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【ザンビアの子育て・生活事情】 第3回 ザンビアの子どもの遊び方

要旨:

ザンビアの女性が一生のうちに産む子どもの数の平均は5.7人で、子どもが多い社会である。コンパウンドでは、貧しく厳しい現実にも関わらず、子どもが元気に遊ぶ姿があちこちに見られ、活気に満ちている。ゴム跳び、タイヤ転がし等の遊びに加えて、サッカーは、広く親しまれているスポーツだ。誰とでも遊べるというのがザンビア式遊びのスタイルで、年少の子どもの面倒は、年長の子どもや他の家族の大人が見てくれるなど、子どもを安心して遊ばせられる環境がある。
Keywords:
コンパウンド、ゴム跳び、タイヤ転がし、ウォータースプラッシュ、トランポリン、サッカー

ザンビアの女性が一生のうちで産む子どもの平均数は約5.7人 *1(日本は1.43人/2013年)です。ザンビアの都市部には、非計画居住区(コンパウンド)といって、所得の低い人達が暮らす、人口が密集している地区があります。コンパウンドの中では、あちらこちらで子ども達がグループで遊んでいる風景を見ることができます。私はこれまで、仕事でコンパウンドに足を運ぶことがしばしばありましたが、子ども達は外国人の私を見ると、「ムズング(肌の色の白い人=外国人)!」と、好奇心旺盛に、笑顔で駆け寄ってきます。英語が少し話せる子どもは、「How are you?(ご機嫌いかが?)」と話しかけてくることもあります。これに、「I'm fine. How about you?(元気ですよ。あなたはどうですか?)」と答えると、「Fine, and you?(元気です。あなたは?)」と、またこちらに戻されて、会話が堂々巡りになってしまう、ということもよくあります。彼らにとっては、自分達の家の近くで外国人の姿を見かけることは、その日の一大イベント。非常にエキサイティングで、面白い事のようです。コンパウンドで暮らす人達の生活状況は、貧しく、非常に厳しいですが、子ども達が元気に遊ぶ姿と声は、厳しい現実を和らげてくれる効果もあるような気がします。中間層以上の人達の住む住宅街では、子ども達は家の敷地内で遊ぶので、道端で子ども達の姿を見かけるのは、学校の行き帰りや買い物かどこかに行く途中に歩いている姿のみで、遊ぶ姿はあまり見かけません。

ザンビアの子ども達の遊び

コンパウンドの中でよく見かける女の子の遊びの中に、ゴム跳びがあります。最初にゴム跳びをしているのを見かけたときには、「日本と同じ遊びがザンビアにもあるんだ!」と感心したのを覚えています。コンパウンドの子ども達は、ありあわせの物を活用して遊び道具にしますが、ゴム跳びに使うゴムも、自転車のタイヤに使われていたゴムや洋服のゴム等、使わなくなったゴムをいくつもつなぎ合わせて作ります。日本のゴム跳びと同様に、2人の人で、或いは木等に長い輪になったゴムを渡して、それを1人が跳びます。日本のゴム跳びと比べると、ザンビアの子ども達の跳び方は、シンプルですが、長い脚と跳躍力で、ダイナミックな印象を受けました。

男の子の遊びでよく見かけるのは、タイヤ転がしです。これも、ありあわせの物を活用して作ります。自転車の車輪を使ったものから、空き缶等の丸い物をタイヤとして代用して、それを針金でつなぎ合わせて転がす、というものまで、形状は様々ですが、車輪状のものを転がして動かすことを楽しむ、という点は共通しています。

富裕層の人達が住む家にはプール付きの所もありますが、一般の人達にとって、プールに行ける機会はなかなかありません。暑い日に、子ども達が手軽に楽しめる水遊びとして、ウォータースプラッシュ、というものがあります。これは、バケツに水を汲んだりホースを使って、お互いに水を掛け合う、というものです。コンパウンドでは、生活水も十分に得られない所があるので、ウォータースプラッシュで遊べるのは、十分な水が確保できる所に住む子ども達に限られます。

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ウォータースプラッシュをして遊ぶ女の子達

ザンビアには公共の遊び場がないので、子どもを外で遊ばせるには、家の敷地内以外では、車でロッジ(大きな庭付きの宿泊施設)やカフェの屋外に併設されている遊び場に出かける必要があります。これらの遊び場では、たいてい、ブランコ、滑り台、シーソー等、日本の公園にもある一般的な遊具に混じって、トランポリンがあります。地面に穴を掘って、地面と同じ高さにトランポリンを埋め込んであるタイプのものは、子どもが落下する危険もなく頑丈なので、安心して遊ばせることができます。

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郊外のロッジに併設された遊び場で、トランポリンに集う子ども達

