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【ザンビアの子育て・生活事情】 第7回 誕生日パーティ

要旨:

ザンビアは、子ども達が遊ぶための公共の施設はほとんどなく、有料の遊園地やテーマパークも少ないので、誕生日パーティは子ども達が楽しめる貴重な機会を提供してくれる。誕生日パーティのやり方は様々で、誕生日の子の家族がオーガナイザーとなって食べ物やアトラクションの準備がされるホームパーティ形式のもの、レストランやカフェの誕生日パーティのセッティングを利用するもの、学校の授業時間の一部を使うものなどがある。

ザンビアには、子どもが自由に時間を過ごせる公園や図書館などの公共の施設はほとんどなく、遊園地やテーマパークなどのお金を払って利用する施設も、非常に限られています。前回ご紹介したカフェの庭や動物園は、数少ない子どもが楽しめる場所です。フラット(Flat) *1に住んでいる場合は、敷地内の友達と遊ぶことができますが、一戸建てに住んでいる場合は、友達の家まで行かなくてはなりません。友達の家はたいてい徒歩で行けない距離にあるので、親に車で送り迎えをしてもらうようになります。遊びたい時に友達と遊ぶことができずに、家でテレビを見ながら退屈を紛らわすという過ごし方が日常になっている子どもも多いようです。このような環境の中で、誕生日パーティは、子ども達のための大事なイベントの1つです。

自宅で開催する誕生日パーティ

一戸建てに住んでいる場合は、自宅を会場にしたホームパーティ形式の誕生日パーティを開催するのが一般的です。招待した人の車を駐車するスペースが確保できること、庭で子ども達が遊べるスペースが十分にあること等の条件を考えると、1つの敷地をいくつもの家庭で共有しているフラットでの開催は、なかなか難しいという事情があります。たいていの場合は、20人前後の友達を招待するので、それに付き添いの親が加わると、大規模なものになり、ホスト役のファミリーは、食事、お菓子、バースデーケーキなどの食べ物や、子ども達に楽しんでもらうためのアトラクションの準備に奔走します。誕生日パーティの会場となっている家の門の脇には風船が飾られるので、初めて行く家でも、この風船が目印となります。

ザンビア人も、ザンビアに住んでいる外国の人達も、バーベキューが大好きで、何か機会があるとバーベキューをしますが、誕生日パーティでもバーベキューは定番となっています。肉の量が半端でなく、キロ単位で購入して、バケツくらい大きなボウルの中のたれに漬け込んでおきます。肉の値段は日本よりも大分安く、鶏肉一羽で1,000円前後、牛肉と豚肉はだいたい同じくらいの値段で、キロ当たり高くても1,500円程度です。値段も比較的お手頃で、大きな塊か分厚いスライスで販売されていることが多いので、一人前の肉の量は、日本の食事に比べるとかなり多くなります。(ただし、現地の低所得層の中には、肉はごちそうで、ごくたまにしか食べることができない人達も多いようです。)

バースデーケーキは、手作りのお菓子ビジネスをやっている業者がいて、好きな形やデザインで作ってもらうことができます。大きさは、50センチ四方くらいと大きく、デコレーションも、動物やアニメのキャラクターを模倣した色鮮やかなもので、日本の一般的なバースデーケーキとは、かなり様子が違います。日本では最近はあまり見かけなくなりましたが、ケーキに使用されるクリームは、バターをたっぷりと使ったバタークリームです。そのバタークリームを色とりどりに着色して、デコレーションがなされます。ザンビアのお店やカフェで売られているお菓子やケーキは、日本のものに比べると、ものすごく甘く、こってりしているので、紅茶かコーヒーをすすりながら、甘さや濃厚さを薄めて食べると丁度良い感じです。バースデーケーキも、バタークリームがたっぷり使ってあって、スポンジケーキの部分もずっしりとしていて、ボリュームがあります。でも、日本では絶対に食べないような甘くてこってりしたケーキも、ザンビアの誕生日パーティで食べるとおいしく感じるので、不思議なものです。ケーキは宴たけなわとなってきた頃に出されて、みんなでハッピーバースデーの歌を歌い、主役がろうそくを吹き消した後に切り分けられます。

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近所の友達の誕生日会:バースデーケーキの回りに集まる子ども達

娘が招待された誕生日パーティでよく見られたアトラクションが、ジャンピングキャッスル(Jumping castle)です。これは、5メートル四方くらいの空気で膨らませる遊具で、業者からレンタルをして、庭に設置します。お城(キャッスル)の形をしたものが多く、中でジャンプをして遊ぶことから、ジャンピングキャッスルと呼ばれるようです。滑り台が付いたものや、2階建てになっているものもあります。ジャンピングキャッスルは、持ち運びができるので、レストランのオープニングやキャンペーンの時、ショッピングセンターでのイベントの時など、色々な場所で、様々なイベントで登場します。

