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【ニュージーランド子育て・教育便り】第34回 小学校(プライマリースクール)の卒業

要旨:

2021年12月に、娘が小学校(プライマリースクール)を卒業しました。デルタ株の市中感染を警戒しながらの、通常とは異なる形での開催ではありましたが、表彰集会やパーティが行われました。今回は個々の子どもの貢献や成果を認める表彰集会の様子や、卒業する子どもたちがパーティとして最後の日を楽しむ様子をとり上げています。

この度、2021年12月に、娘が小学校(プライマリースクール)を卒業しましたi。日本で卒業の時期といえば春ですが、ニュージーランドの12月は初夏にあたります。前回のレポートで取り上げたように、オークランドではデルタ株の市中感染が確認されて以降、教育機関に通うことも難しい時期が長引き、結局12月中旬の卒業イベントも様々な制約の中で行われました。例年であれば、保護者も在校生も出席して、卒業生を送り出す全校集会と卒業生パーティが別々の日に開催されるところですが、今年は校長、副校長、卒業する学年担任の先生方、卒業生のみの限られた人数での集会が行われ、その様子を録画した動画が後日、保護者宛に送られてきました。また、パーティも集会と同じ日に保護者不在で行われました。保護者が参加できなかったことは少々残念ではありますが、この形のおかげで、日本にいる祖父母など、ニュージーランドにいない家族も卒業イベントの様子を見ることができました。今年はコロナ禍の中で行われたことで、通常時の卒業イベントとは様子が異なるわけですが、こうした特殊な時期だということを差し引いても、日本の卒業式とはまた違う良さがあるように思われる、ニュージーランドの小学校卒業の日の様子をレポートしたいと思います。

ここで「卒業式」とは書かずに「卒業生の集会」としているのは、集まりの名称が卒業式ではなくPrizegiving Assembly(表彰集会)というものだからです。この表彰集会は、プライマリースクールの卒業でも行われますが、その後に通うことになるインターミディエートスクール、更にその後のハイスクール(中学・高校)でも年度末に毎年開催されるようです。そのため、プライマリースクールでは最後の集会ではありますが、今後も毎年行われる表彰集会をここで初めて経験することになります。娘の小学校の場合、この際に授与される正式な賞は7つ。全科目優秀かつ人物的にも優れている子に贈られるエースカップ(男女各1名)、カパハカiiのリーダーを務めた子に贈られるカップ(男女各1名)、スポーツの優秀者に贈られるスポーツカップ(男女各1名)、芸術分野で優れた成果と貢献をした子に贈られるアートカップ(男女各1名)、数学の優秀者に贈られる数学カップ(1名)、英語(日本でいう国語)の優秀者に贈られる英語カップ(1名)、人物的に優れた生徒に贈られるカップ(1名)となっています。エースカップは、大きさも他のカップの倍はあるのではというくらい大きく重そうなカップで、格別な賞であることが一目でわかりますが、エースカップ以外の各カップはそれぞれ違うデザインでしたが概ね同じ大きさでした。

全部で1時間強のビデオにまとめられていたこの表彰集会の主な流れですが、

  1. 校長先生からの言葉、
  2. 在校生からのビデオメッセージ(個々の卒業生向けに人数分のメッセージがあったため、このメッセージに25分も費やされていました)、
  3. 各リーダーを努めた子どもたちへの賞状贈呈(アートリーダー4名、スポーツリーダー6名、ハウスリーダー8人)、
  4. 卒業生を受けもった先生方からの言葉、
  5. 卒業証書の全員への贈呈、
  6. 卒業生を代表しての言葉、
  7. 上述の7つの正式な賞の各カップの贈呈、
  8. そして5年生からのカパハカ実演のビデオ録画
となっていました。

ビデオに収められていない部分では、小学校への貢献を認める賞として、小学校の正面の横断歩道を登下校時に見守るロードパトロール、事務室の手伝い、職員室の手伝いに対しての賞状の授与もありました。これらの係は、希望する6年生は誰でもできるものだそうで、大多数の子どもたちが参加しています。多くの子どもたちが手伝いたがるのは、純粋に手伝いたいという表向きの理由のほかに、友達と一緒に何か手伝いをすると、お菓子をもらえたりココアが飲めたりするという楽しみ目当てということもあるようです。