子どもから大人まで人気のサッカー

アフリカの多くの国同様に、ザンビアでも、サッカーが最もポピュラーなスポーツです。国の代表チームは、チポロポロ(弾丸)という愛称で国民に親しまれていますが、1993年の飛行機墜落事故で選手の多くが亡くなってしまいました。その後は、なかなか思うような結果が残せず、苦戦を強いられていましたが、2012年のアフリカネイションズ杯で、数ある強豪国を破って優勝するという快挙を成し遂げました。ザンビアでタクシーに乗ると、かつては、「ザンビアは、昔はサッカーがとても強くて、どこの国にも負けることはなかった。でも、飛行機事故で選手がみんな亡くなってしまって、それからは苦戦をしているんだ。」と運転手から話をされることが多かったのですが、今では、「ザンビアのサッカー代表チームは、2012年のアフリカ杯で優勝した、とても強いチームなんだ。」と、誇らしげに話してくれるようになりました。コンパウンドの中でも、男の子達がサッカーをしているのをよく見かけます。サッカーボールは、芯に少し重いものを入れて、布や紙を丸めてボール状にして、有り合わせの物を寄せ集めて作ります。2012年の優勝以来、ますますサッカーが盛んになり、サッカーをして遊ぶ子ども達や、トレーニングに励む若者の姿も多く見かけるようになりました。代表選手の中には、貧しい家庭出身の人も多く、アフリカネイションズ杯での彼らの活躍は、コンパウンドに住む子ども達や若者に、夢と希望を与えました。

ザンビアの遊びのスタイル

子どもの数が多いザンビアでは、その日によって遊ぶメンバーも様々、ということがよくあります。また、家族・親せきの付き合いが盛んで、お互いに訪問し合う習慣があるので、友達の家に来ている親せきの子の・・・ちゃん(くん)が急きょ遊び仲間に加わる、ということもよくあります。子ども達は、その場にいる子と遊ぶ、というのが当たり前になっているので、全く初めての子どもが来ても、あまりあれこれ考えずに、取りあえず一緒に遊ぶ、という感じのようです。また、ザンビア人の親御さん達は、女の子と男の子を一緒に遊ばせない傾向があります。これは、親のしつけの1つとして、子ども達に教えられます。昔からの慣習でされているようですが、女の子は女の子らしく、男の子は男の子らしく、そのためには、男女混ざって遊ぶことは適切でない、という感じのようです。個人的な印象ですが、幼稚園や学校では、男女共学の所も多く、男女が一緒に過ごす機会は十分に確保されているので、家で遊ぶ時には男女が分かれていても、子ども達の生活を総合して見ると、バランスは取れている気がします。子どもの数が多いので、男女混ざって遊ぶようになると、統制を取るのが難しくなる場合もあると思います。

安心して子ども達を遊ばせることができる環境

ザンビアの子ども達の間では、コンピューターゲームは、まだ、あまり普及していません。ザンビアの子ども達は、家で1人でゲームなどをして過ごすよりも、同年代の子どもと一緒にいたい、という欲求が非常に強い印象を受けます。私には年齢の近い娘が3人いますが、彼女達が幼い頃、拙宅は、遊び相手を3人確保できる格好の場所として近所の女の子が集う場所となっていました。外国人の母親がいる家なので、ザンビア人の子どもにとっては、最初は抵抗もあったと思うのですが、友達と遊びたい欲求がそれに勝っていたようで、毎日子ども達が訪れました。またザンビアでは、年齢の上の子どもが年下の子どもの面倒を見るのが一般的です。最近は、核家族化が少しずつ広がってきている傾向もありますが、まだまだ大家族も多く、各家に、親以外の大人がいることも多いので、親が不在の場合にも、子ども達を見守ってくれる大人の目が確保できる事も多いのです。そのように他の大人の目もあるので、子ども達が遊ぶ時には、親がずっと見ていなくても、年上の子どもに任せておくことができ、安心です。

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年長の子にベビーカーを押してもらう次女と、
父親の友人に面倒を見てもらう長女(後方のブランコ)


*1 WHO 2012
筆者プロフィール
aya_kayebeta.jpgカエベタ 亜矢(写真右)

岡山県生まれ。1997年千葉大学医学部を卒業後、東京大学医学部小児科に入局(就職)、東京都青梅市立総合病院小児科勤務を経て、2000年にJICA技術協力プロジェクト(プライマリーヘルスケア)の専門家としてザンビアへ渡る。その後、ザンビア人と結婚し、3人の娘(現在、小4、小5、中1)を授かる。これまでザンビアで、小児科医として、HIV/AIDSに関する研究、結核予防会結核対策事業(コミュニティDOTS)、JICAプロジェクト(都市コミュニティ小児保健システム強化)等に携わってきた。一方、3人の子どもの母親として、日本から遠く離れたアフリカ大陸で、ギャップを感じつつも、新たな発見も多く、興味深い子育ての日々を送ってきた。
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