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【ザンビアの子育て・生活事情】 第12回 子ども達が楽しめる季節の行事

要旨:

ザンビアでは、数は多くないものの、一年を通じて、子ども達が楽しめる行事がいくつかある。新年のカウントダウン後の花火は子どもも大人も一緒になって楽しみ、クリスマスにはケーキを食べながら家族でお祝いをする、というように、各行事をそれぞれができる範囲で楽しんでいる。ロジ(Lozi)族のクウォンボカ・セレモニーは、世界中から観光客を集めており、ザンビア人もテレビや新聞を通じて楽しんでいる伝統行事である。

Keywords:新年、バレンタインデー、父の日、母の日、イースター、ハロウィン、クリスマス、伝統行事

日本では、昔からの伝統行事に加えて、ハロウィン、クリスマス、バレンタインデーなど、外国文化から取り入れられたものもあって、一年を通して様々な行事がありますが、ザンビアでは、季節の行事の数はあまり多くありません。四季の変化に富む日本の気候と異なり、ザンビアの気候は、雨季と乾季で分かれているものの、気温は一年を通じて大きな変動がなく、季節と関わりのある行事が生まれにくかったのかもしれません。それでもザンビアの子ども達は、毎年、それぞれの行事を楽しみにしています。今回は、それらのいくつかをご紹介したいと思います。

新年を迎える行事(New Year's Celebration)
ザンビアの年末年始の休みは、12月31日の午後から1月1日までの一日半と、非常に短くなっています。(第4回でご紹介しましたが、通常、学校は12月が学期間のお休みになるので、子ども達は、1か月間の長い休みがあります。また、ザンビアの中でも、欧米の人達は、クリスマス休暇を家族で過ごす事を非常に重要視しており、欧米系の組織や会社は、12月中旬から1月中旬まで長期の休みになるところもあります。)12月31日の夜は、家族や親戚、仲の良い友達等が集まって会食をし、深夜にカウントダウンをして、年を越したところで一斉に、「新年おめでとう(Happy New Year)!」とお祝いし合うのが一般的です。また、新年が明けたところで爆竹や花火が一斉に鳴り響き、日本の厳かな年越しの雰囲気とはかなり異なります。私の夫は、新年の花火を子どものために準備するのが大好きで、子どもが幼い頃には、眠ってしまったのを無理やり起こして、参加させていた事もありました。(ザンビアでは日本のような手持ち花火はまだあまり出回っておらず、小さめの打ち上げ花火を数人で楽しむのが一般的です。)起こされた時はとても迷惑そうにしていた子ども達も、花火を見て、とても興奮して楽しんでいました。ザンビアでの花火大会は、私が知っている限りでは1つあるくらいで、日頃、花火を楽しむ機会がないので、年越しの花火は子ども達だけでなく、大人も楽しみにしています。

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(左)新年の花火を一緒に楽しんだ近所の友達と長女(左)
(右)大晦日から集まって新年を祝う夫(左端)とその友達

バレンタインデー(Valentine's Day)

日本では、バレンタインデーには女性から男性にチョコレートを贈るのが一般的ですが、ザンビアのバレンタインデーは、贈り物の対象は男女を問わず、贈る目的も、日頃お世話になっている人に感謝をする、好きな人に気持ちを伝える等、幅広くなっています。贈る物は様々ですが、花が最もポピュラーです。(ザンビアでは、バラの花が出回っていて、人に贈る花束の他に、大きな会議や催しものの際には、テーブルにバラの花飾りを置くのが一般的です。値段も比較的安価で、十分な大きさの花束が、20ドル程度 [約2,400円、2015年12月のレート、以下同] で購入できます。)バレンタインデーに買い物に来たお客さんに、ラッピングした一輪のバラを配っているお店もあります。家庭でのバレンタインデーのお祝いの仕方は様々ですが、お母さんに感謝を込めて、家族でレストランに夕食に出かけたり、贈り物をする家庭が多いようです。私の家では、バレンタインデーを祝う習慣はありませんでしたが、家事や子どもの世話のために雇っていたメイドからサプライズで花を贈られて、嬉しかったのを覚えています。(雇用・被雇用の関係にある場合、被雇用者の中には待遇改善を狙って戦略的に行動する人もいると思いますが、彼女は朴訥な人柄だったので、純粋な気持ちからだったと思っています。)

イースター(Easter)

イースターの時期が近づくと、店頭にイースターエッグを模したチョコレートのお菓子が並ぶので、イースターというと卵形のお菓子を思い浮かべる子ども達も多いと思います。イースターは、年によって日付が変わりますが、だいたい3月~4月の日曜日になります。その日曜日の前後は、聖金曜日(Good Friday)、聖月曜日(Holy Monday)となり、金曜日から月曜日まで4連休になります。イースターは、子ども達が楽しむ行事というよりも、家族揃って教会に出かけて、お祈りをする人達が多いようです。私は、イースターの連休に、日本人の同僚に誘われて、家族と一緒にルサカから片道10時間くらいかかるカピシャ(Kapisha)という所にあるザンビア唯一の温泉に出かけた事があります。4月は、子ども達は学校が休みなので、イースターが4月にあるときは、親子そろってお休みとなり、家族で出かけるには好都合です。

