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【ニュージーランド子育て便り】 第2回 夏のクリスマス

要旨:

ニュージーランドのクリスマスシーズンは夏の到来と重なる。子どもたちも夏休みに入り気分的にも明るい季節であるが、家族的なクリスマスの雰囲気は日本で過ごす冬の正月を彷彿させるものであった。クリスマスまでの1ヶ月の間に2つの大きな恒例イベントが開催され、街もクリスマスムード一色になった。

年末になりニュージーランド(以下NZ)は、ようやく夏らしくなってきました。私たちの住むオークランドは一日の天気の変化が激しいのですが、夏になると一日晴れていることが多くなりました。日没も遅くなり夜8時過ぎまで明るいので、大人の私でさえ外に出かけたい気持ちに駆られます。この時期はちょうどクリスマスシーズンの到来とも重なります。私たちも娘にNZらしいクリスマスを体験してほしいと思い、慌しく過ごしています。

NZでは、12月半ばから1月末頃まで日本の小中高にあたる学校の夏休みです。学校は4ターム(学期)制をとっており、新年になると新しい学年が始まります。基本的には1タームが10週間続いた後に2週間のスクールホリデーという繰り返しですが、夏休みだけは約1ヶ月半という長い休みになっています。このターム制にプレイグループもならうため、娘の通っていた各プレイグループも12月の1、2週目にクリスマスの催しをして終わってしまいました。大人もまた、会社によっては1ヶ月程度の休みに入るというところも少なくないようです。この期間は家族と過ごす時間をたっぷりとるようです。(余談ですが、移民の多いオークランドでは、このスクールホリデーの期間を利用して子どもを母国に連れて行く人も多いようです。多くの北半球の国とは季節が逆なので休みの期間がずれることが多く、現地の学校に通学する経験をしている子どももいるようです。南半球ならではですね。)

オークランドのクリスマスは、11月25日のSanta Paradeから始まりました。これは、オークランドの中心部にサンタのパレードがやってくるという文字通りのイベントです。私たちも開始2時間前から場所をとっていましたが、続々と人々が集まり、パレードが始まるころには、オークランドにこんなに人がいたの?というほど年齢も人種も様々な人々でメインストリートは埋め尽くされました。パレードの内容はクリスマスムードたっぷりなものだけなのかと思っていましたが、オリンピックのメダリスト、韓国・中国・日本などの移民の集団、企業の商品やサービスの宣伝が前面に出されているもの、子どものクラブの行進のようなもの、と様々でした。まるで、このNZ社会を構成している人々の1年の終わりの発表会のようでもありました。

パレードの最後にサンタクロースがやってきました。娘ははしゃぎすぎて疲れたようでサンタクロースが来る直前に寝てしまいましたが、周囲は大人も子どももサンタクロースを喜んで迎えていました。このパレードの日を境に街の飾りなども増え、クリスマスの雰囲気が一気に高まりました。

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Santa Paradeの最後にやってきたサンタクロース(サンタクロースは見慣れた冬服です)

その後、12月8日の夜には、オークランド中心部の端にある大きな公園でChristmas in the Parkというイベントがありました。3時間ほどの野外クリスマスコンサートの最後に10分ほど花火が打ち上げられ、こちらもまた圧倒されるほど多くの人々が集まっていました。小さい子ども連れの家族、十代の友達同士、若い恋人同士、高齢の夫婦など年齢も幅広い上に、椅子を家から持ってきて座っている人、シートに寝そべっている人、立っている人、コートを着ている人、半袖の人、など態度も服装も様々でした。多くの人が食べ物や飲み物を持参して家族でリラックスしている姿に、日本のお花見や運動会を少し思い出しました。

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Christmas in the Parkに集まってきた人々(夜8時頃)

この2つはNZに来て以来の大きなイベントでしたが、日本にいた頃はイベントというと、あるイベントには若者だけが行き、あるイベントには子ども連れだけが行くといった具合に、集まっている人たちは同じような人たちであることが多かった気がします。ところが、NZは人口が少ないためか大きなイベントは限られており、何かあると町中の人たちの話題になります。夫の会社の知人も娘の友人家族も、ほとんどの人が参加しているような状態になり、イベントが終わった後もその話題でもちきりになります。日本では子連れで出かけると周りに迷惑をかけていないかと常に気遣っていた気がしますが、NZでは子どもがいることも当然とみなされている気がして気楽です。娘は、パレードでは隣に座った家族からお菓子を分けてもらい、コンサートでは酔っていい気分になったお姉さんから光るスティックをもらっていました。NZで一番の大都市にも関わらず、こういう場所では周囲の人々とのふれあいが自然で素朴な感じがします。

こうした大きなイベントに加え、会社や友人たちとの数々のクリスマス会、クリスマスキャロルなどのイベントで徐々に盛り上がってきたオークランドですが、クリスマス本番になると街中の人通りはめっきり減っていました。店もレストランもスーパーもほぼ閉まっており、数少ない営業中の店には主に観光客が列を作っていました。

一昔前、家庭では本物の松の木*1がクリスマスツリーにされており、毎朝目覚めると独特の香りがしてクリスマスを実感したそうです。クリスマスには、家族、親戚が集い、女性たちがローストラム/ローストハム/ローストチキンを作り、パブロバ(Pavlova)、クリスマスプディング(日本人がイメージする黄色いプリンとは違い、ドーム型でチョコレート色をしています。イギリスの伝統的な習慣で中にコインを入れるそうです。)などを準備したのだそうです。男性はビールを、女性はワインを大量に飲んだとのことでした。(NZでは移住前の土地の習慣を受け継いでいることもあるので、家族により多少の違いはありそうです。)今は、本物の松の木であることが減り、食べ物も伝統的な料理を作る人もいればBBQを楽しむような人もいるようです。以前よりカジュアルになったクリスマスですが、家族で祖父母の家を訪ね、集って料理を食べ、大人たちは大量のアルコールを飲むということには変わりないようです。クリスマスに向けて家族や親戚などから集まってきたプレゼントは、次々とクリスマスツリーの下に置かれ、子どもたちは25日に一斉に開けます。わが家もせっかくなので、夫がローストハムに、娘はPavlovaのクリームやフルーツの飾りつけにチャレンジしました。プレゼントもクリスマスツリーの下にためていき、25日に一気に開けました。たくさんのギフトを一気に開けるという人生初めての経験に娘は大興奮でした。なお、NZでは26日もボクシングデーという休日です。ボクシングデーの由来は、その昔ヨーロッパで貧しい家庭に寄付をしたクリスマスプレゼントを開ける日だった、主人が使用人に対して贈り物をおくった日だったなど諸説あるようです。そのような由来はさておき、26日は一大セールの日でまるで日本の初売りのように街中は買い物客で大賑わいでした。

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Pavlova(NZのクリスマスで食べるメレンゲのケーキ)

この1ヶ月クリスマスムード一色でしたが、まるでお正月のような家族的なあたたかい雰囲気を満喫しました。そうはいっても2歳の娘にとっては、ただ単に親にいろいろな場所に連れまわされた日々だったかもしれません。親はNZらしい体験をと願っていたのですが、むしろホリデー中で私とふたりで過ごす時間が増えたせいか、娘は日本語が一気に上達するという意外な成長をしました。ホリデー明けにはまたNZの英語生活に順応して楽しく過ごしてくれればと願っています。

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思わず買ってしまったクリスマス仕様のオムツ


  • *1 日本にいた頃はクリスマスツリーと言えばモミの木という印象がありましたが、NZだけでなくヨーロッパでも松のクリスマスツリーは使われているそうです。現在もNZでは本物のクリスマスツリーを飾る際には松が使われることが多いとのことで、図書館をはじめところどころで目にしました。
筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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