娘は多くの子たち同様、ロードパトロール、事務室の手伝い、職員室の手伝いすべてに登録していたため、3枚の賞状を頂きました。また正式な賞の中では、数学カップも頂きました。歴代受賞者の名前が刻印されているカップの重みは、むしろ家に帰ってから実感し始めたようで、大切にしています。数学カップに刻印された名前を見てみると男の子の名前が多く、娘は女の子の名前としては2人目でした。どういうわけか娘の小学校では数学ができる子には男の子が多く、娘が低学年の頃からよく男の子と同じグループで勉強していたことも思い出しました。このカップに女の子の名前を刻めたことを娘は嬉しく思ったそうです。それぞれの受賞者が受け取ったカップはいずれ返却し、また来年の受賞者へと受け継がれていきます。

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MATHEMATICS CUP

こうして卒業の日は、この表彰集会から始まり、その後にパーティが開かれ、とても楽しい時間を過ごしたそうです。パーティといっても、恐らく多くの読者の方がイメージするパーティとは異なると思います。パーティの内容は、3つのクラスがローテーションで45分ずつ、①ホットドッグ、ポップコーン、ポテトチップス、キャンディ、氷菓子といったパーティフードを食べ、②バブルサッカーで遊び、③プールで水鉄砲などの水遊びを行って、楽しく過ごしたそうです。ローテーション形式になっているのも、過密状態を避けるためという今回独特のものです。迎えに行った時の様子を見ても、水浸しの靴と汚れた服でたたずむ子どもたちは、ただただ最後の日をはしゃいで楽しんだのだなという印象でした。

日本の卒業式と比較すると、娘の小学校の卒業の日は、卒業生の集団として過去の共通の思い出に浸る場というよりも、個々の子どもの貢献や成果を認める場として存在しているように感じられました。また、我が家を含め、卒業式後に迎えに行った際、保護者たちが先生方に今までの感謝を伝える姿はたくさん見られましたが、卒業式として子どもたちから先生方に対して感謝の意を伝えるという部分はそれほどなく、むしろ先生方から子どもたちに対して「この学校に通ってくれてありがとう!」というメッセージが主体でした。成果だけでなく、卒業生宛ての在校生からのメッセージも、6年生全体に向けたメッセージではなく、個々の子ども宛であるという部分が興味深く思いました。卒業する子どもたちが楽しめるように、汚れるほどはしゃいで最終日を過ごすというのも新鮮だなと思いました。

来年から2年間、娘はインターミディエートスクールに通います。プライマリースクールと比べて学区がだいぶ広くなり、近隣の複数のプライマリースクールから、11歳から13歳程度の子どもたちが集まります。教育段階の枠組みで言えば、まだ初等教育の範疇です。いずれまた機会があればインターミディエートスクールに通う様子もレポートできればと思います。


  • i) ニュージーランドの小学校は5歳スタートの6年間なので卒業時は11歳。インターミディエートスクールには、11歳から13歳程度の子どもたちが通います。
    「ニュージーランドの基礎データ」
    https://www.blog.crn.or.jp/lab/01/91.html
    なお、上記記事内にある教員あたりの児童生徒数は学年によって異なるようで、今year7の娘のクラスは29人となっています。
    https://www.education.govt.nz/school/funding-and-financials/resourcing/school-staffing/entitlement-staffing/
  • ii) 先住民マオリの儀式や戦闘に臨む際に披露される伝統的な踊りで、日本ではニュージーランドのラグビーチームが試合前に披露することで知られていると思います。ニュージーランドの学校ではマオリの講師を招いて週に1回カパハカを教えてもらったり、学校を代表してカパハカの大会に出場したりすることもあります。


筆者プロフィール
村田 佳奈子

東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。幅広い分野の資格試験作成に携わっている。7歳違いの2児(日本生まれの長女とニュージーランド生まれの長男)の子育て中。2012年4月よりニュージーランド・オークランド在住。
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