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【ベルギー子育て奮闘記】 第12回 ベルギーのカジュアルな"○○式"

奥村 沙織

2014年9月26日掲載

日本では、卒業式、入学式、結婚式などなど、少しお堅いフォーマルなイベントは"○○式"と呼ばれますよね。ここベルギーでは、"○○式"と言う代わりに、"○○パーティー"というような言葉のほうがしっくりくるような、カジュアルな"式"が多いように感じます。例えば子どもたちの卒園式の案内状には、"卒園パーティー"と記載されており、その名の通り、内容も厳かなものではなく、仮装した先生と、普段着の保護者らにより、笑いに包まれ進行します。(第3回参照)

今回は、学校の先生にまつわる「日本とは違うなぁ。やっぱりベルギーだなぁ」と思った、二つの"式"について書いてみようと思います。

校長先生の退職式

ある日、お友達から「校長先生は今年度で退職されるのでその"退職式"がある」との話を聞きました。その校長先生(小学校の校長先生と、幼稚園の園長先生でもあります)は、日本から来たばかりのオランダ語を全く話せない二人の我が子の入園を快く引き受けてくださり、子どもたちにも私たちにも、当初から大変親切に接してくださった方でした。そのため、その退職式には、ぜひ家族で参加させていただこうと、主人と話をしていました。そして後日、学校から"退職式"に関するお便りが届きました。退職式は校長先生の名前のついた、"Mr. Herman Cup"を開催するとのこと。つまり、子どもたち、そして保護者も交えたサッカーゲームをしようというものでした。退職式にサッカー・・・。日本のフォーマルな"式"をイメージしていただけに、拍子抜けしたことは言うまでもありません。とは言え、せっかくの機会なので、主人だけですがゲームに参加させていただくことにしました。

そして当日、公園に参加者がぱらぱらと集まり、予定時間を小一時間過ぎてやっと退職式(サッカーゲーム)が始まりました。開始時間が予定より小一時間遅れるあたり、ベルギーらしい一コマでしょうか。

保護者、子どもたちが入り混じり、6チームほどに分かれ、トーナメント方式で試合が進んでいきます。参加者がゲームをしている間、他の人は吹き出しの形のボードに校長先生へのメッセージを書き、なぜか置いてある変わった帽子や、変なメガネを身につけ、仮装をして写真撮影をします。その光景は、私たち家族にとっては奇妙な光景ではありましたが、郷に入れば郷に従えと、私たち家族も仮装をして写真撮影をしました。後からその写真を見ると、仮装慣れしていない感じがバレバレの、なんだかセンスのない帽子とメガネをかけた日本人家族、みたいになっていて、苦笑してしまいました。

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サッカーの様子
メッセージボードを持って
写真を撮る子どもたち


そんなこんなで、試合後、サッカーに参加して汗だくのPTA会長から、校長先生に向けた簡単な挨拶と、PTAからの記念品の贈呈がありました。すごく大きなものが運ばれてきたのでなんだろうと思っていると、その場で校長先生は包装紙をビリビリと破きます。中から出てきたのはなんと"脚立"でした。「セカンドライフを楽しんでほしい」という意味らしいのですが、そのチョイスに私と主人はつい、「なんでやねん!」と漏らしてしまいました。その脚立に上って校長先生がお礼の挨拶をし、次年度からの新しい校長先生の紹介とあいさつもその脚立の上からというもので、このラフすぎる"退職式"を楽しんだ我が家でした。

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脚立で挨拶をする校長先生


担任の先生の結婚式

先生の結婚式の話をする前に、ベルギーの結婚事情について少しお話したいと思います。

ベルギーの結婚形態は少し複雑で、法律で認められた3つの結婚形態があります。それらは、日本で普通だとされる男女間の「結婚」の他に、「同性結婚」そして「合法的同居」という形です。これらいずれの形式についても、同居するパートナーや子どもの社会保障上の権利はほぼ同様に守られます *1。そのため近年、日本で言う「結婚」という形をとる人は少なくなっており *2、実際に私のお友達にも、結婚はしておらず「合法的同居」でマイホームを建て、3人の子どもを育てている家庭があります。

なぜ「合法的同居」という制度があるのでしょうか。一説には、ベルギーが伝統的なカトリック国であることが要因とされています。カトリックはその教義上、離婚は許されていません。つまり、形式上、結婚ではなく合法的同居を選択することで、離別や再婚の可能性が残せ、都合がよいとされているようです。

こういったベルギーの結婚事情の中、次女の担任の先生がこの春「結婚」され、結婚式を挙げられました。お友達から、「教会での結婚式の際、子どもたちをサプライズで登場させ、お祝いをしよう」と誘っていただき、もちろん参加させてもらいました。

さすがに結婚式に参列とのことですので、「子ども、保護者とも少し正装で」、とのお友達の言葉を真に受け、当日、子どもたちにはワンピースを着せました。そして私もワンピースにジャケットを羽織って行きました。その結果、少なくとも私は完全に浮いていました。なぜなら、ほとんどの保護者の方が完全に普段着だったのです。普段着のワンピースにショールだけの人、男性にいたっては、Tシャツにジーンズの方もおられました。正装で、と言われたはずなのに・・・この国の方たちはいつ正装するのでしょうか・・・。

ともあれ、結婚式の終盤、子どもたちがサプライズで教会に入り、一人ひとり風船をプレゼントし、幼稚園で集めた子どもたちによる寄せ書きを渡しました。先生は感激で涙し、みんなと記念撮影をして終始和やかな式となりました。

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普段着の保護者たち
記念撮影


かわいいミニのウェディングドレスをまとい、幸せそうな笑顔を見せてくれる先生を、親族の方、たくさんの学校の先生たちと共に、正装をした私たち家族は少し気恥ずかしい思いをしながら祝福しました。

次女もいつもと違う先生に恥ずかしそうに寄り添い、声をかけてもらって嬉しそうにしていました。先生の結婚式はとても印象深かったようで、今でも「先生のドレスかわいかったね」などと思い出して話します。海外の結婚式に参加するという貴重な体験をさせていただくことが出来ました。

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お姉ちゃん(長女)も参加


このように、日本では厳かに行われるであろう"式"は、日本よりもとてもカジュアルで、私たち家族にとってとても新鮮なものでした。みんなが笑顔で気軽に参加できるこういった"式"は、海外ならではの経験ではないかと思います。日本からもフォーマルな服などを持参していましたが、帰国するまで出番はなさそうです。


筆者プロフィール
奥村 沙織: 2011年より、夫の転勤に伴い二人の娘とともにベルギーのルーヴェンに在住。
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