今年は、娘と息子が同時に小学校と中学校に入学し、多くの制服や学用品を用意しました。どのようなものを用意し、いくらくらいかかったのか、またこうした制服や学用品に多くのコストがかかることについて、どのような議論がなされているのかを取り上げています。
学用品の支出に関して私が驚いたことをいくつか挙げるとすると、(1)通年、必要に応じて学用品購入の請求がくることはなく、年初の一括購入であること、(2)インターネット教材費も支払う必要があること、(3)ノートパソコン(クロームブック)、タブレット端末(iPad)の類の用意を求められることでしょうか。特に特徴的だと感じるのは、年度途中で費用の請求が来るのは、校外学習の活動に行くことになった時くらいで、教材費の請求が途中で来ることはほぼないという(1)の点です。総額は把握し易いのかもしれませんが、その分、年初の支払いが重く圧し掛かるように思います。また、特にノートパソコンなどの費用や寄付金など高額になるものについては、後述するように学校から借りるなど学校が個々の家庭の事情を柔軟に鑑みる余地が残っています。
また、今回子どもたちが入学した学校は、それぞれ学校指定の制服のある学校です。自由度の高い印象をもたれがちな国なので、意外に思われるかもしれませんが、ニュージーランドでも制服のある学校では、しっかりと制服の着用ルールを守ることが重視されています。例えば、寒さ対策などで上着を着るときにも、制服用の上着、体操着用の上着、以外は厳密に禁止したり、夏服・冬服を着る時期を厳密に区別する学校もあります。要するに、必要なものは、家にある代替品を使うのではなく、全て購入する必要があるわけです。といっても、息子の学校に入学後に知ったことですが、ズボンやスカートに関しては紺色指定になっている学校が多く、必ずしも学校独自のものでなくても可としているようです。その場合、日本円に換算すると1,000円以下の購入しやすい値段で汎用的な制服を量販店で購入することもできます。特に小学生はどんどん背が伸び、洗い替えも多く必要です。学校のロゴがついているのは、上半身のものだけで、下は色さえ揃えていれば指定品でなくても構わないというのはとても合理的だなと思いました。息子の学校も何の変哲もない紺色の制服で、この扱いやすい制服が気にいってこの学校に来たいと思った人も少なくないようです。
娘のインターミディエート・スクールの場合、制服を買える店舗は指定の1店舗でした。靴は学校指定ではありませんが、この時期になると街中の靴屋が一斉に「スクールシューズ」というカテゴリーで販売しているので、その中から選びます。文房具一式も、指定の文房具店のウェブサイトで学校名と学年を入れると、オンラインで文房具一式を購入できる便利な仕組みになっているので、あえて別の店で買う人も少ないと思われます。息子のプライマリー・スクールの場合には、制服は学校で試着をして、合うサイズを調べてくれました。上はポロシャツなのですが、すぐに成長してしまうからとワンピースかと思うくらい大きなサイズを勧められました。その後、指定の業者のウェブサイト上で、必要な数を注文すると、約1週間後に配達されてくるという流れでした。文房具に関しては、インターミディエート・スクールと同じ要領です。
こうして具体的に用意した品物と価格(定価)は以下の通りです。
*日本円は2022年5月現在のレート(1NZドル≒80円)で換算
品目 | 買ったもの | 値段・個数 | 日本円 |
---|---|---|---|
制服 | ブラウス | 50ドル×3枚 | 4,000円x3枚 |
制服 | スカート | 80ドル | 6,400円 |
制服 | スコート | 55ドル×2枚 | 4,400円x2枚 |
制服 | 靴下 | 12ドル×3足 | 960円x3足 |
制服 | セーター | 80ドル | 6,400円 |
制服 | 上着 | 85ドル | 6,800円 |
体操着 | シャツ | 55ドル×2枚 | 4,400円x2枚 |
体操着 | ズボン | 30ドル×2枚 | 2,400円x2枚 |
体操着 | 上着 | 50ドル | 4,000円 |
学校の指定帽子 | 帽子 | 20ドル | 1,600円 |
学校用の靴 | 靴 | 約60ドル | 約4,800円 |
学校用のサンダル | サンダル | 約60ドル | 約4,800円 |
体育用の靴 | 運動靴なら何でもok | 約60ドル | 約4800円 |
ノートパソコン | クロームブック | 300ドル~2000ドル | 24,000円~160,000円 |
文房具一式 | 文房具 | 約50ドル | 約4,000円 |
教材費 | 教材 | 30ドル | 2,400円 |
