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【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第20回 競馬場での誕生日パーティー

要旨:

保育園のクラスメートのお誕生日会に招待された息子。場所はなんと競馬場!広い敷地内で馬の生態を学んだり、乗馬体験をしたり、間近で見る大きな馬たちに、子どもたちは大興奮。さらに、男の子たちは厩舎でのワラ合戦でヒートアップ!その成長ぶりに目を見張った。また、屋内のパーティー会場では美味しいスイーツを頂いたり、冷たい飲み物がふるまわれたりと、大人も子どもも楽しめる素晴らしいパーティーだった。

一年で一番昼間が長い夏至の頃、ベルリンでは朝4時半頃にお日様が姿を見せ、夜9時半頃まで沈みません。つまり、朝は5時頃には明るくて目が覚めてしまい、夜は10時頃まで明るいのです。ですから、仕事を夕方早々に切り上げて、ビヤガーデンや公園など屋外で「第二の一日」を楽しむ人々も多いようです。

そんな気持ちの良いある日曜日、息子は保育園で仲良しのF君から5歳の誕生日パーティーに招待されました。以前もお伝えしたように、ドイツではお誕生日の人がゲストを招待して、パーティーを開く習慣があり、子どもが小さい頃は、親がその準備をします。

お誕生日会の10日程前、F君名義でママから私たちに招待メールが届きました。そこには「6月O日に午後3時から6時までKarlshorstで誕生日パーティーをします。参加できるか教えてね。また、僕の欲しいものリストは下記のとおりです。」と書いてありました。

「プレゼントのリスト?!」と驚く読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、ベルリンでは事前に欲しいものを招待客に知らせておくことは、別に珍しいことではなく、普通のことです。かくいう私も、アメリカ在住時代に友人から出産前の「ベビーシャワー」と称したパーティーに招待されましたが、この時もベビー用品がずらりと並んだリストを渡されました。「この中のものをギフトとして持ってきてくれたら嬉しいわ。」と言われ、非常に驚いた記憶がありますが、今となってはプレゼントが無駄にならないための合理的なシステムなのだ、と納得しています。

またKarlshorstという場所ですが、繋駕速歩競走(けいがそくほきょうそう)という、騎手が競走馬のうしろにあるリヤカーのような繋駕車に乗って競走をする競馬場です。ドイツでは馬だけの競争である競馬よりもこの繋駕速歩競走の方がポピュラーとのこと。

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繋駕速歩競走(けいがそくほきょうそう) Copyright © 2004 David Monniaux

また、「競馬場で5歳児のお誕生日会!?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、当日はレースは行われておらず、その雰囲気も、日本の競馬場のものとは大きく異なり、どちらかというといくつもの馬場や厩舎、広場のある東京世田谷の馬事公苑のような感じです。といっても、その大きさは馬事公苑の2倍以上、東京ドーム8個分以上!緑がどこまでも広がる広大な敷地内には、いくつもの馬場や厩舎の他に、子ども用の公園や遊具、パーティーなどが開催できる施設があり、老若男女、ベルリン市民の憩いの場となっているようでした。

さて、「F君からのメール」を息子に伝えると「行く行く!」と二つ返事。プレゼントは夫と相談して、リストにあった「プレイモービル」というブロックのおもちゃにしました。

当日は幸い朝から晴れあがり、気持ちの良い夏日です。最寄りの駅から歩くこと約5分、競馬場が現れました。集合場所の遊び場に到着するや否や、F君は息子に駆け寄り「来てくれたんだね!ありがとう!」と抱きついて挨拶。息子も早速「おめでとう!」と言って、プレゼントを渡しました。

F君がプレゼントを開けているうちに、次々とお友達が到着。8人全員揃うと、F君のママが「ではパーティー会場に行きましょう」と近くにある敷地内の施設に促します。建物の中に入ると、きれいにテーブルセッティングがされており、ケーキや飲み物も準備されていました。特に、テーブルの上には、子どもたちが大好きなグミベアや飴玉などが可愛くちりばめられており、息子は早速頬張っていました。

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パーティー会場

F君のママがお礼とお祝いの挨拶をすると、大人はスパークリングワイン、子どもたちはジュースで乾杯!美味しいスイーツを次から次へと平らげていきました。

一通り皆のおなかが満たされると、F君のママが再び「では移動しましょう。みんな、ヘルメットをかぶってね!」と音頭をとります。そう、この日の持ち物の中に「自転車用のヘルメット」というのがあったので、何に使うのかしら?と思っていたのですが、どうやら子どもたちは乗馬体験をさせてもらえるようでした。

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馬場と厩舎を遠くに臨む

広い敷地をゆっくり歩いて移動する途中、あちこちに馬を見かけました。間近で見る大きな馬たちに、子どもたちのテンションは上がる一方!厩舎に移動すると、まずは職員の方が子どもたちに馬の説明をしてくれます。

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熱心に聞き入るヘルメット姿の子どもたち

馬の体の構造や繋駕速歩競走についてなど、大人が聞いても非常に興味深い内容でした。一通りお話が終わると、いよいよ乗馬体験です。最初に馬にまたがるのは、勿論、バースデーボーイのF君。その後は、順番に一人一人乗せてもらえます。厩舎の近くで遊びながら待っていると、程なくして息子の番が回ってきました。以前にも乗馬経験がある息子は、落ち着いて馬にまたがり、見晴らしが良いからか、満足げな表情で鞍に手をかけています。

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将来はジョッキー?!

一通り皆が馬に乗った後は、厩舎に戻って馬にニンジンをあげたり、なでたりして感謝の意を伝えます。

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人参どうぞ

子どもたちが乗馬体験をしている間、パパやママたちはずっと日の当たる屋外にいたので、「ちょっと休憩をしにパーティー会場に戻りましょうか」などと話していたのですが、4-5歳の男の子たちのパワーはとどまるところを知りません。空いている馬房を発見すると、すかさずそこでワラの投げ合いが始まりました。転んでも痛くないのか、5人のボーイズがお互いにワラをぶつけ合っては転んでの繰り返しを猛スピードでしています。そのあまりのパワーに、最初は私もハラハラして「こっちにいらっしゃい!」と息子に向かって叫んではみたのですが、息子は全く耳を貸さず。他の男の子たちのアタックにひるむどころか、倍返しで向かっていく始末。いつの間にか心身ともにたくましくなった息子に嬉しい驚きを感じる一方で、けがをしないかどうかハラハラしどおしでした。

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かなり激しかったワラ合戦

ヒートアップしてきたので、親たちが「もうおしまいよ!」と一斉に声を張り上げたところで、ようやくワラ合戦もひと段落。汗びっしょりの子どもたちは、再びパーティールームへ戻り、スナックタイムとなりました。冷たい飲み物の他に、F君ママの持ち寄りの野菜スティックやミートボール、ソーセージや、子どもたちの大好きなお菓子がふるまわれます。気持ちも胃袋も落ち着いた頃にお開きの時間となりました。

普段なかなか間近で見ることのない馬にふれたり、その生態を学んだり、同年代の子どもたちと一緒に体を思い切り動かし、満足気な表情を浮かべる息子。親にとっても、緑広がる野原で非常にリラックスし、楽しめた素晴らしいお誕生日会でした。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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