらず、水が汚かったので、ほとんど使うことはありませんでした。娘の学校の体育の授業では、3学期(9月~12月)には水泳が組み込まれていて、私の娘は3人とも、水泳の授業を楽しみに欠かさず参加していましたが、バタ足で数メートル泳ぐ程度しか習得できませんでした。娘に聞いた事なので確かではありませんが、水泳の授業の間は、ほとんどが自由時間で、各自が思い思いに泳ぎ、先生に教えてもらう機会はほとんどなかったようです。
サッカー
第3回目でご紹介しましたが、サッカーは、大人から子どもまで最も人気のあるスポーツで、ザンビアの代表チームが2012年のアフリカネイションズ杯で優勝をして以来、サッカー熱が更に高まっています。貧困層の人達が居住するコンパウンド(非計画居住区)では、子ども達がサッカーを楽しむ姿を、あちらこちらで見かけます。学校のグラウンドでも、休み時間や放課後にサッカーを楽しむ子ども達の姿をよく見かけます。私の娘達の学校では、体育の先生が週末にサッカーの補習授業をやってくれることがあり、娘3人の中でも、特に長女はサッカーが大好きで、欠かさずに出席していました。
ネットボール
女の子の体育の授業では、ほとんどの学校がネットボールを取り入れています。ネットボールは、バスケットボールに似ていますが、ドリブルができなかったり、ボールを持つ人にディフェンス側のチームの人が近づける距離が決まっていたり、動きの制限が多くあります。ザンビアではポピュラーなスポーツですが、私の娘は、サッカーの方が 思いっきり動けるので面白い、と言っていました。
その他のスポーツ
ボクシング:ザンビア人のエスター・ピリ(Esther Phiri)は、2010年から2012年まで、女子国際ボクシング協会のライトウェルター級の世界チャンピオンになり、サッカーのナショナルチームの選手に並んで国民的英雄のような存在です。彼女に続こうと頑張っている若い女性も出てきて、時々、テレビのニュース等で紹介されることもありました。
スカッシュ:日本では、まだあまりポピュラーではありませんが、2020年の東京オリンピックで、追加競技の候補に挙げられるかどうか話題になっていたので、以前よりは知名度があがったかと思います。ザンビアでは、スカッシュは、旧宗主国の英国の影響を受けて、ポピュラーなスポーツの1つです。スカッシュのできるスポーツクラブは各地にあって、ホテルのジムにも、スカッシュのコートが併設されているところがあります。
テニス:テニスコートは、あちらこちらにあり、中には、個人の家にテニスコートが設置されている所もありますが、競技人口の大半は外国人で占められていて、ザンビア人は少ない印象です。天候に左右されないという点で、ザンビア人の間では、テニスよりもスカッシュの方が、ポピュラーなのかもしれません。ザンビア人でも、比較的裕福な家庭の子どもの中には、テニスを習っている子達もいます。
ゴルフ:ザンビアに駐在をしている日本人の間では、ゴルフはテニスと並んで人気のスポーツです。日本でやるよりもお金がかからないので、手軽にできるそうです。首都のルサカには、2つもゴルフコースがあります。ただ、ザンビア人の間では、やはり富裕層に限られたスポーツのようです。
空手:空手は、ザンビア人のみならず、ザンビアに居住する外国人にも人気のスポーツのようです。習い事でやっている子ども達もいて、空手の胴着を着た子どもの姿を見かけることがよくあります。
ザンビアでは珍しいスポーツ
日本でポピュラーな野球は、ザンビアでは、まず見ることがありません。テレビでの観戦も、クリケットを観ることはあっても、野球観戦をする人は滅多にいないようです。ネットボールと似ているバスケットボールについても、ザンビアでは、あまり行われていません。街で、バスケットボールを持っている人を見かけることも稀で、バスケットゴールが設置されている場所も非常に限られています。また日本では、中学校や高校で、スポーツが部活動の一環として行われていますが、ザンビアの学校では(インターナショナルスクール等、一部の学校を除き)、そのようなシステムはありません。
コンパウンド(非計画居住区)に住む子ども達は、比較的自由に家の近所を走り回ることができますが、住宅地に住んでいる子ども達は、日常的に運動ができる環境に置かれておらず、運動をする機会が少ない印象です。コンパウンドに住む子ども達も、環境が整っているわけではなく、スポーツができる機会は非常に限られているといえます。また、スポーツの種類についても、サッカーに非常に偏っていて、他のスポーツは、サッカーの影に隠れてしまっている感じがあります。スポーツの好き嫌いにかかわらず、子どもの成長の過程で、運動をする機会が十分に与えられる事は、とても重要だと思うのですが、ザンビアに住んでいる子ども達の大半が、それがなされていない状況にあるのは残念なことだと思います。親が積極的に介入して、スポーツの機会を与えることができれば良いのですが、親は仕事で忙しく、子ども達は、学校から帰ってきたら、家で、おやつを食べながらテレビを見て過ごしている、という場合が多いようです。うちの娘達も、近所の子ども達と遊ぶ機会には恵まれていましたが、家の中で絵を描いたり、庭でおままごとをする事が多く、体を動かすといっても、鬼ごっこで少し走る程度でした。私自身も、車での移動が中心で、歩く機会が少なかったので、週末にはジョギングをするなど、運動不足にならないように心掛けていました。参加者は外国人が中心ですが、最近ではマラソン大会も開催されるようになり、休日に親子で参加する機会がありました。少しずつですが、良い方向に向かっているのかもしれません。

ルサカで開催されたマラソン大会で5kmレースに参加した娘達(左から次女、三女、長女)