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【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第21回 ドイツ流夏休みの過ごし方

シュリットディトリッヒ桃子

2013年9月13日掲載

要旨:

夏休み中、ドイツ北部の街に家族旅行へ出かけた。宿泊先はユースホステル。休暇期間が短い日本ではサービス満点、質重視の施設に宿泊するのが我が家の常だったが、長期休暇を習慣とするドイツでは、自然の中のリーズナブルな料金の施設が人気の模様。到着日には施設の簡素さに驚いたが、宿泊していた子どもたちと汗びっしょりになって遊んだり、森を散策し、湖で魚と戯れるなど、都会ではなかなかできない体験を心から楽しんでいる息子の様子を見て、小さな子連れ旅行としては大成功だったと思った。

4歳の息子が通う保育施設では、7月に3週間にわたり夏休みでした。この休み中、前半は息子と私で日本へ里帰りし、後半は家族3人でドイツ北部のSchwerinという街に行ってきました。

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現在はMecklenburg Vorpommern州の州議事堂として使用されているSchwerin城

日本に住んでいた時は、夏休みは今ほど長くなかったので、どちらかというと質重視で宿泊先を選んでいました。温泉やエステがついて、食事にもこだわった、至れり尽くせりのちょっと贅沢なホテルや旅館に数日滞在、というのが定番でした。

ドイツにもエステやマッサージがついたホテルもありますが、宿泊期間が長いと、当然その分コストもかさみます。数週間の休暇中、自然に囲まれたところでのんびりとリフレッシュするために、子連れファミリーには、山の中のキャンプ場や、部屋や設備は簡素でも価格がお手頃な施設が人気の模様。ちなみに、今回私たちが宿泊したユースホステルは一泊二食(しかも食べ放題)付きで、大人一人22ユーロ(約2800円)、子どもは半額の11ユーロ(約1400円)と破格の料金です!

実は、ユースホステル未経験の私は、当初「若者が泊まる、安価だけどサービスと清潔さに関してはあまり期待できない所」というイメージをもっていたので、少し不安でしたが、その直前の日本への里帰りで財政的に限られていたこともあり、この値段は大きな決定要素でした。さらに、湖のほとりという素晴らしいロケーションの上、「子連れ家族大歓迎」とのこと。

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バス停からユースホステルまでの道

ワクワクしてベルリンから電車で3時間、さらにSchwerin中央駅からバスで30分ほど揺られ、遥か遠くまで続くとうもろこし畑を抜けると、宿泊施設最寄りのバス停に到着です。そこから、のどかな牧草地帯を10分ほど歩いていくと、バンガローが並んでいる広い野原が見えてきました。

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とにかく広い敷地:遠くに見えるオレンジの建物がバンガロー

早速、チェックインのため受付に向かうと「受付は夕方4時半から午後8時までと、朝9時のチェックアウト時のみ開いており、水やビールはこの時間帯に販売します。夕食は6時から7時、朝食は8時から9時の間ですから、時間になったら隣の建物の食堂に来て下さい。」といった説明を受けました。そして、シーツと枕カバーが手渡されます。そう、ユースホステルでは自分でベッドメイキングをしなければならないのです。

「なるほど」と軽く驚きを覚えながらあてがわれたバンガローに入り、部屋のドアを開けると、なんとそこには二段ベッドが二つと小さなクローゼットと机しかありません!気温30度を超える暑さの中、クーラーも冷蔵庫もなく、さらにトイレ、シャワーは共同です。ドイツでは、都市部でもあまり自動販売機は見かけませんが、当然、そんな便利なものがここにあるはずはありません。先程、受付で飲み物の販売は夜8時まで、という説明を受けた理由が、ここにきて理解できました。

ある程度、予想はしていたものの、あまりの質素さに最初は言葉が出ず、日本の中学校時代の林間学校をただただ思い出すばかり。「宿泊料を多少余計に 払ってでもいいから、もう少し設備の整ったところに泊まりたかった・・・」というのが本音でした。旧東ドイツ出身の夫ですら「25年前から時間が止まっているみたいだな」と苦笑い。しかし、初めて見る二段ベッドに大興奮している息子だけは、ベッド上段に陣取り「わーい、僕、今日はこの高いところで寝るんだ!」と大はしゃぎしていました。