父の日、母の日(Father's Day, Mother's Day)

私の娘達が幼稚園に通っていた頃は、毎年、父の日、母の日になると、手作りの贈り物を持ち帰ってきました。幼稚園では、父の日、母の日が近づくと、普段お絵かきや色塗り等をしている時間に、先生方の指導のもと、子ども達が手作りの贈り物を作成していたようです。第10回では、娘の学校の友達の中には、家庭環境が複雑な子どもが多い事をご紹介しましたが、事情があって親と一緒に生活していない子ども達にとっては、あまり楽しい行事ではないかもしれません。私にとっては、手作りの贈り物は嬉しかったですが、娘が3人いたので、そのうちに慣れてくると、学校で作成して持ち帰る他の作品との区別もあまりつかなくなってきて、有難みが薄れてきたのを覚えています。それでも、娘達が大きくなり、学校で父の日、母の日の贈り物を作る事もなくなってしまった今では、懐かしく良い思い出となっています。

ハロウィン(Halloween)

ハロウィンには、ハロウィン用のキャラクター商品をあちこちのお店で目にします。でも、ザンビアでは、ハロウィンに特にこれをする、という事はないようです。欧米のように、仮装した子ども達が家々を回る光景は目にしません。教会でハロウィンのための集会をする所も、少ない印象です。私の娘達は、欧米のテレビ番組 *を通じて、ハロウィンに関する情報を得ていたようで、実際には特に何をする、という事もありませんでしたが、雰囲気は楽しんでいたようです。

クリスマス(Christmas)

ザンビアでは12月25日は休日です。クリスマスに親から子どもにプレゼントを贈る習慣はあるものの、経済的に余裕のない家庭も少なくないためか、実際には、日本ほど広く行われていないように感じます。クリスマスになると、所々にクリスマスツリーが飾られ、街頭にはイルミネーション等の装飾が施されますが、これも、日本と比べるとかなり地味な印象を受けます。第7回でも少し触れましたが、クリスマスにケーキを食べる習慣は広まっていて、クリスマスといえばケーキ、という認識をもっている人も多くなっています。最近は、外資系の大型のスーパーがいくつも入ってきて、デコレーションケーキが比較的安価(一台4ドル程度 [約480円] のケーキもあります)で手に入るようになった、というのもあるかもしれません。子ども達にとっては、プレゼントがもらえるか否かに関わらず、クリスマスは最も楽しみにしている行事の1つのようです。日本人の私から見ると地味に見えてしまうクリスマスの装飾も、ザンビアの子ども達にとっては、非日常的で、とても魅力的なのかもしれません。

伝統行事

ザンビアは70以上の部族から成る国なので、各部族で行われている行事はあっても、全国的に広く行われている伝統行事は、私が知る限りでは思いつきません。それでも、ザンビア人がみんな知っていて、世界的にも有名な伝統行事に、西部州のロジ(Lozi)族によって行われるクウォンボカ・セレモニー(Kuomboka ceremony)というものがあります。その行事が行われる様子はニュースで全国に流れ、ザンビア国内はもとより、世界中から見物客が集まってきます。これは、雨季の終わりの4月に、ロジ族の王様を、平地にある宮殿から、高い場所にある宮殿に船で移動させる、というものです。(ザンベジ川は毎年この時期になると氾濫し、平地にある宮殿は浸水してしまうのです。)私も家族も、この行事を実際に見た事はありませんが、王様と周りの人達が身に着けている赤と白の衣装が鮮やかで、厳かながらも、お祭りのような華やかな雰囲気が伝わってきて、テレビのニュースや新聞を通じて楽しんでいます。


    • * ザンビアでも、衛星放送のプロバイダーと契約すると、欧米のテレビ番組を見ることができます。
筆者プロフィール
aya_kayebeta.jpgカエベタ 亜矢(写真右)

岡山県生まれ。1997年千葉大学医学部を卒業後、東京大学医学部小児科に入局(就職)、東京都青梅市立総合病院小児科勤務を経て、2000年にJICA技術協力プロジェクト(プライマリーヘルスケア)の専門家としてザンビアへ渡る。その後、ザンビア人と結婚し、3人の娘(現在、小4、小5、中1)を授かる。これまでザンビアで、小児科医として、HIV/AIDSに関する研究、結核予防会結核対策事業(コミュニティDOTS)、JICAプロジェクト(都市コミュニティ小児保健システム強化)等に携わってきた。一方、3人の子どもの母親として、日本から遠く離れたアフリカ大陸で、ギャップを感じつつも、新たな発見も多く、興味深い子育ての日々を送ってきた。
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