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近所の友達の誕生日会:ジャンピングキャッスルで遊ぶ子ども達

レストランやカフェでの誕生日パーティ

自宅で誕生日パーティを開催するのは、ホスト役となるファミリーの負担が大きいのと、フラットに住んでいると自宅での開催が難しいので、レストランやカフェが提供するパーティのセッティングサービスを利用する人もいます。前回ご紹介した広い庭付きのカフェも、誕生日パーティによく利用されています。この場合、バースデーケーキが出されるときに、そのお店で働いているウェイターやウェイトレスの人達がみんなでハッピーバースデーの歌を合唱してくれます。ウェイターやウェイトレスはとても大きな声で歌うので、レストランに食事に行って、偶然に誕生日パーティに出くわした時には、ちょっとびっくりします。

小学校での誕生日パーティ

私立の小学校の中には、金曜日の授業時間の一部を、誕生日パーティのために使わせてくれる学校があります。私の娘の通っていた学校もその1つで、娘のもらってきた誕生日パーティの招待状に、会場は学校の教室、と書いてあるのを初めて見たときには驚きました。学校での誕生日パーティを実際に見たことはありませんが、誕生日の子の親が、クラスの生徒の人数分に足りるように、スナックやお菓子、バースデーケーキを準備してくれて、それをクラスのみんなで食べながら楽しく時間を過ごします。食べ物や飾りは親が準備しますが、先生も同席して、クラスのお楽しみ会のような感じで行われるようです。「プレゼントを持ってこない人は参加できません。」と招待状に書いてあるのを見たことがありますが、娘によると、実際には、プレゼントをちゃんと持ってくる人の方が少ないそうです。(招待状をちゃんと家に持って帰って親に見せる、親が誕生日会の日を覚えていてプレゼントをちゃんと準備する、など、プレゼントが準備できるまでには、いくつかのハードルがあるので、プレゼントの準備を徹底するのは難しいのだと思います。)

家での誕生日のお祝い

うちは、夫が誕生日パーティはしない主義だったので、私の娘達の誕生日は、家でささやかにお祝いをするようにしていました。大分前になりますが、私がザンビア大学医学部の大学病院で研究のコーディネーターの仕事をしていた時に、クリスマスに手作りのケーキを持って行ったのをきっかけに、病院スタッフの1人から「お金は払うので、息子のバースデーケーキを作って。」と頼まれたことがありました。私はお菓子作りが好きで、普通のお菓子作りには慣れていたので、できるかなと思って引き受けたら、バースデーケーキはデコレーション技術を必要とするので勝手が違って、試行錯誤で何とか仕上げたという経験があります。(ケーキの上に、クリームでうまく文字が書けなかったので、ビスケットをアルファベットの形に焼いて、それを並べて、何とか仕上げました。)娘たちの誕生日にも、長女が幼稚園に通っている頃くらいまではバースデーケーキを手作りしていましたが、その後は気力が続かず、普通のお菓子を作るか、ケータリングビジネスをしている友人に頼んで作ってもらうようになりました。

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三女の誕生日
ケータリングビジネスをしている友人に作ってもらったバースデーケーキと一緒にポーズ(左から次女、三女)

このように、ザンビアでは、誕生日のお祝いの仕方は、家族によって様々ですが、子ども達が集う楽しい機会を提供してくれます。また、ザンビアでは、子供が5歳になる前に亡くなってしまう率が非常に高いので(乳幼児死亡率:83/1000人, 2012年 *2)、誕生日が来る毎に、子どもが1年間元気に過ごしたことを、親や家族が切実に喜び、お祝いする意味合いも強いと思います。


  • *1 日本のアパートのような集合住宅
  • *2 Countdown country profile (UNICEF/WHO and partners)
筆者プロフィール
aya_kayebeta.jpgカエベタ 亜矢(写真右)

岡山県生まれ。1997年千葉大学医学部を卒業後、東京大学医学部小児科に入局(就職)、東京都青梅市立総合病院小児科勤務を経て、2000年にJICA技術協力プロジェクト(プライマリーヘルスケア)の専門家としてザンビアへ渡る。その後、ザンビア人と結婚し、3人の娘(現在、小4、小5、中1)を授かる。これまでザンビアで、小児科医として、HIV/AIDSに関する研究、結核予防会結核対策事業(コミュニティDOTS)、JICAプロジェクト(都市コミュニティ小児保健システム強化)等に携わってきた。一方、3人の子どもの母親として、日本から遠く離れたアフリカ大陸で、ギャップを感じつつも、新たな発見も多く、興味深い子育ての日々を送ってきた。
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