CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【ニュージーランド子育て・教育便り】第38回 新しい祝日マタリキ(マオリの新年)を祝う

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ニュージーランド子育て・教育便り】第38回 新しい祝日マタリキ(マオリの新年)を祝う

要旨:

ニュージーランドでは今年からマタリキの日が新しい祝日になりました。マタリキはニュージーランドの先住民族であるマオリの新年を祝うものです。学校では、マタリキの起源になった9つの星に秘められた意味やマオリの神話を学んだり、マオリの文化やマオリ語が取り上げられました。ランタンを作って、夜に家族で参加したイベントは、小学生くらいの年頃の子どもたちがたくさん参加していました。

ニュージーランドでは今年の4月に正式に法制化され、新しい祝日にマタリキの日が加わりました。マタリキはニュージーランドの先住民族であるマオリの新年を祝うもので、先住民の祝日が国民の休日になるというのは、世界的に見ても稀なことのようです。マタリキとは、マオリの新年にあたり、昨年のマタリキから今年のマタリキの間に亡くなった人に思いを馳せ、今に感謝し、新年に祈りを込めるような時間を過ごすそうです。もともと、多様なマオリの部族が祝ってきたマタリキを国として祝日にするにあたり、日にちの取り決め、祝い方、教育への取り入れ方などを検討するマタリキ諮問委員会が2021年7月に発足しました。こうした検討を経て祝われた初のマタリキは、オークランドだけでも500を超えるイベントが企画されました。マオリの文化を一方的に観察して終わるようなものではなく、文化に敬意が払われている様子が伺え、またマオリの文化を通じて広くニュージーランドの人々も参加し、学び、集うことができ、祝日として良いスタートを切ったように思われます。

マタリキは、新年を告げる9つの星が見えるころに祝われるものです。ニュージーランドの冬になると現れるプレアデス星団が見られる頃を、マオリの人々は新しい季節の始まりと捉えていたそうで、日本名はスバルと言います。ニュージーランドで子どもたちが、日本名はスバルだと教えてくれるまで私は知りませんでしたが、この日本名も含めてニュージーランドではよく知られています。星団を構成する9つの星それぞれには意味があり、それぞれ、Matarikiは「人々の幸福と健康」、Waitī は「水」、Waitā は「海」、Waipuna-ā-rangi は「雨」、Tupuānuku は「土」、Tupuārangi は「木」、Ururangi は「風」、Pōhutukawa は「亡くなった人」、Hiwa-i-te-rangi は「新年への願い」、を象徴しています。そういったわけで、マタリキでは星が重要な意味をもちます。マタリキ諮問委員会の議長にはマオリ天文学の教授が就任就任しています。

さて、どのように祝われたかについて話を移したいと思います。まず小学校では、祝日に向けて1週間以上にわたり子どもたちは、マオリの文化を学びながら過ごしていました。息子は学校の工作で星とランタンを作ってきました。この星は、Pōhutukawa(Wishing Star:願い星)で、亡くなった人を思い出させるのを助けるのだと説明してくれました。ランタンはマオリの模様が少しかたどられていますが、日本の折り紙で作られるような形にそっくりだなと思いました。

report_448_01.jpg

また、マオリの人々がよく食べるクマラ(さつまいも)をオーブンで焼いて、学校で食べたそうです。うちに帰ってからも家族にも食べさせたいと、学校で教えてもらったようにピーラーで皮を向き、先生に教えてもらった方法で包丁を使い、家のオーブンでも焼いてみました。

report_448_02.jpg

ローストクマラ(スーパーでは、オレンジ、紫、ゴールドの3種類のさつまいもが売られていることが多く、3種類を混ぜました。)

また、小学校の高学年の子どもたちは、全校集会で9つの星の神話にまつわる劇を披露しました。劇を行った子どもたちは全員が上下黒い服を着て、光るライトを手に持って神話の披露をしてくれました。高学年の子どもたちは、息子のクラスよりも本格的なランタンを作成していました。学校でマオリの舞踊であるカパハカ*1 のグループに参加している子どもたちは、外部でカパハカを披露する機会もあったそうです。

インターミディエート・スクールでも同様に1週間ほどは、マオリの文化を集中的に習い、マオリの外部講師を招いて文化を習うという機会もありました。また、希望者は小学校高学年の子どもたち同様にランタンを作成することもできたそうで、娘のクラスでは3名が作成したとのことでした。その他、マオリの文化をより詳しく理解するために、遠足で映画館に出かけてマオリの女性の社会的地位や歴史に関する映画を鑑賞しました。

コミュニティでもたくさんのイベントが開催されました。多くの場所で行われていたのが、ランタンをつくるワークショップです。私たちも息子を連れてランタンづくりに参加しました。竹の棒を組み、マオリの模様が彫刻されている板の上でクレヨンで紙を擦り模様を浮き上がらせます。下に電気のライトをセットすれば、ランタンの出来上がりです。先ほど来、小学校高学年、インターミディエート・スクールで作っていたというランタンは全てこの形です。

report_448_03.jpg report_448_04.jpg

マタリキの週末には、日没後、近所の小高い丘にランタンを持って登るというイベントがあり、参加してきました。山頂に登ったあと、集った人々で「Tutira mai nga iwi (トゥティラ マイ ナ イウィ:ともに集おう人々よ)」という歌が歌われました。ニュージーランドの小学校では低学年の頃に習うマオリ語のフォークソングです。日没後の丘の上では小学校のクラスメイトにたくさん会い、息子もとても楽しかったようです。

Tutira mai nga iwi (ともに集おう人々よ)
Tūtira mai ngā iwi, ともに集おう人々よ
tātou tātou e みんなでみんなで
Tūtira mai ngā iwi, 列をなして
tātou tātou e みんなでみんなで
Whai-a te marama-tanga, 知恵を探し
me te aroha - e ngā iwi! 人々の愛を探し
Ki-a ko tapa tahi, 一つとして考え
Ki-a ko-tahi rā 一つになって動こう
Tātou tātou e みんなでみんなで
report_448_05.jpg

ランタンを手に丘から夜景を眺める

こうして振り返ると、大変充実していて、まるで祝日化する前からのニュージーランドの恒例行事のように思われる方もいるかもしれませんが、オークランドに滞在して10年になる私たちもこのようなマタリキの過ごし方は初めてです。例えば、クマラの食べ方にしても恐らく本来の形に拘れば、ローストクマラではなく蒸し料理になると思います。また、ランタンの作り方も紙の粘着テープをたくさん使い、本来の伝統の形にどの程度近いのかは何とも言えない部分があります。ただ、こうして伝統が、現代も受け継がれるように形作られていく過程を見れたようで、とても興味深い日々でした。亡くなった人や家族に思いを馳せるような静かさを併せもっている雰囲気、人々とのつながりに意識を向けるような行事の雰囲気は、今までのニュージーランドでは体験したことが少なく、夫と私はどこかアジアの雰囲気を彷彿させるものだなという共通した感想をもちました。我が家の子どもたちもマタリキという祝日にとても良い印象をもったようです。


筆者プロフィール
東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

遊び

メディア

特別支援

論文・レポートカテゴリ

アジアこども学

研究活動

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP