昨年夏に渡独して以来、息子は英語とドイツ語のバイリンガル保育園に通っていますが、多言語都市ベルリンではこのようなバイリンガル保育園は珍しくなく、50以上の多言語保育園が存在しているそうです。言語に関しては、ドイツ語と英語の組み合わせ以外にも、ドイツ語とスペイン語、ポルトガル語、トルコ語、フランス語、イタリア語、ロシア語など様々な言語で運営されています。
各園に通うきっかけとしては、以下のものが多いようです。
- 親がドイツ以外の国の出身者であり、母国語を子どもにも身につけてもらいたいから
例えば、イタリア人の母親とドイツ人の父親の間に生まれた子どもがドイツ語とイタリア語のバイリンガル保育園に通うというケース。 - 子どもが小さい頃から英語に触れさせるため
これは英語-ドイツ語のバイリンガル園に限ったことですが、国際語の英語を子どもの時から身につけてもらいたい、という願いは日本の親と同様のようです。ただし、日本のように「子どものための英語教室」というのはあまり見かけたことがありません。 - 近所に空きがあった保育園がたまたまバイリンガル園だった
知り合いのタイ人ママは、夫がドイツ人ですが、近所で唯一入ることができた保育園が偶然にもドイツ語-ポルトガル語バイリンガルだったため、子どもは親の母国語二つに加え、ポルトガル語も話すようになったと言っていました。
バイリンガル保育園は、日本では日-英語が圧倒的に多く、かつ私立の施設である場合がほとんどのため、保育料金も高いと記憶しておりますが、ベルリンの場合はドイツ語モノリンガル保育園と同様に、基本的には保育料は無料です。
息子に関して言えば、渡独時には近所の保育園に空きがなかったので、少し離れてはいますが義姉が経営する保育園に「特別家族枠」で入れてもらいました。それがたまたま独-英語のバイリンガル園だったわけです。そこでは、現在5人のドイツ語の先生に加え、2人の英語母国語話者(カナダとアメリカ出身)の先生が担当しています。
基本的にはドイツ語の先生はドイツ語のみ、英語の先生は英語のみを常に話す、いわゆるイマージョン方式がとられています。週一回、音楽の時間があり、オランダ出身の先生が来てくださいますが、この授業も英語で行われます。
クラスメートの40%の親はドイツ以外の出身ということで、英語とドイツ語の両方を母国語とした子どもも多くおり、彼らは英語の先生たちと英語でコミュニケーションをとることができます。ちなみに、親の保育時間に参加した際、ドイツ語が不得手な私は英語のみを使いました。すると、子どもたちはそれをすんなりと受け入れてくれ、発話の程度の差はありましたが、彼らのほとんどは英語を理解しているようでした。
また、言語のみならず、文化や風習を身につけるため、ドイツの伝統行事に加えて英語圏の行事も行われています。このため、年中イベントには事欠きません。
例えば、11月第4木曜日はアメリカの感謝祭(Thanksgiving)ですが、この日、息子の通う保育園ではこれに加え、ドイツの伝統である提灯パレード(Laternenumzug:聖マーティン祭)の両方を同時に祝いました。ちなみに、アメリカでは感謝祭はクリスマスの次に大きな行事で、親戚一同が集まり、七面鳥の丸焼きなどのご馳走を頂きます。
また、ドイツの提灯パレードは毎年11月11日ごろに行われる行事で、主に幼稚園児など小さな子どもたちがお手製の提灯を手に、歌を歌いながら道を練り歩くというものです。この日から正式な冬が始まる、という意味合いもあるようです。
この日のために、数日前から子どもたちは感謝祭の羽根飾りを作ったり、パレード用の提灯を作ったりしていました 。当日は午後3時半から感謝祭のポットラックパーティ(持ち寄りパーティ)、その後、十分暗くなった5時半ごろから提灯パレードというスケジュールでした。保護者はそれぞれ担当の料理を持ち寄り、メインディッシュの七面鳥は先生方が園で焼いてくれました。一歩、園内に入ると美味しそうな匂いです!
持ち寄りのお料理と子どもたちが作った感謝祭の羽根飾り
また、アメリカ人の先生はマカロニチーズを、他のアメリカ出身の保護者たちもパンプキンパイやクランベリーパイなどを持ち寄り、テーブルの上は本場のアメリカンフードが沢山!七面鳥も合わせて、本格的な感謝祭メニューとなっていましたが、唯一、ここがドイツだと思い出させてくれたのが、グリューワイン (香辛料を入れて温めたワイン)。保育園でアルコール?!と最初は驚きましたが、外は既に氷点下近い温度ですので、提灯パレードに備えて景気づけが必要なのかもしれません。
私は息子が大好きないなりずしを作り、持参しました。息子は大喜びで頬張っていましたが、最初は色々な国籍の人たちに受け入れられるのか心配でした。しかし、おすしのイメージが良いからか、幸いにも好評であっという間になくなりました。
お腹がいっぱいになった後は、アメリカ人の先生が感謝祭の由来についてお話をしてくれ、子どもたちと一緒に感謝祭にまつわる歌を英語で披露してくれました。これらの歌も数日前から練習を重ねてきており、息子も毎日のように家で口ずさんでいました。しかし、肝心の本番では恥ずかしがってしまい、私の後ろに隠れたまま。来年は歌の発表も頑張ってほしいものです。
星を見ながらパレード
さて、5時を過ぎパーティが終わりに近づくと、夜が早い11月の外は既に真っ暗。各自提灯を持って外へ出ます。この手作り提灯は、定番の筒型に加え、星形や顔の形など様々、子どもたちの個性が出て興味深いものでした。近くの公園に行って、皆で提灯パレードにちなんだ歌を歌ったりしましたが、何せ真っ暗闇の中、提灯のぼんやりとした灯りだけが頼りという状況。はたから見ると、少し怪しい集団のようにも見えます。ほどなくして解散しましたが、子ども達にとっては、エキサイティングな午後だったようで、息子は帰宅早々、眠ってしまいました。
提灯の灯りだけが頼りの公園にて
次の大きなイベントはクリスマスパーティ。クリスマス近くなると休暇をとる家族も多いとのことで、例年、クリスマスの2週間程前にパーティは行われます。今年はどんなパーティになるのかな?
街道沿いにクリスマスのイルミネーションが飾られていた帰りの路面電車の駅にて