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【ベルギー子育て奮闘記】 第13回 ベルギーの「乗り物」

ルーヴェンの自転車事情

ベルギーに来た当初、街歩きの際に主人に教えてもらったことの一つは、自転車専用道路があるということです。すべての道路ではありませんが、歩道が広く、その半分が違う色で塗装されていて、そこは自転車だけが通れます。慣れるまでは、知らず知らずのうちに自転車用道路を歩いてしまい、「チリンチリン」とよく注意されたものです。また、専用道路がない場所では、自転車は必ず車道を走らなければいけません。ベルギーでは自転車が車道を走ることが当たり前ですので、車は自転車の後ろを気長に走行します。歩行者専用の歩道を自転車が走る光景を見ることはまずありません。

また、ベルギーでは色々な種類の自転車が公道を走っています。手で漕ぐ自転車や、二人乗り自転車、そして子どもを乗せるための専用ベビーカーが取り付けられた自転車も非常によく見かけます。特にこのベビーカーに小さな子どもたちが乗っている姿はとてもかわいらしく、日本ではなかなか見られない光景ではないでしょうか。


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前に乗せるタイプ
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後ろに乗せるタイプ


さて、次は私たちが住む街、ルーヴェンの自転車事情について触れたいと思います。
ここルーヴェンは、ベルギー最大の総合大学であるルーヴェンカトリック大学(Katholieke Universiteit Leuven)があり、「学生の街」として知られています。そのため街の中では、たくさんの若者、そしてたくさんの自転車を見かけます。

まず私が気になったのは、ほとんどの自転車がどれも"とっても古い"ということです。もちろん中には新しい素敵な自転車もありますが、特に大学のキャンパス近くの自転車置き場などでは古い自転車ばかりが目につきます。そして街中で、古い自転車をひっくり返し、外れたチェーンを直している学生さんもよく見かけます。

なぜ、こんなに古い自転車ばかりなのでしょうか。それはルーヴェンでは自転車の盗難がとても多いことが原因のようです。ルーヴェンはとても治安がよく、パトカーの音を聞くことも珍しいほど安心して暮らせる街なのですが、自転車の盗難だけはとても多く、駐在している日本のお友達の中には3回盗まれた方もいらっしゃるほどです。新しい自転車はやはり盗難に遭いやすいようで、主人の現地の同僚の方は学生時代に7回盗難にあったそうです。いったい誰が・・・。主人の同僚は笑顔でこう言ったようです。「そんなの、みんなだよ」。

とにかく、ルーヴェン市内で、古い自転車を多く見かける大きな理由は、盗難に遭う可能性を下げることと、盗難されても被害を最小限に抑えるため、なのだそうです。中には、自転車に手描きで派手な色のペイントをしてみたり、写真のようにガムテープでぐるぐる巻きにしてみたり、これも盗難から免れようと努力しているためなのでしょうか。

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古い自転車ばかり


日本に比べ、ベルギーでは自転車はとても高額(日本円で4万円くらい)です。日本のように手頃な値段で買える自転車が多くあれば、この自転車盗難も少なくなるのかもしれません。

ベルギーでの生活も3年目。今では、家族4人、自転車で車道を走りつつ、サイクリングに出かけることも多くなりました。そして普段はもちろん、鍵は2重に掛けています。

ケルミス(移動遊園地)

乗り物のつながりでもう一つ、日本とはちょっと違ったものを紹介します。
ここルーヴェンでは9月になると大学図書館前(街の中心部に位置します)の大きな広場に3週間だけ「ケルミス(移動遊園地)」がやってきます。ヨーロッパではこの「移動遊園地」はポピュラーなようです。ベルギーには固定の遊園地もありますが、この移動遊園地が我が家の子どもたちは大好きで、毎年楽しみにしています。平日は、学校の終わる午後3時半から夜の12時まで、土日はお昼から夜の12時まで毎日開催されます。

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大学図書館前に現れるケルミス


初めの年には、「ケルミスがやってくる」と言われても全然ピンときませんでした。小さなメリーゴーランドやちょっとした屋台のようなものが来るのかなぁと思っていましたが、いざ来てみるとこんな大きなアトラクションをどうやって運んでくるのだろうと驚きました。日本の遊園地にあるようなアトラクションが一晩のうちに設置されます。例えば、観覧車、コーヒーカップ、メリーゴーランド、そしてゲームセンターや射的などのエンタテイメントもあります。ほとんどのアトラクションが毎年同じ位置に設置されますが、目玉のアトラクションは毎年変わります。去年は観覧車、今年はかなりの絶叫マシーンが登場しました。

観覧車、コーヒーカップなどと言っても、日本の遊園地にあるような、ゆったり老若男女楽しめるようなものではありません。どちらもスピードがとても速いのです。観覧車は、日本の倍くらいの速さで、1周ではなく最低5周くらい回ります。そして、観覧車のボックス内にコーヒーカップのようにハンドルがあり、クルクル回すとボックス自体が横回転するというちょっとした絶叫マシーンのようになっています。

初めての年、乗り物に乗るときの第一印象は、規模の割に「値段が高い」ということでした。一つのアトラクションが4~5ユーロ(約600円)するのです。しかし、乗ってみると一つのアトラクションの稼働時間が長いので値段も納得できました。そしてほとんどのアトラクションに年齢や身長制限がありません。自己責任で乗ってくれというものです。

我が家の子どもたちが毎年決まって乗る乗り物があります。それは、通称「タコ」!たこ足の先端に乗ってぐるぐる回るのですが、6歳の下の子などは大人が抱き寄せていないと振り落とされる勢いで上下左右に動きます。私も絶叫マシーンは好きな方でしたが、このマシーンは主人にも私にもきつく、今年は絶叫マシーンが大好きなお友達に子どもたちを託し、難を逃れました。

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我が家の子どもたちが大好きな「タコ」


他の場所からトレーラーなどで運んできて一晩で設置しただけのアトラクション。安全ベルトもとても質素、年齢制限もない。安全面で本当に大丈夫なのかといつも不安になりますが、私たちが駐在している3年間、事故の話は一度も聞きませんでした。

ケルミスではもちろん絶叫マシーンだけではありません。ぬいぐるみが景品でもらえる、おもちゃのアヒル釣りやプラスチックでできたヨーヨー釣り、大きなビニールの風船の中に入ってプールの中を走り回るもの、お化け屋敷、鏡張りでできた迷路など盛りだくさんです。

そして、もう一つびっくりしたのが本物のポニーによるメリーゴーランドです。写真のように本物のポニーに乗ってクルクル回るというもの。ポニーも同じ方向にただひたすら回り続けるので、とてもお疲れのようでかわいそうでした。去年からこのメリーゴーランドは来なくなったので、ポニーがかわいそうという意見が挙がったのかもしれませんね。

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ビニールの風船に入って遊ぶプール
本物のポニーのメリーゴーランド


子どもたちも毎年好きな乗り物に乗り、また、おいしい揚げドーナツや綿菓子、かき氷などを食べることも楽しみにしています。また、ケルミスで学校のお友達に会い一緒に回ったりおしゃべりしたりするのも楽しみの一つのようです。

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おいしい揚げドーナツ


今回は「ベルギーの乗り物」と題し、ちょっと変わった自転車事情と、日本では珍しい移動遊園地をご紹介しました。最終回となる次回も、ベルギーに特有なものをご紹介したいと思います。

筆者プロフィール
奥村 沙織: 2011年より、夫の転勤に伴い二人の娘とともにベルギーのルーヴェンに在住。
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