合計 | 約1,341~3,041ドル | 107,280円~243,280円 |
*日本円は2022年5月現在のレート(1NZドル≒80円)で換算
品目 | 買ったもの | 値段・個数 | 日本円 |
---|---|---|---|
制服 | ポロシャツ | 40ドル2枚 | 3,200円x2枚 |
制服 | ズボン | 35ドル2枚 | 2,800円x2枚 |
制服 | トレーナー | 40ドル | 3,200円 |
制服 | ジャケット | 55ドル | 4,400円 |
帽子 | 帽子 | 20ドル | 1,600円 |
文房具一式 | 文房具 | 約65ドル | 約5,200円 |
教材費 | 教材 | 30ドル | 2,400円 |
合計 | 約360ドル | 約28,800円 |
こうしてリストアップしてみると、寄付金i を除いた総額は、インターミディエート・スクールで1,500ドル前後、プライマリー・スクールで360ドル前後となりました。この他に指定品ではないものとして、2人にはバックパック(リュック)を新調しました。また、お弁当箱と水筒も新学期に用意するものの定番です。なお、全て定価で書いてみましたが、我が家では、リユースすることもすっかり抵抗がなくなっていますので、中古の品で済ませたものも少なくありませんii。それでも、我が家の最終的な負担額は、公立の割には高いなという印象をもちました。これは別に、この学校への不満というわけでは決してありません。学校側の事情を考慮すると仕方がないでしょう。とはいえ、特にインターミディエートに関しては、公立校に子どもを通わせる家庭に負担させて構わないとニュージーランド政府が考えている金額が大きいのだなと思いました。また、息子は新入生なのでこの額ですが、高学年になると体操服の購入が求められます。ただし、前述した通り、年初に一括で支払いが済んでいるため、新学年が始まってからというもの、今のところ一度も追加の請求が来たことがありません。
出費の中で圧倒的に支出が大きくなるノートパソコンについて少し付け加えます。スペックの指定はありますが、機種の指定はないため、値段の幅が数倍になるほど広く、保険をかけるかかけないかでも大きく金額が異なります。我が家でも娘に良い品を買ってあげたい夫と、無くしたり壊したりした時のことを考えてあまり負担にならない品にしたい私とで、機種の選択をめぐり多少揉めました。クラスの子どもたちの家庭でも、同様の議論がなされていたようで、結局のところ、我が家同様、最安値+αくらいのものを用意した家庭が多かった様子です。また、こうした価格が非常に高いものを用意できない時には、まず学校に事情を相談するということになっています。多くの学校では、学校所有のものを貸出してくれるので、用意できない子どもを放っておくことはないとされています。
報道などを見ても、 こうした学校にかかる家庭負担額は「大きい」と捉えている人が多いようです。毎年、学年が始まるこの時期になると、学校への準備の支出の多さがニュースなどで話題になることが増えます。その多くが、制服や学用品が高すぎて用意できない子どもがたくさんおり、学校に通えない原因になっている、といった深刻なものですiii。予測可能な出費なのだから、子育て家庭が準備すべきという声も同時に聞かれますが、どちらにしても、多くの家庭が学用品を用意できていないという状況は、ニュージーランドの大きな課題の1つだと認識されていることに違いありません。慈善団体によれば、新型コロナウイルスの流行後には、こうした支援が必要な子どもたちや学校が増えているとも言われ、その改善が望まれているのが現状です。
- i 近年の労働党の政策により、寄付金を求められる学校はニュージーランド全体で見るとその地域がある程度高所得である学校に限られるようになってきました。学校の運営には必要な資金ですが、支払いが難しい場合には必ずしも払わなくても構いません。また、この支払額のうち、33%は税金の還付という形で手続きをすると翌年度に戻ってきます
- ii 学校の事務室で在校生のサイズがあわなくなった制服や卒業生の制服を安く売っていたり、こちらの記事で取り上げたような店舗でも制服を安く取り扱っています。
- iii 所得や資産の制限などがあるものの、制服や学用品を買う際の費用を貸与する制度(School uniform and stationary)が存在します。それとは別に養子を育てている場合に2月末までに申請することで、年初に0歳から4歳の場合400ドル(約32,000円)、5歳から9歳で450ドル(約36,000円)、10歳から12歳500ドル(約40,000円)、13歳以上は550ドル(約44,000円)の年初補助(School and Year Start-up Payment)が受けられます。