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簡素な部屋

浮かれている息子を横目に荷解きを済ませると、夕食の時間です。気を取り直して食堂へ向かうと、既に何組かの子連れ家族がセルフサービスのカウンターで食べ物を受け取っていました。この日のメニューはソーセージとマッシュポテトとザワークラウト(キャベツの漬物)という典型的なドイツ料理。ドイツ人の夫と息子は大喜びでしたが、味は可もなく不可もなく・・・そんな中、同じく小さな子連れ(幼稚園から小学生くらい)の家族の会話が耳に入ってきます。

よく耳にしたフレーズは「あと一回、同じことをしたら、うちに帰りますよ!」何度言っても親の言うことを聞かない子どもに向けての最後の一言で、私たちも時折口にするこの文句。「どこの家庭でも同じことを言っているのね」と思わず夫とニヤリとしてしまいました。

また隣のテーブルでは、食事中に大きなゲップをした10歳位の少年がお父さんに「お前の夕食はもうおしまいだ!外で待っていなさい」と、力づくで文字通り食堂の外につまみ出されていました。「犬と子どもの躾はドイツ人に任せなさい」という文句は最近の甘い親たちには通用しないと言われる昨今ですが、まだまだ躾に厳しい親も多いのだな、と思った食堂タイムでした。

さて、夕食後はまだ7時。夏の間は日が長い欧州では、日没まで2時間以上あります。が、あの簡素な部屋に戻っても寝る以外することがありません。一方、広大な敷地内には野原が広がり、バスケットボールやバレーボールのコートや砂場の他、鶏や鴨が歩いていたり、大きな木の下には所々にベンチも置いてあります。お腹が満たされて元気いっぱいな息子は砂場や広場で遊び、夫と私はそれを見ながら受付で買ったビールを手に、木陰のベンチで涼むことにしました。

しばらくすると、同じく広場で遊んでいた他の子どもたちと息子が言葉を交わし始めた様子。幼稚園児と小学生の初対面でも、きちんと握手をして自己紹介しているのを見て「いかにもヨーロッパっぽいなあ」と観察していると、一緒に砂で遊んだり、少し年上のお兄ちゃんとはサッカーをするまでになっていきました。普段は少し引っ込み思案な面がある息子ですが、既に打ち解けている様子が見られます。汗びっしょりになって他の子どもたちと一緒に日没までたっぷり遊んだ後は、シャワーを浴び、コロッと眠りに落ちてしまいました。そんな彼を見て「息子のためにもここに来てよかったのかもしれない」と、私も少しポジティブモードに切り替わってきました。

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宿泊している子どもたちとお砂遊び

さて、ユースホステルから3分程歩くと、美しいSchwerin湖が目の前に広がります。翌日の朝食後は、泳ぐスポットを見つけるべく湖畔を散歩し始めました。人間の手があまり加えられていないこの湖では、湖畔といっても常に水辺であるわけではなく、途中から木がうっそうと生い茂る林になっています。

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湖畔の林を散策

朝のひんやりとした森の空気を吸いながらの散歩は格別なもの。息子も道中、木に集まっている大きなかたつむりたちや、頭上で「コンコンコンコン」と木に穴をあけているキツツキを見つけたり、なかなか都会では見られない光景を目にしながら、好奇心一杯で歩いています。しばらく歩いていくと、10メートルほど続いている白い砂浜を発見!既に他の家族連れが湖に入って遊んだり、泳いだりしています。どうやら遠浅のようで、沖の方まで歩いて行ける模様。水はきれいで透明度が非常に高く、魚も沢山見えます。

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お魚も沢山泳いでいる湖

早速、足を入れてみると、ひんやり気持ち良い!周辺の人々との距離も程よく、浜辺に寝そべったり、本を読んだり、子どもと水を掛け合ったりと、皆さん思い思いにリラックスしているのがわかります。私たちも宿泊中はこの砂浜に陣取って、泳いだり、砂のお城を作ったり、お昼寝したりとのんびりと過ごしました。

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湖に入っていく息子

初日にユースホステルに足を踏み入れた時は、その簡素さ、不便さにショックを受けました。しかし、息子が自然に触れ、普段、都会では目にしないものを発見したり、美しい湖でパパと泳いだり、同じ宿泊施設に泊まっている子どもたちと楽しそうに戯れ、全力で遊んでいた様子などを振り返ってみると「お金はかけなくても、自然の中でリラックスして、家族全員が楽しめるドイツ流家族旅行もなかなか乙なものだな」と、意外にも満足できた夏の旅でした。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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